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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第10章「恥も外聞もないトリップを焼き捨てる馬鹿者たちへ」
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第78話 「ライク ア スパイダー」




挿絵(By みてみん)




 ザアアアアアアアアアアアアア……


 甲板に雨が降りしきる。


 (とりで)のようにそびえる艦橋(かんきょう)の真下……トラは、背負っていたマリィを放り捨てた。



「~~~~~~!!」

 頭を(かか)えこむトラ。

 叫びたいのに言葉が出てこない。なぜなら、ハイドランジアの効果が切れたからだ。


「ニャハハハハ!」

 笑い転げるマリィ。

 ようやく、ハイドランジアの効果が表れた。 




挿絵(By みてみん)


 


 トラの顔面はびきびきと(ゆが)み、血管が浮き出ている。歯を(きし)り、甲板に転がるマリィにずしんと近づいた。


「は、ははは……思い出したぜ、クソアマ……ぜんぶ思い出したよゴラぁ!」

 ずぶぬれのトラの絶叫。

 雨音を打ち消すほどの声を張り上げる。



 対して、マリィは―――



「ニャハハハハハハ! なんでオンブしてくれないんですかあ、ニャハハハハハハ!」


 トラの背中から放り捨てられたマリィ。

 ころころと寝そべり、甲板に(ほお)ずりをしている。


 両肩から伸びる()義肢(ぎし)のアームは、雨粒(あまつぶ)が結集し、大きな水の腕(・・・)と化していた。


 だが、そんなことはどうでもいい。

 マリィの様子が普通ではない。


 さっき()めたハイドランジアの効果が表れてきたらしい。わけのわからないことをくり返している。


「ここまでのあらすじが分かりません! あなた知ってますかぁ? ニャハハ」



「し、し、知ってますかって……ぜんぶ覚えとるわ!」

 再度、トラの絶叫。

 どうやらトリップ中の記憶があるらしい。


「あ、あんなこともこんなことも覚え……うっぷ……おええええええええ!」

 バシャバシャと胃液をぶちまける。

「はぁ、はぁ。き、気持ちわりい……あたまグラグラすんぜ……」


 手のひらで口を(ぬぐ)い、()れた艦橋の壁にこすりつけた。



「こんなとこでゲロっちゃダメですよ、ニャハハハ!」

 笑うマリィ。


「ハァ、ハァ、誰のせいだボケ!」

 怒るトラ。


 誰のせい(・・・・)

 やはりトラには、トリップ中の記憶があるらしい。

 


「ニャハハハ! 私はレベッカ(・・・・)のところへ行くんです! あの子は私がいないと、すぐにイジけてしまうんです。きっと今ごろ泣いてます!」

「レベッカて誰じゃあああああああ!」

 

 けたたましく笑うマリィ。

 スーパーブチ切れ状態のトラ……



 と―――


 バシャアア!


 雨水をたっぷり(たくわ)えた()義肢(ぎし)のアームが、デッキの2階に伸びた!




「うわッ!」

 水しぶきが飛び散る。

 もろに()びたトラが、ズシンとひるんだ。


「くそっ……あれ? あっ! どこ行きやがる!」



 マリィがいない。


 上だ。

 マリィが上に登っていく。


 トラなど、まったく無視だ。


 ()義肢(ぎし)を使ったロッククライミング。垂直の壁の、小さな凹凸(おうとつ)や部品をつかみ、デッキを駆け上がっていく。

 まるで蜘蛛(クモ)―――



「ま、待ちやがれ!」


 はるか上空のマリィに、トラは()えたてる。


「待ちません! ニャハハハ!」

 がしんがしんと()義肢(ぎし)がデッキに接触するたび、大量の水が降りそそぐ。ものすごい速さで、マリィは(とう)を駆けのぼっていく。



「あああああああ! ラリ女、ぶっ殺してやる!」


 ガンガンガン!

 壁に長靴を貼りつけ、トラもあとを追う。

 ガンガンガン!


 しかし。


 ズルッ!



「うわッ!」


 雨で長靴がすべった。

 鉄の壁で、頭頂部を強打するトラ。

 ゴォン!!




挿絵(By みてみん)




「ひぶッ! ぐええええええええええ!!」


 激痛。

 そして落下。


 ゴォン!!


「ひぶッ! うおおおおん!」 


 こんどは側頭部を強打。

 まるで打楽器……すさまじい悲鳴をあげる。だが、降りしきる雨の轟音によって、トラの声はかき消された。


 トラが甲板で死にかけていることなど、ブリッジのはるか上階にいるニニコは、知るよしもない。

 

  


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※




「フォックス! フォックス! うわあああ……」


 司令室に、ニニコの泣き叫ぶ声がこだまする。


 フォックスは自分の体を盾にして、消火器の爆発からニニコを守った。だが爆風に吹っ飛ばされ、フォックスは消火剤まみれで倒れている。

 ニニコが呼びかけても揺さぶっても、ぴくりとも動かない。


「フォックス、フォックス……!」


 目を覚まさない。

 雨のせいか、冷たい空気が割れた窓から吹きこんでくる。その温度差のためだろうか、フォックスが目を覚ました。


「う、うぐ……」

「フォックス!?」


「な、なんだアタシ、生きてんのか……?」

「よかった……しっかりして! いま心臓マッサージをするわ!」


「……せんでいい、絶対やめろ」

「フォックス、どうして……? あ、あんな女、燃やしちゃえばよかったのよ!」


「……できねえよ。でもマリィは殺さなきゃなんなかった。せめて一緒に爆死しようと思ったのに、アタシは生きてる……最悪だぜ」


 うつろな目で答えるフォックス。

 目の焦点(しょうてん)は合わず、声もひどく弱い。



「待ってて! いま医務室のひとを呼んでくるから!」

「ま、待て……だれか来やが…………」


 フォックスが目を向けた先に……


「ああ……最悪だ」


 来やがった。

 来やがった、ヤツが。

  



「そのとおり、最悪だよ……」


 男の声。

 こ、この声は……



「ひ……!」

 振り向いたニニコが青ざめる。

 

「来やがったな……中尉」

 フォックスが、どうにか声をふりしぼる。



 レインショットが来てしまった。

 いままでどこに隠れていたのだろうか……




挿絵(By みてみん)




「よ、よくもやってくれたな……ふ、ふふ……き、君たち2人とも売ってやりたいよ……」


 レインショットの憔悴(しょうすい)した表情はどうだ。軍服のジャケットも脱いでしまって、昼間の精悍(せいかん)な様子はまったく感じられない。


 いやそれよりも、ポリタンクを持っているではないか。

 ジャプジャプと、たっぷり液体が詰まったポリタンクだ。



「よう……お疲れのようで、中尉」

 フォックスは、嫌悪感を隠そうともしない。


「なに持ってんだ? まさか、ガソリンじゃねぇだろうな」




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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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