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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第3章「突拍子もないバトルを焼き捨てる出会いへ」
22/249

第22話 「トレーラーアクション」



 ドドドドォオオオオ……


 なにもない荒野を、土ボコリを巻きあげて10トントレーラーがひた走る。

 荷台にコンテナを2つ()んでいるが、なんだか様子がおかしい。ヘッドが、大きく左に(かたむ)いているではないか。


 さぞ運転しにくいだろうに、助手席になにか重いものでも乗せているのだろうか。



「ああ、もう運転しにくいなボケ!」

 (なな)めになった運転席で、フォックスが声をはりあげた。

 イライラ!


「うひひ、あはは……ぐひょー!」

 助手席のトラはシートを倒し、くつろいだ格好(かっこう)で漫画雑誌を読んでいる。

 ヘラヘラ。

 


挿絵(By みてみん) 



 なんで、こんなことになったのか?


 金庫に入っていた金で、車を調達することにしたフォックス。これで正真正銘(しょうしんしょうめい)の強盗になった2人。


 それはいいが、トラの長靴の重さに耐えられる自動車などあるはずがない。やむなく、目立つのを覚悟で10トントレーラーを購入するしかなかった。

 しかもトラは運転免許を持っていない。 


 だから運転をフォックスに(まか)せっぱなしだ。彼女のほうがオーナーなのに。


 そのうえ、トラのこの態度…………



 ムカムカしながらフォックスは、ダッシュボードの煙草(たばこ)の箱に手を伸ばした。

 だが……シュルルルル。

 手が触れたとたん、煙草は助手席側に(すべ)っていった。


「あああああ、イラつく! 戻ってこいコラァ!」

 バンバン!

 ププー!!

 ハンドルを(たた)きまくるフォックス。クラクションを連発する。ブッブー!


「落ち着いてくださいよオーナー。はいタバコ。さぁ、おあがり……」

 駄々(ダダ)っ子をあやすように、なだめるトラ。煙草を1本取り出し、どうぞと(くわ)えさせた。



 ジジジ……

 籠手(こて)人差(ひとさ)し指をタバコに近づけ、火をつけるフォックス。


「すー、すぱー……ふー……」

 スパスパ。

 だんだん落ち着いてきたらしい。


「トラ、コーヒー!」

「へぇへぇ」


 シートの後ろからポットを取り出し、ドリンクホルダーのカップにコーヒーを(そそ)ぐ。


 すると―――ギィイイイイイ。


「アッ!」


 トラが動いたせいか、さらに車体が左に傾いた。コーヒーが、ばしゃんとフォックスの左手にかかる。


「あじゃじゃじゃ、ギャー!」

「アッ、オーナー! (あぶ)な……!」


 バキバキバキ……ドゴォ!!

 ハンドルを(あやま)ったトレーラーは、左へ左へ……ガードレールを突き(やぶ)り、岩にぶつかってようやく止まった。


 プスン、プスン……



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「お前は自由だトラ! 森でシアワセに暮らせよ!」


 グォンとエンジン音をとどろかせ、トレーラーが動きだした。

 荒野にトラを残して。


 ドゴドゴドゴドゴ。

 ズシンズシンズシン!

「ま、待ってくださいオーナー! ハァハァ、ゼェゼェ!」



 カンカンに激怒したフォックスに、助手席から(ほう)り出されたトラ。彼を置きざりにして、トレーラーは走り出す。

 ドゴンドゴンドゴン!

 おそるべき脚力(きゃくりょく)でトラは車を追いかける。走る、走る!


「行かないで! とおおおおおおお!」


 追いついた!

 最後の力をふりしぼり、トレーラーに飛びかかる。


 ドゴォ!

 ガチリ!

 コンテナに右足を()りつけた。


 だが左足は間に合わなかった。

 右足だけくっついたまま、トレーラーの最後尾(さいこうび)で引きずられるトラ。いわゆる、引きまわしの(けい)―――


 ズザザザザザザアザザアアア!

 地面でこすられまくる。

 180度に近い角度で股間(こかん)がひらく。 

 振動―――


「うああああ! (また)が裂ける! きええええええ!」

 トラの叫び。

 体が引き裂かれる!

 


 ギイイイイイイイイイイイイ!

 トレーラーのスピードが落ちていく。

   

 ガタガタガタガタガタガタ……


 

 驚いたのはフォックスである。

 急にトレーラーの動きが(にぶ)くなった。


「な、なんだ? 故障か?」

 バックモニターのスイッチを入れると……ゲゲッ! 

「アッ! し、信じらんねえ! (なに)ハラスメントだ、この野郎!」


 なんと、トラがコンテナに引っついているではないか。あろうことか地面でヤスリがけ(・・・・・)されている。バカかよ。



挿絵(By みてみん) 



 悲鳴―――


「止めて、止めて! 裂ける、裂ける!」

「死んじまうぞテメエ! なに考えて生きてる!?」

 

 運転席とトレーラー後方で、ぎゃぎゃあと怒鳴(どな)りまくる男女。もちろん、(たが)いの声が聞こえるはずもない。

 

「死ぬ、死ぬ! 土が、土が!」

「ああ、もう!」

 

 ギイイイ!!

 プシュウウウウウ……

 数十メートル走って、ようやくフォックスはブレーキを踏んだ。



 トレーラーが停まったとたん、すかさず運転席に()けこむトラ。必死の形相(ぎょうそう)―――


 ドタドタドタドタ!! 


「お許しください、お許しください!」

「うわ、やめろバカ!」


 運転席の窓から上半身を乗り入れ、フォックスに(つか)みかかる。


 トラの顔はすさまじいものだった。

 目は血走(ちばし)り、顔じゅう(あせ)だく。ハァ、ガァと呼吸も荒い。変質者のようにフォックスに(せま)る。


 彼の重さで、今度はヘッドが右に傾いた。

 ギイイイ。


「コラ離せ! ワーワー!」

「お望みとあらば、俺のどこを使ってもらっても結構です! ワーワー!」


「どういう意味……の、望むわけねーだろ! 燃やすぞコンニャロ!」

「いいや望んでる! オーナーの目的は、俺の若い体だ! はぁはぁ、はぁはぁ!」

 

 パニック状態。

 ギッシギッシと運転席が左右する。

 だんだんフォックスが()ってきたらしい。


「ワーワー! 連れてって! ワーワー!」

「や、やめろ、ぎもぢ悪……ウップ」

 ギッコン、バッコン。

 ギシギシ、ユッサユッサ。


「お願いお願い! ハァハァハァ!」

「わ、わか……! や、やめ、オエエエエ!」



 ここは荒野。

 この世の地獄―――



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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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