第14話 「メテオリック」
「にゃああああああ!」
「うおわあああああああ!!」
2人はぎゃあぎゃあと屋根を転がり、呪いから逃れようと暴れまわる。
トラは右へ。
フォックスは左へ。
叫びながら転がりまわる!
コロコロ。
『つかまえた』
『つかまえたぞ……』
「あっち行きやがれ! こいつめこいつめ……うぇあっ! ドテッ!」
逃げまどうフォックス。
スカートのすそを踏んづけてスッ転んだ。顔面を強打。
「あいたた……ぎゃあ!」
次々と飛びかかってくるブロックから右手を守ろうと、身をまるめて転げまわる。まるでアルマジロ……
追い払おうと、必死に左手を振りまわす。
だがブロックの猛襲は止まらない。
ゴン、ゴン、と頭にふりそそぐ。
「いた! いたたたた! ぎゃああ! やだやだ……!」
抵抗はまったくのムダだった。
非情にもブロックは、どんどん右手を覆っていく。
トラは?
トラのほうもすさまじい。
「おあああああ! アアアアアアア!!」
絶叫!
ブロックの群れに、飛び蹴りを放ちつづける。だが、当たりゃしない。
ブンッ、ブンッ!
ヒョイヒョイとかわされ、むなしくカラ振りするキックの嵐。
ブンッ! ブンッ!
「くそ、こんにゃろ……はあ、はあ……くそっ……うわ、わあああ!」
ガチャ、ガチャガチャ……
両足がブロックに埋めつくされた。
『1000万歩、歩け―――』
『それまでは決して……』
トラとフォックスに、ふたたび呪いがかけられる……
否!
死んでもイヤだ!!
「離れやがれええええ!」
「離れろこのボケ!」
トラとフォックスが叫んだのは、ほぼ同時。
憑依なんかさせるもんか!
ガシ!
ガシィ!
それぞれのブロックを、ふたりは力づくで引っぺがす。
トラの手のなかで、ブロックは激しく暴れる。1枚、また1枚と引きはがすが、ブロックはあとからあとから足に結集してくる。
知ったことか!
猛烈な速さでブロックをはがし、放り捨てる。
フォックスもだ!
次から次へと右手に集まるブロックをつかみ、フリスビーみたく放り投げていく。
ポイポイポイ。
とんでもない速さだ。
『やめんか、フゥ……』
「やめるか! その名前でアタシを呼ぶな!」
籠手をふりほどこうと、右手を屋上に叩きつける!
バシン、バシン!!
端正な顔がゆがみまくる。鬼気―――
「うるあ! おらあ!」
バシン!
バシィン!
おなじく、トラもブロックと格闘していた。両足に、びっしりとブロックが覆いかぶさってくる。
『離せ。ト……ト…………はなせ』
「名前おぼえてねーのかよ! 外れやがれ、脱げやがれぇ!! うらぁ、オラァ!」
トラの絶叫はすさまじい。
ガッ!
ドガッ、ガシンガシッ!
つかみ取ったブロックの1枚を、自分の足に……いや長靴に振りおろす。メッタ打ちだ。まるで狂ったラッコ……
「どうだ、呪えるもんなら呪ってみろァ!」
ドガッ!
ドガッ!
ガン、ガン、ガン!
だが……
ズシイイイイ!!!!!
瞬間、長靴がとんでもない重さになった。
じつに懐かしい、約13日ぶりのあの重さ。木造の橋や、石の床をもブチ抜いたあの重さが……
ビルの屋上を押しつぶした。
長靴の超重量だ!
バキバキバキ……!
ドオオオオオオオオオン!
ドオオオオオオ!
「あ―――ッ!」
「ギャ―――!!」
砕けた屋上とともに、ふたりはビルのなかへ落下した。さらに最上階の床をも貫いた。
バキバキバキバキ!
2階。
バキバキバキバキ!!
1階!!
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1階。
そこは、サラ金の事務所。
事務所では中年の男が、売上金を勘定し終えたところだった。
「254、255……よし、合うな」
トントンと紙幣をそろえて、部屋の隅に置かれた金庫の前でしゃがむ。
高さ40センチほどの、中型の金庫だ。
「よっしょ。6……13……4……6……」
太い指でダイヤルを左右し、ガチャンと金庫を開けた。
そこへ。
バキバキバキバキバキバキ!
ドオオオオォォォォォォォォン!!!!
突然の轟音に、ギョッと男が天井を見上げた。
なんの音だ!?
「な、なんだ地震か……ひゃあ! 人間だ!」
ドォオオン!
ガラガラガラガラ!!!!
バキバキメキバキバキバキ!!
「わ―――――ッ!!」
「たすけて!」
天井が崩落し、ガレキとともに若い男女が降ってきた!
ガラガラガラガラ!
ドドドドドドォン!!
「ぐべ!」
ゴン!
ガレキが頭部に当たり、中年男はすぐさま気を失った。気の毒に。
もうもうと立ちのぼる粉塵。
ガレキの山、山、山……
傷だらけになったトラが、痛ててと腰を上げた。彼の手には、まだブロックが握りしめられている。
「痛てて……フォックス!? どこだ!」
フォックスは……?
いない。
ギョロギョロと室内を見まわす。
しかし、どこにもいない。
「おい、フォックス! どこだ返事しろ……げッ!」
「ムギュ……」
いた。
フォックスは、倒れてきたスチールロッカーの下敷きになっていた。そんな状態にも関わらず、しっかりとパーツの1枚を握りしめている。なんという根性……
フォックスを引っぱりだそうと、トラはロッカーに手をかけた。
そのとき彼が見つけたものは……
「おい、しっかりしろ……あ! し、しめた!!」
金庫!!
トビラの開いた金庫を見つけた!
「おい、金庫だ! おいって!」
「ギュウ」
焦りながらフォックスを揺する。だが、ぜんぜん起きない。潰れたヒキガエルのように、ギュウとか言ってやがる。
ええい、役立たずの女め!
「ええい、ブロック貸せ!」
トラがフォックスの手からパーツを引ったくり、金庫に突進する。
ドスドスドス!
「うらあ! 入ってろ!」
ガラン、ガコンとパーツ2枚を金庫に放りこみ……
ガシャン!
思いきり扉を閉めた。
封印してやった!!
やったぜと勝ち誇るトラ。
「どうだガラクタども! フォックス、やったぜ! おい起きろ!」
フォックスを引きずり出し、抱きよせる。
どさくさにコイツ。
「うーん……ほえ? 無い! パーツがない、どこいった!?」
まだ抱きしめられたままのフォックス……それどころじゃない! 手に持っていたブロックを無くした!
きょろきょろとあたりを見まわす。
「ブ、ブロックは!?」
「へっへっへ……あそこさ!」
トラが得意げに金庫を指さす。
コン!
こん!
コン、コン!
ブロック2枚が外に出ようと暴れているらしい。
金庫の中から、コンコンとぶつかる音が聞こえる。
「オーナー! やったやったぁ!」
よろこぶフォックス。
バンザーイと上げた右手には、1か所だけ部品の足りない籠手………
『119軒に火をつけろ。ただし完成してからだ』
籠手が、しゃべった。
……あ?
え?




