第14話 「メテオリック」
「にゃああああああ!」
「うおわあああああああ!!」
2人はぎゃあぎゃあと屋根を転がり、呪いから逃れようと暴れまわる。
トラは右へ。
フォックスは左へ。
叫びながら転がりまわる!
コロコロ。
『つかまえた』
『つかまえたぞ……』
「あっちいけ、こいつめこいつめ……うぇあっ! ドテッ!」
逃げまどうフォックス。
スカートのすそを踏んづけてスッ転んだ。顔面を強打。
「あいたた……ぎゃあ!」
次々と飛びかかってくるブロックから右手を守ろうと、身をまるめて転げまわる。まるでアルマジロ―――
追い払おうと必死に左手を振りまわす。だがブロックの猛襲は止まらない。
ゴン、ゴン、とブロックが頭にふりそそぐ。顔面を強打。
「いた! いたたたた! ぎゃああ! やだやだ……!」
ブロックが右手を覆っていく。
※ ※
「おあああああ! アアアアアアア!!」
トラの絶叫!
ブロックの群れに、飛び蹴りを放ちつづける。だが当たりゃしない。
ブンッ、ブンッ!
ヒョイヒョイとかわされ、むなしくカラ振りするキックの嵐。
ブンッ! ブンッ!
「くそ、こんにゃろ……はあ、はあ……くそっ……うわ、わあああ!」
ガチャ、ガチャガチャ……
両足がブロックに埋めつくされた。
『1000万歩、歩け―――』
『それまでは決して……』
2人の体に、ふたたび呪いがかけられる……
否!
死んでも嫌あ!!
「「 離れやがれええええ!!!!! 」」
ガシ!
パシ!
トラとフォックスが叫んだのはほぼ同時。
憑依なんかさせるもんか!
それぞれのブロックを、力づくで引っぺがした2人。
トラの手のなかで激しく暴れるブロック。
フォックスの手のなかで激しく暴れるブロック。
※ ※
『はなせ、フゥ……』
「離すもんか! その名前で呼ぶな! ワーワー!」
左手に全握力をこめて、ブロックを屋上に押しつける。そして籠手をふりほどこうと、右手を屋根に叩きつけた!
バシン、バシン!!
端正な顔がゆがみまくる。鬼気―――
「うるあ! おらあ!」
バシン!
バシィン!
※ ※
『離せ。ト……ト…………はなせ』
「名前おぼえてねーのかよ! 外れやがれ、脱げやがれぇ!! うらぁ、オラァ!」
トラの絶叫はすさまじい。
ガッ!
ドガッ、ガシンガシッ!
つかんだブロックを自分の足に……いや長靴に振りおろす。滅多打ちだ。まるで狂ったラッコ……
「どうだ、呪えるもんなら呪ってみろァ!」
ドガッ!
ドガッ!
ガン、ガン、ガン!
だが……
ズシイイイイ!!!!!
瞬間、トラの両足にとんでもない重さが加わった。
じつに懐かしい、約13日ぶりのあの重さ。木造の橋を、石造りの床をもブチ抜いたあの重さが……
ビルの屋上を押しつぶした。
バキバキバキ……ドオオオオオオオオオン!
「あ―――ッ!」
「ギャ―――!!」
砕けた天井のガレキとともに、ビルの屋内へと落下する2人。さらに床をも貫いた。
バキバキバキバキ!
2階。
バキバキバキバキ!!
1階!!
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1階。
そこはサラ金の事務所。
事務所では中年の男が、売上金を勘定し終えたところだった。
「254、255……よし、合うな」
トントンと紙幣をそろえて、部屋の隅に置かれた金庫の前でしゃがむ。
高さ40センチほどの、中型の金庫―――
「よっしょ。6……13……4……6……」
太い指でダイヤルを左右し、ガチャンと金庫を開けた。
そこへ……
バキバキバキバキバキバキ!
ドオオオオォォォォォォォォン!!!!
突然の轟音に、ギョッと男が天井を見上げた。
なんの音だ!?
「な、なんだ!? 隕石か……ひゃあ! 人間……」
ドォオオン!
ガラガラガラガラ!!!!
バキバキメキバキバキバキ!!
「「 わ―――――ッ! 」」
天井が崩落し、ガレキとともに若い男女が降ってきた!
ガラガラガラガラ、ドドドドドド……!!
ゴン!
「ぐべ!」
ガレキが頭部に当たり、中年男はすぐさま気を失った。気の毒に。
もうもうと立ちのぼる粉塵。
傷だらけになったトラが、痛ててと腰を上げた。
彼の手にはまだブロックが握りしめられている。ガレキの山、山、山……
「痛てて……フォックス!? どこだ!」
フォックスは……?
いない。
ギョロギョロと室内を見まわす。
しかしどこにもいない。
「おい、フォックス! どこだ返事しろ……げッ!」
「ムギュ……」
いた。
フォックスは、倒れてきたスチールロッカーの下敷きになっていた。そんな状態にも関わらず、しっかりとパーツの1枚を握りしめている。なんという根性……
「おい、しっかりしろ……あ!」
フォックスを引っぱりだそうと、トラはロッカーに手をかけた。そのとき彼が見つけたものは……
「し、しめた!!」
金庫!!
トビラの開いた金庫を見つけた!
「おい、金庫だ! おいって!」
「ギュウ」
焦りながらフォックスを揺する。だがぜんぜん起きない。潰れたヒキガエルのように、ギュウとか言ってやがる。
ええい、よこせ!
「ええい、貸せ! うおおお! ドシンドシン……」
トラがフォックスの手からパーツを引ったくり、金庫に突進する。
ドズドズドズ……!
「うらあ! 入ってろ!」
ガラン、ガコンとパーツを乱暴に金庫に放りこみ……
ガシャン!
勢いよく扉を閉めた。
封印してやった!!!!!
やったぜと勝ち誇るトラ。
「どうだガラクタども! フォックス、やったぜ! おい起きろ!」
フォックスを引きずり出し、抱きよせるトラ。
どさくさにこの野郎。
「うーん……ほえ? 無い! パーツがない、どこいった!?」
まだ抱きしめられたままのフォックス……それどころじゃない! 手に持っていたブロックを無くした!
きょろきょろとあたりを見まわす。
「ブ、ブロックは!?」
「へっへっへ……あそこさ!」
トラが得意げに金庫を指さす。
コン!
こん!
コン、コン!
ブロック2枚が外に出ようと暴れているらしい。金庫の中から、コンコンとぶつかる音が聞こえる。
「オーナー! やったやったぁ!」
よろこぶフォックス。
バンザーイと上げた右手には、1か所だけ部品の足りない籠手……………………
籠手が、喋った。
『119軒に火をつけろ。ただし完成してからだ』
……あ?
え?




