疾走下校
瑞樹は気付けば、昇降口についていた。
昇降口で靴を履き替えると、マナー違反だがそのまま職員玄関へと向かい、外に出た。
目指す場所は、先程、担任の佐々木が言っていた公園。
体力や足などの身体のことなど気にせず、瑞樹は全力で道を駆け抜ける。
校門を出てすぐ近くにある長い坂を駆け上り、すぐ右に曲がって今度は急な坂を下り、道なりに進んで分かれ道で右に曲がり、進む。今度は左右前の分かれ道を同じく右に曲がり、またすぐある左右前の三つの分かれ道を先程とは逆の左に行き、急な坂道を今までよりスピードを上げて駆け上る。
何も考えず、夢中で、ただ走る。
そうして坂を上りきり、差かとの境目にある白い鉄柵―ポールのようなもの―に手を掛けて、激しい息切れを整えると、ある程度、伸びをする。
伸びをやめた瞬間、今までの疲れが、ドッと、背中に乗る感触が瑞樹を襲った。彼はそれに、フゥと息を大きく吐くと、眼前に広がる風景を見た。
木、一面に木や落ちた葉などの緑が広がっている。まるで、道路を挟んで坂道と道路の境目の延長線上に並んでいる住宅街と世界を隔離している様な、科学は一切受け付けない雰囲気が、そこにはあった。
-『松ノ宮公園』-
それが、ここの公園の名前だった。
瑞樹は坂道のすぐ近くにある公園の入り口に行くと、落ちた葉であまり見えなくなった階段を下り、直ぐ傍にある段差を跳び越え、その前方左側にある木でできた手すり付きの階段をゆっくりと下りる。
その先にある段差を跳び下りると、瑞樹は広い場所に出た。彼は見通しの良いその場所を見回す。
すると、広場に設置されたテーブルの方に歩みを進め、やがてテーブルから小幅二十~三十歩辺りで止まった。
そして、先程から、このテーブルの上にあおむけで寝ている少年に声を掛けた。
「久しぶりだな。レナード」