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【書籍化】捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~  作者: りょうと かえ
第5章 予見

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34.向こうの手

 奥森林管理課という部署は要員も数十人。記憶が正しければ設立は五年ほど前のはず。

 ええと……その奥森林管理課の書類を束から引っ張り出す。

「これね」

「拝見いたします……。ふむ、本当ですね」

「これって……私がいなくなってからの予算よね? 見た記憶がないもの」

「そうですね。しかも三十人未満の部局は簡易的な監査になるはず。ちょっと妙ですね」

「裏をかいている部署があるということね……」

 これは意図的な操作だ。しかも巧妙で、私ほど書類を記憶できないと見破れない。

「コーデリア様の完全記憶能力がなければ、すり抜けていたでしょう。」

「うーん、念の為にここ五年以内に設立されたり組織改編された部署を確認しましょうか」

 それから夜にかけて私たちは小さな部署を重点的にチェックした。

 そうしたら出るわ出るわ。

 ひとつひとつの部署の金額は大きくないが、ちょっとずつお金が抜かれてなくなっている。

 オルドスさえも机に手をついて驚いていた。

「こ、これは……単独犯ではありません! 指南して、主導した人間がいるはずです!」

「そんなことが出来るのは、ひとりしかいないんじゃない?」

 私は王都のある西に顔を向けた。

 いくつかの部署はそもそも抜け道用に設置された雰囲気がある。

 しかも大臣が変更されたタイミングで設置されるか、怪しげな予算が計上されている。

 私が不在になってからはさらに露骨に予算を操作しているようだ。

 これは、これらのお金の流れは……私はピンと来ていた。

 メルダと黒服たちの活動費はどこから出ているのか、ちょっと疑問だったのだ。

 実際のところ、ディルダも無制限にお金を使えるわけではない。

 各貴族と住民の反発を無視できるわけではないからだ。

 にしてはヴォルデで聞く黒服は結構な数と工作がありそうだった。

「……陛下でございますか」

 オルドスへ頷き返す。

 ディルダの指導と承認なしにこんなにも予算を抜けるとは思えない。

「このような手段を使えば、相当の金額を流用できるでしょう……。しかし、これは遊興費に使われたとは思えません」

「そうね、恐らくは……裏工作の部分でしょう」

 私は黒服の件をオルドスへ語った。

 全国的にあのような工作をするのであれば、かなりの予算が必要だ。

 なにせ黒服へ情報を渡すとお小遣いが貰えるというのだし。

(まぁ、全部筒抜けなんだけど)

 ヴォルデの民は私のほうを向いている。

現状、黒服の動きの相当部分を私は逆に掴んでいた。

「まさか、そこまで……」

 オルドスは絶句していた。

 宰相になってまだ半年程度の彼は、ディルダの手の回しようをわかっていなかったのだろう。

「陛下は我らをそこまで信用されておられないのか」

「……どう考えるかはあなた次第ね」

「王都に戻られないのもそれが理由でしょうか?」

 切り込んできたオルドスに、私はあの――失礼極まりない書状を黙って見せた。

「……っ!」

 さすがのオルドスも顔を赤くして書状を読んでいる。

 今の私でも読み返すと怒りが沸いてくるのだ。オルドスも同じらしい。

「こんな礼を失した書状があっていいものですか! 帝国との話も元はと言えば……!!」

「やはり何かあったのね?」

 オルドスがはっとして口をつぐむ。

 だが、現状の公国はとても悪い方向に向かっている。

 ややあってオルドスが口を開き、帝国とのアレコレを説明し始めた。

 その内容に私はちょっとのけぞってしまう。

「えっ、二日酔いであの会合に……? しかも討伐数も目標に達していないの?」

「面目ございません……」

 オルドスから聞かされた皇帝の書状は、激怒していると言っていい代物だ。

 実力行使には出ないと思いつつも、裏で手を回してくるのは十分に考えられる。

「陛下はそれで、なんと?」

「手はあるから――と。それに……コーデリア様を当てにしているようでした」

「呆れた。それでメルダとあの書状なの?」

「はい……」

 今、公国の外交部門を思うと胃がきりきりとする。大変だろうな。

「コーデリア様と和解して帝国との協議を推進しなければ、どうなるか。陛下は考えがあるの一点張りでして……。」

「ふむ……」

 顎に手を当てて、私は考える。

 ディルダとの仲は長い……嫌なことではあるが、彼の考えはある程度読める。

 彼が手を考えてあるというのなら、見込みはあるのだろう。

 ただ誰もが丸く収まる魔法の手はもうない。ディルダの苛立ちを加味すると……。

「そろそろ彼のほうが実力行使に出るかもね」

「まさか!」

 オルドスが叫ぶ。

「コーデリア様をヴォルデに送ったのは陛下でございます。それでヴォルデが成功して、さらに手を出してこられると? 軍も承知するとは思えません」

「でしょうね。軍は陛下を支持してないでしょうし」

「むしろ討伐数が減ったことで今後の行方に不安を抱いております」

 公国軍は一万数千程度。

軍は魔獣との前線に立つ可能性もあるため、今のディルダを支持していない。

 まぁ、それを言ったら今のディルダを支持する公国の人なんて一握り――ディルダから甘い汁を特別に貰っているメルダのような人間だけだろうが。

 オルドスがまぶたをパチパチと動かして計算する。

「公国軍を動かすのは非現実的です。貴族も軍も支持しないでしょう。さらに帝国に接するヴォルデ領へ差し向けるなんて……エベラルド辺境伯も刺激します」

「普通に考えればそうなのだけれど」

 ディルダは普通ではないからな。

 しかも異常にプライドが高い。私を絶対にどうこうしたいはず。

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