6 五十二の歯車とジョーカー
「……五十二人。これで、全員か」
和馬が力なく呟いたその数字は、意図せずしてこの監獄の「運命」を決定づける楔となった。その中には、牢を出て和馬の傍らに跪く若者、そしていまだ檻の中から知恵を授ける老人・ジルも含まれている。
出発を前に、ジルは恍惚とした表情で、隣の若者、そして「主」である和馬へと語り聞かせた。
「良いか。この御方が選ばれたこの『五十二』という数には、神聖なる意味がある。古の知識によれば、これは一年を構成する五十二の週……すなわち、世界の巡りそのもの。四つのスートに分かれたお前たちが監獄を駆けることで、止まっていたこの地に再び『四季』が、そして『時間』が流れ始めるのだ」
若者は震える手で自らの胸を叩き、その言葉を血肉に変える。
「……一年の支配。俺たちは、主がこの世界を書き換える為の、週ごとの歯車というわけか」
「いかにも。そして、その全てを束ね、カレンダーの枠外から運命を弄ぶ不条理の象徴……。それこそが、五十三枚目の札、我らが看守長・和馬様よっ!」
(ちがうよっ!……俺はただ、クラスの人数よりちょっと多いかなって思っただけなんだよ!訳が分からない……ただ話がどんどんデカくなっている……!)
和馬は、こみ上げる涙をこらえながら、震える手で『黒い板』を強く握りしめた。
すると、彼のパニックに応じるように、板から放たれた青白い閃光が出発しようとする五十二人の囚人たちの胸にそれぞれ「スペード」「ハート」「ダイヤ」「クラブ」のマークを刻印していく。
「「「「おおお……!刻印を授かったぞ!これぞジョーカーの認印だ!」」」」
(違う……違うよ、『黒い板』が勝手に)
と言おうとした和馬の叫びは、またしても板の拡張機能によって「行けっ!!」という地響きのような咆哮に変換された。
その怒号を合図に、五十二人の精鋭たちは、それぞれの「季節」を司る守護者として、監獄の深淵へと散っていった。
静寂が戻ったプラットフォーム。和馬は、玉座の前に転がる「首無し骸骨」の隣でがっくりと項垂れた。
「……もう、どうにでもなれ。俺は、知らないからな……」
次の場面は監獄のダンジョン部ですね。
ひとまず、置きます。有難うございました。




