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転生したら世界で唯一複数紋章を内包できる【追憶の紋章】を授かっていた件 ~努力と想いを継ぐ紋章の力で運命をねじ伏せる~  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第2章 少年期 追憶の紋章

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第13話 紋章剣士誕生?

「ねぇ、お兄ちゃん? 私たちはどこに向かっているか知ってる?」


 エルへの墓参りを終えた翌日、俺たちは逃げるようにしてビサンド村を後にした。

 理由は明白。ここに追手がかかったらどうしようもないからだ。


「なんか辺境都市ラージャンってところに行くって、お父さんたちが言ってたよ」


 不安げなステラの手を、少しでも安心させようとぎゅっと握りしめる。


 辺境都市ラージャンはマルム帝国と隣接する街。

 帝国に追われている身としては、もっと遠くへ逃げる手もあるはずだ。

 それでもホークたちは、次の拠点をそこに定めたらしい。


 ステラも自分にできることを探しながら、こうして険しい山道を一歩ずつ進んでいる。

 だから、俺も負けていられない。


「お母さん? 魔力量ってどうやって調べるの?」


 エルの代わりに馬を引くアイシャに訊ねる。


「【火槍イグニス】や【氷槍グラキア】、【風槍ヴェント】を何回唱えられるかね。一度唱えられたら『1』。十回だったら『10』ってわけ」


 なんというか……ずいぶん原始的な数え方だな。

 そう思いつつも、少し興味が湧いてくる。


「メナト、今はやめておきなさい。【火槍イグニス】なんて撃ったら山火事になりかねないし、【氷槍グラキア】も山で働いてる人に当たるかもしれないでしょ?」


 ……確かに、言われてみればその通りだ。【火槍】は特にまずい。


「分かった。じゃあ、後で【風槍ヴェント】の魔法を教えてよ。魔法文字はたくさん知っているから、詠唱だけ覚えれば唱えられると思う」


「そうね。今日の野営ポイントで測ってみましょう」




 その夜――


『吹き荒べ、大気の刃。我が手に宿り、目に見えぬ槍と成れ――【風槍ヴェント】!』


 ホークに教えてもらった【風槍ヴェント】を宙に放つ。

 風の槍が、闇の中を一直線に走った。


「す、すごいな……百五十なんて……紋章師の中でもかなり多い父さんと同じくらいだ……」


 俺の魔力量はおよそ『150』。

 普通の紋章師で『100』ほど、普通の魔法師なら『10』から『30』程度だと聞く。

 つまり、俺はかなり恵まれたほうらしい。


 それなのに、この前の【咎人ニハ毒刃ヲヴェノム・グラディウス】では魔力が枯渇するまで使い切ってしまった。

 あのときは怒りに身を任せ、無意識のうちに膨大な魔力を込めていたのだろう。


「ねぇ、魔力って増えないの? 例えば、子どものころに何度も枯渇させたら、少しずつ増えるとか」


 誰もが一度は考えるような疑問を口にする。


「お母さんも昔やったことがあるけど……やらなくてよかったって、今は思ってるわ」


 つまり、効果はなかったということか。


「じゃあ、魔力ってどうやって回復するの?」


「一番は寝ることね。あとはしっかりご飯を食べること」


「飲み薬で一気に回復……とかは?」


「そんな便利な薬があればいいけど、聞いたことないわね……」


 どうやら、俺の夢を壊さないように、やんわりと答えてくれているようだった。


 次は少し離れた場所で腰を下ろすヨーダに声をかける。


「ヨーダ? ヨーダの【剣の紋章】について教えてもらえる?」


「……構わない」


「その紋章にはどのような効果があるの?」


「……刀剣類の扱いが自然と向上し、剣を使った自己鍛錬の効果が僅かに上昇。錆びた剣でも一時的に本来の切れ味を取り戻せるし、目利きもできるようになる……主な効果はそんなところだ」


 エルの記憶の中にもある言葉が並べられた。

 でも本題はここから。


「へぇ……じゃあ、斬撃とかを飛ばせるようになったりは?」


「……魔力があれば、できるのかもしれない。だが、あいにく俺には魔力がない。いや、まったくないというわけではないが……それこそメナト、お前ならできるかもしれないな」


 確かに。

 でも俺の【追憶の紋章(メメント・モリ)】に内包されている紋章は【剣の紋章】じゃないんだよな。

 ヨーダが剣を握れば【剣の紋章】は輝くが、俺が剣を持っても【追憶の紋章(メメント・モリ)】は反応しない。

 草に触れたときには反応するから、内包された紋章が機能していないわけではない。


 俺が考え込んでいると、ヨーダが静かに口を開いた。


「自分で創り出した剣を握っても反応しないのか?」


「うーん……反応しそうなんだけど、あれを使うと魔力がすぐ枯渇しちゃうし。それに、毒を付与するだけでもかなりの魔力を持っていかれるから」


「毒はやめておけ。というか、使うな。風下に大切な人がいたら、命取りになる」


 その言葉で、ハッとした。

 そうか……【咎人ニハ毒刃ヲヴェノム・グラディウス】を使った時、ステラを巻き込む可能性があったんだ。

 思い出すだけで、背筋が冷たくなる。


 だがステラは、そんな俺をかばうように言った。


「ヨーダ、お兄ちゃんが何も考えてないわけないでしょ!」


 迷いのない言葉だった。

 ステラ……ごめんよ。これからは気を付けるからな……。

 ヨーダの言うように、毒は無暗に使うべきじゃない。


 ただ、自分で創り出した剣であれば、もしかしたら【追憶の紋章(メメント・モリ)】が反応するかもしれない。


「今度、挑戦してみるよ。そのときは一緒に見てくれる?」


「……もちろんだ」


 よし、決まりだ。あとは詠唱を考えるだけ。

 寝袋に潜っても詠唱を考えながら、俺はゆっくりと目を閉じた。




 辺境都市ラージャンを目前に控えた夜――


「ねぇ、見てもらいたい魔法があるんだけど、いい?」


 焚き火の明かりに照らされながら、暖を取っているホークたちへ声をかけた。


「ん? 構わないが?」


 ホークの言葉と同時に、皆の視線が一斉にこちらへ向く。


「ありがとう。一応、怖いから……ステラのことは頼むね」


 そう言って、俺はゆっくりと右手を前へ掲げた。


『流れし血は悔恨となり、魂は鉄へと変ず。我に刻まれし咎人の剣よ、今ここに顕現せよ――【咎ノ剣(ブレード・ギルト)】!』


 【追憶の紋章(メメント・モリ)】が深紅の光を放ち、俺の記憶を呼び覚ます。

 血のように赤い魔法文字が宙を舞い、空間に魔法陣を描いた。

 そして、陣の中心から俺を刺し殺したナイフが一回り大きくなって姿を現す。

 柄に触れた瞬間、紋章は輝きを保ち続けた。


「な、なんだ……その剣は……」


 ヨーダが息を呑む。

 ホークとアイシャの顔も引きつっているのが分かった。


「……こんなことを言うのもあれだが……禍々しいというか、嫌な気配を感じるな」


 まぁ俺が死んだ時の剣をイメージしているからな。

 今回は血が滴るイメージを抜いたからこれでも穏やかに見えている方。本気を出せば、もっと禍々しく創れる自信がある。


 それに、どんな剣を握っても反応しなかった【追憶の紋章(メメント・モリ)】が、今は確かに応えている。ヨーダのおかげだ。


「どう? ヨーダ、この剣」


 まだ口をあんぐり開けているヨーダに訊ねると、ようやく我に返った彼が呟く。


「……ああ、その剣は呪われている……メナト、その剣を誰にも触れさせるな。怨念というか悔恨というか……とにかく負の力の集合体のようなものだ。メナトが創り出した剣だから、お前には影響はないと思うが……」


 散々な言われようだ。

 さすがのステラもその禍々しい気配を感じ取ったのか、自然と一歩、後ずさった。感受性の高い妹の前では、あまり見せない方がよさそうだな。


 とはいえ、ここで終わるのも勿体ない。

 せっかくだから、斬撃が出るかどうか試してみるか。


 剣を構え、魔力を練る。


『一陣の風よ、刃となりて敵を斬り裂け――【風斬ヴェント・スラッシュ】』


 魔法文字が宙に浮かび、剣を振り抜いた瞬間。

 ふわり、と木の葉を揺らす程度の風が吹き抜けただけだった。


 ……まぁ、そんなもんか。

 イメージが甘かったのもあるし、そもそも剣をまともに振ったのなんて初めてだ。前世でも、メナトも、剣とは無縁だったしな。


 それに、【追憶の紋章(メメント・モリ)】も特に反応を見せなかった。

 やはり失敗。そう思いかけたところで、ヨーダがふと提案する。


「……メナト、お前、剣を覚えてみないか?」


「剣を?」


「ああ。紋章師が剣を振るうのはあまりないが……その剣は、禍々しいが業物だ。使えずに朽ちさせるのは惜しい。今の【風斬ヴェント・スラッシュ】も剣の道を歩めば威力が高まるかもしれない」


 なるほど。

 せっかく自分で生み出せるのなら、扱えた方がいい。

 それに、まだ六歳。

 剣を学び始める子どもたちも、大体このくらいの歳からだ。ハンデなんてない。


「うん。やってみるよ」


 二つ返事で答えると、アイシャが少し不安げに口を開いた。


「でも……いきなり剣を振らせるなんて危なくない?」


「まさか。いきなり剣を振らせるつもりはない。ただ将来の選択肢を増やす、というだけだ。【曙光の鷹】のために……」


 ヨーダはそこで言葉を濁した。

 けれど、その意図はすぐに気づく。

 ――ステラを護るために。

 当然、ホークとアイシャもその思いを察した。


「そうか……そうだな。ここはヨーダに任せるか」


 ホークがゆっくりと頷く。

 その横で、ステラがぱっと顔を明るくした。


「うん! お兄ちゃんならできる! 私も応援するから!」


 父と妹に背中を押され、ヨーダの表情に闘志が灯る。

 胸を張り、拳を握ると、勢いよく声を上げた。


「よし! じゃあ、明日から毎日十キロ走だ!」


「えっ!? じゅ、十キロなんて走れないよ!?」


 俺の悲鳴にも似た声が庭に響くと、その場の空気が一気に和み、家族の笑い声が重なった。


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