第10話:新たなる幕開け
エリザベスの力が舞踏会場を変えてから数日が過ぎた。
学院は平和を取り戻し、エリザベスとヴァイオレットの和解は多くの人々に希望を与えていた。
エリザベスは、アルベールとマリアンヌ、そしてヴァイオレットと共に、学院の庭園でティーパーティーを楽しんでいた。
「本当に信じられないわ。こうして皆と笑って過ごせるなんて」
ヴァイオレットは少し照れくさそうに微笑んだ。
「ええ、私も。エリザベス、あなたを恨んでごめんなさい」
アルベールが穏やかに言った。
「君たちが仲良くなれて本当に良かった」
サンドラ『おほっほっほ!エリザベス様の魅力で、みんなをとりこにしてしまいましたわ〜!』
シャーロット『油断は禁物よ。でも…確かに今は、悪くない状況ね』
(そうね。ほんの少し前まで、こんな日が来るなんて思ってもいなかった)
エリザベスは温かな紅茶を一口飲みながら、仲間たちの顔を見渡した。
記憶を失って目覚めたあの朝から、どれほど慌ただしい日々だったことか。
頭の中で騒ぎ続ける人格たち。毒事件。舞踏会。そして…自分の中に眠る六つの力の覚醒。
(みんな…ありがとう)
シンデレラ『私こそ、みんなと一緒にいられて幸せだよ…』
レギーナ『フン。感傷的になるな。我々の戦いはまだ終わっていないのだからな』
「レギーナの言う通りね」
エリザベスは静かに立ち上がり、学院の空を見上げた。
青く澄んだ空。穏やかな風。どこか遠くで鳥が鳴いている。
平和な光景だった。
しかし——その時。
庭園の端、木々の影の中に、一瞬だけ人影が見えた気がした。
(…今、誰かいた?)
シャーロット『…私も感じたわ。魔力の残滓。でも…微弱すぎて捉えられない』
ジャスティス『怪しいわ!追いかけましょう!』
シャーロット『待って。今は動かない方が賢明よ。相手は私たちの存在をすでに知っている』
エリザベスはしばらくその場所を見つめた。
もう人影はない。風が木の葉を揺らしているだけだ。
「エリザベス?どうかしたの?」
マリアンヌが心配そうに声をかけてくる。
エリザベスは笑顔を作って振り返った。
「なんでもないわ。少し風が冷たくなってきたから…そろそろ中に入りましょうか」
(でも…あれは何者だったの?)
サンドラ『知りませんわ〜。でも、エリザベス様に無礼を働こうというなら…容赦しませんわよ〜♪』
レギーナ『フン。来るなら来い。我々は準備ができている』
エリザベスは誰にも気づかれないよう、静かに深呼吸をした。
平和な日々はもう少し続くだろう。
でも、嵐の予感は確かにそこにあった。
——この物語の、本当の幕開けはまだ先にある。
『六重人格悪役令嬢、魔法世界を震撼させる』 -第1章 完-




