駐馬車場
海までの道も人通りが多く、さすがに襲われる事はなかった。海付近はリゾート地となっているようで沢山のお店や屋台が並んでいる。駐車場ならぬ駐馬車場まであり追加料金を払えば馬のお世話もしてくれるサービスもあった。そこに馬車を預けて私達は散策する事にした。マルゴさんだけはテント内に残って掃除や片付けをすると言って馬車に残った。
「あの、私水丸と色々見てきてもいいですか?水丸にも自由に楽しんでもらいたくて…」
領主さんが笑って頷いてくれた。
「ああ。もちろんレンも自由に楽しむといい。ランドールとジェロームもいるからこちらの事は心配いらないよ。私も久しぶりにアンジェリカとデートを楽しむから。ははは。」
アンジェリカさんも頷いてくれた。ジェロームさんは苦笑いだ。親のデートを見守る息子か…。心中お察し申し上げます。
「レンお嬢様、馬車にはいつ頃戻ればよろしいですか?」
ランドールさんが懐中時計をポケットから出して確認する。
「ああ、時間決めとかないとまずいですよね。3時間後くらいでいいですか?」
私はそう言ってランドールさんの懐中時計と同じ物を魔法でだした。
「皆さんには防御魔法をかけてありますのでほぼ安全だと思います。でも変な人もいるみたいなので気をつけてくださいね。」
「レンお嬢様、ありがとうございます。私もジェローム様もそれなりにできますので大丈夫でございますよ。それでは行ってまいります。お嬢様もお気をつけて」
私と水丸はまずは屋台に行くことにした。お腹減ったし。
「水丸が好きな食べ物にしよっか。美味しいのがあるといいね~。」
《レン、あっち!あっちから美味しい感じがする!》
水丸の誘導でたどり着いた屋台はフルーツのお店のようだ。両手に収まるくらいの葉っぱの上に色々なカットフルーツが乗っている。2つ購入するとシロップをかけて渡してくれた。簡単な飲食スペースで食べることにする。
「ちょっと酸っぱいフルーツも入っているけど、シロップと一緒だとちょうどいい甘さだね~。水丸大正解だね。」
《水丸甘いの大好き~》
次に水丸が選んだ海老みたいなやつの塩焼きも美味しかった。水丸センサーに外れ無しだ。
それにしても本当にきれいな海だ。海の中もきっと素晴らしいのだろうな。私は映像でしか見たことがない南国の海中を想像する。…この世界の私なら簡単に海中散歩できるんじゃない?箱の魔法でいけそうな気がする。念のため防水のイメージも追加しようか。
私は路地裏に入り周りに人がいないことを確認して箱の魔法をかけた。水丸は私が抱えることにする。沖の方まで飛んでいき箱をそっと水に沈める。浸水していないことを確認し水中に入ってみた。
「うわあ、凄いきれい!魚もカラフルだねえ。」
完全に水中に入ったが問題はないようだ。
初めて生で見る珊瑚礁はとても美しい彩りで映像でみるのとは全く違う迫力があり私はとても感動した。
《レン、あれ面白いね~》
水丸の言う方向を見ると亀みたいな魔物が集団で輪になってその輪を広げたり縮めたりするような動きを繰り返している。フォークダンスみたいだ。
「本当だね。何だろうね。」
やっぱ地球の海とは少し違うみたいだ。私はあまり深く潜ることはせず海中散歩を楽しんだ。
海中の景色を満喫した私は路地裏で箱の魔法を解除した。お土産屋さんでも覗こうとお店のある通りをキョロキョロしながら歩いているとすれ違いざまに腕を弾かれるような動きをする人が何人もいた。多分リュックを狙ったスリだろう。関わると面倒そうなのでほっといた。貝殻を使ったかわいい細工が施された小物入れを見つけたのでマルゴさんへのお土産に購入した。やはりカードを使うのは気が引けるので自分のお金で。マルゴさん喜んでくれるといいな。
馬車にはまだ領主さん達は戻ってきてなかった。私がマルゴさんにお土産の小物入れを渡すと最初は遠慮されたが、服やテントの掃除のお礼の気持ちだと言うと嬉しそうな顔で受け取ってくれた。
そろそろ時間だなと思いテントの外に出るとちょうどみんながこちらに向かってきているところだった。さすがランドールさん。領主さんとアンジェリカさんに時間を守らせる事ができるのはきっと彼しかいないだろう。名残惜しそうなアンジェリカさんをなだめつつみんな馬車に乗りアパメの街を後にした。




