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異世界 IN THE 頭部  作者: ぽかり。
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多くの人は知らないが、地球の表面を特殊な器具で剥がすと、地球内部のちょっとした空間を開くことができる。専門家の推測によれば、その空間は東京ドーム54007個分あるらしいが、実際に踏査して確かめた人は一人もいない。冷戦下でソ連が一度調査団を地下に送ったのだったが、総勢25名の特殊な訓練を受けた大人たちは、誰一人として戻らなかった。楽観的な子供たちは、地下には希望の国が広がっていて、大人たち、しかもプロフェッショナルの大人たちをすら虜にしてしまったのだと考えて、プルプル体が震えるくらいの喜びを感じワクワクした。悲観的な老人たちは、地下には恐るべき地獄が待ち構えていて、大人たちを様々な残虐な方法を用いて、地上へ帰る手段を奪ったのだと考えて、ガタガタ青くなって震え丸メガネがカタカタと上下に揺れた。

現在、世界中が地下の存在を、あたかもはじめから存在しないもののように扱っているのは、残念なことに、老人たちの妄想の方が、現実に近かったからだ。地下が本物の地獄なのかどうか定かではないが(だって、地獄を本当に見た人はいないから)地下には頭にツノの生えた男や、燃え上がりながら転がる車輪、プランクトンの影響からか真っ赤に変色した川が流れていた。地上ではなかなか見られない景色に、旅行代理店は観光事業を考えたが、どんなに鈍感な観光客でも、銃弾の飛び交う戦場にはわざわざ出向かないように、地獄に軽い気持ちで行こうとする人はいないだろう、とすぐにその邪な考えを取り消した。

しかし中には執念深い人もいて、彼は地獄の安全なルートを見つければ、観光事業も絵空事ではなくなると考えた。かつては未踏の地と呼ばれ、人の立ち入れなかった場所が、先人の努力によって足や橋を作られ、気づけば観光地に変わっている、という例はいくつも見つかる。男は早速登山用の装備を身に纏い出発したのだったが、入獄わずか27秒で、人食い朝顔に食われて死んでしまった。バラバラに飛び散った残りの体は、ダンゴムシが集まってきて綺麗に舐めとった。


そのようなことがあると、中天使にとっては少々厄介だった。というのも、地獄の死者は、地上の総死者数にカウントされないからだ。本来、自動でカウントされる死亡者数だが、地獄にはカウンターがないため、書類で処理しなければならず、手間がかかる。大天使は基本的にこのような雑用を道化に任せてしまうのだが、中天使には道化が支給されていない。だから、全て自分でやらなければならないのだ。

お金をかければ、中天使でも道化を買えるのだが、もし大天使になったら、無償で道化をもらうことができる。しかも高級な道化だ。基本的に二体も道化はいらないし、維持費もかさむので、結局買った方の道化は手放すことになる。また、売りに出しても、使用済みの道化は元値の半分以下で取引される。総合的に見て、よほど経済的に余裕のある天使でなければ、道化を買う必要はないという結論に至った。とはいえ、それは彼に限らず、ほぼ全ての天使がいつも考えていることだった。

「仕方ない、手紙を出すか」

中天使は、自分の地上の管轄に対応する地獄の地域の鬼に手紙を書いた。これこれから、これからまでの期間で、地獄で死んだ人間はいませんでしたか?と。

後日地獄から返事があり、丁寧な手紙とともに、数枚の写真が送られてきた。どれも地獄で死んだ人間の、死ぬ瞬間、最後に生きていた瞬間の写真だった。天使は、こんな風に写真に撮っている暇があるなら、助けてあげれば俺の仕事もなくなって上手くいくのに、この鬼は仕事もしないで写真なんか撮って暇人が、こいつのせいで俺はめんどくさいことに、、、と思ったが、角が立つのでありがとうございます、よく撮れてますね、とすぐに返事を書いて地獄に返信した。直下降ポストに投函した帰り道に、甘い香りがして見上げると、桜の花が咲いていた。花びらが天上の雲に乗っかって、白とピンクで美しかった。

「もう春か」

と天使は言った。あとで、女の子に電話して、花見にでも誘おうかな、と思った。

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