田園風景
コダと一緒に家を出た後、村長の家がある高台の下に来た。
「ここを右に曲がると田んぼがあるんだ、こっちから案内するよ」
さっきと違って向きが逆なので村長の家を上とすると右側に当たる方向だ。
高台の壁に沿って歩いていくと水田が見えてきた。
水田が太陽の光を反射してキラキラ輝いていて綺麗だった。
水田には村の人たちが何人か作業をしていた。
水田は結構大きかった、一つにまとまっているのではなく、何個かに分かれて広がっている。
今はあんまり聞かない表現だけど、水田全体は東京ドームなら2個は軽く入りそうな面積だ。
水田には稲がちょうど水面から顔を出している時期のようだ。
昔、田んぼで米を作るアクションゲームにハマっていた影響なのか、田んぼを見るとちょっと楽しくなった。
「結構大きいね、大体どれぐらい米はとれるの?」
「そうだなぁ、年によってバラつきはあるけど大体450俵くらいかな」
米俵って確か日本だと60kgだったよな。
この世界も同じ基準だったら・・・27トンの収穫量だ。
ここの人口が200人ほどとすると、十分に米が食べられる計算だ。
まさか異世界でも米を食べられるとは思ってなかった。
日本人として米が食べられないと思っていたところに、食べられると分かったときの喜びは大きかった。
「結構とれるんだね、今日は猪の料理だったけど普段は米を炊いて食べるの?」
「いんや、取れた米の三分の一は税として領主様に収めるんだ。あとはアゴ村との交換だろ、町で売って金に換えるだろ、種もみの準備をするだろ・・・。そんなんでオラたちはめったに米食えねぇんだわ」
「そうなんだ・・・」
「あ、でもお祝い事の時とかは食えるぞ!」
「あとは病気になって弱ってる時とかも食べれるんだ」
こんな広い水田で米を作ってもみんなが食べられるのはごくわずか。
米を簡単には食べれそうにないことも悲しかったが、特別な時ではないと振舞われない体制に少し驚いた。
「じゃあ普段は何を食べているの?」
「なんだハル、さっきも食ったじゃなねぇか、芋だよ芋!」
あぁ、干し芋やスープに入っていた芋か。
「じゃあその芋はたくさん採れるの?」
「ん-沢山じゃねぇぞ、結構ぎりぎりだ。だからこの前もほかにあげちゃったら、かーちゃんに怒られたんだわ」
結構この村の食糧事情は大変なようだ。
その上で山や家で、貴重な食べ物をくれたことを思うと胸が痛かった。
確かにドネが食べ物のことに強く反応する理由がわかる。
「そんな状況なのに飯ごちそうしてくれてありがとうな」
「ん? 気にすんなよ、困ったときはお互い様だろ!」
何の嫌味もなく笑ってくれるコダには感謝しかなかった。
「んで、あそこの田んぼの奥に流れてるのが川だ、ハルが猪に襲われたところの川が下ってここに流れてんだ」
「あぁ、あの川か」
そういえば靴や服をあそこに置いたままだった、いつかは回収しにいかないと・・・
「ただよ、あの川の水は領主様の管理だから田んぼのこと以外に使っちゃいけねぇんだ、ハルも使ったら罰を受けちまうから気をつけろよ」
「そうなんだ、でも何で勝手に使っちゃダメなんだ?」
「日照りとか干ばつの時に川の水が少なくなって、田んぼに水が回せなくなっちまうんだ、だからオラたちはここの水を使っちゃいけねぇんだ」
「けど、狩りの最中で水を飲むことは許されてんだ」
「じゃあ普段の生活では井戸を使うの?」
「そうだぞ、でも雨季の時はいいが乾季が来ると雨がすくねぇから井戸の水も少なくなっちまう、あんまり大量には使えねぇよ」
納税や村全体の運営のために川の水も自由に使えないのか・・・
それに季節によって井戸の水も不安定で自由に使うことはできない。
そういえば話で雨季や乾季の話があったな。
ここって四季はないのか?
「ねぇコダ、一年で来る季節って雨季と乾季の二つなのか?」
「そうだ、雨季と乾季で米作って収穫するんだ、それでさっきの数だ」
「あ、じゃあ年に二回収穫するんだね」
四季がないことと、この村は二期作だと知れた。
この世界の厳しさを少しでも見えたことの気持ちから逃れたいために田んぼを見直す。
あれ・・・
顔を出している草の位置取りがバラバラだな、確かあのゲームや日本でも位置って均等に並べてたよな。
「米を植えるときってどうやっているの?」
「ん、そりゃあ田んぼに向かって種もみ撒いて芽が出てくるのを待つんだよ」
確か田植えって少し育ててから行うために、育苗してたよな・・・
なんか自分の知っていることと違うな、この世界はこれが正しいのか?
そんなことを考えていると、
「じゃあ次行こうぜ、次は畑案内してやる!」
「あぁ、わかった」
そう言って二人で水田を後にした。




