御殿場の星空
この作品を作るのにあたり、数多くの作品を作り出した皆様、
独自の世界観で新しい価値観を描いてこられた皆様、
これら全てのクリエイターの皆様に心より感謝を申し上げます。
そして、長い歴史の中で文化を築き、暮らしを積み重ね、
今日までの知恵を受け継いできた、世界中の皆様にも心より感謝を申し上げます。
歴史や文化、創作された物語、人々の営み
これらを胸に抱き、作品を投稿させていただきます。
御殿場の山で星を見ていた。
仕事が終わった次の日の土曜日に、テントと食料、キャンプグッズを用意してソロキャンプである。
今は5月の第二土曜日の21時頃。
食事を済ませて暗くなると夜空が光りだす。
月の光もなく、静かに星を見れる最高の時間だ。
満天の星空、冷たく澄んだ空気を楽しんでいたが、ちょっと嫌なことを思い出した。
「この前の契約何で失敗したんだろう・・・」
「あの工場だって新しい機械を取り入れれば作業効率が上がるし、作業効率が上がれば生産効率も上がって利益だって出せるのにさ・・・」
「それを、うちの会社じゃいらないかな、機械が変わったら従業員がついてこれないし、いまのままでいいよ。なんて言ってくるし、何がまた今度紹介してくださいだよ、平均年齢が高めの会社だから生産効率上げて、使えない従業員削れるじゃん」
この前の営業で失敗したことを思い出して、一人でちょっと愚痴ってた。
嫌なことがあったときは大体星を見に来ることが多い。
気を取り直してまた星空を眺める。
「あ、おおぐま座だ」
北斗七星の柄をたどる様に見ていくと、アークトゥルスが輝いている
「あれがスピカで、あっちがデネボラだ、いいなぁ・・・」
都会じゃなかなか見れないアークトゥルスとスピカへと続く、春の大曲線。
デネボラを加えた春の大三角を楽しむ。
「おぉ、かみのけ座やりょうけん座も見える、ここにきて正解だったなぁ・・・」
立ったまま時間を忘れて星を見ていたら、ゾクゾクっと体が震えだした。
「やっぱり5月の山の夜は冷えるなぁ・・・」
寒さ対策にジャケットを着ていたが、夜の山は10℃を切る寒さだ、体も冷える。
少し離れた場所に設置したテントに戻り、ランタンを用意した椅子に座って、温めていたお茶をコップに注ぐ。
コポコポと音を立てて注がれたコップはあたたかな湯気を登らせていた。
立ち上る湯気が鼻孔を温めてくれる感覚と香りを楽しんだ後に、ゆっくりとお茶をすする。
「あぁ・・・最高に贅沢だ・・・・」
ゆっくりと息を吐いて、座ったまま顔を見上げて星を見る、
ランタンの明かりがあるせいで、見える星は少し減ったがまだ見えるものも多い。
「仕事しなきゃなぁ・・・」
星を見て、この前の失敗を徐々に切り替えていく気持ちになってきた。
「もう少ししたら、切り上げて寝る準備しようかな・・・風邪ひいちゃ駄目だしね」
そう思ってもう少しだけ、と夜空を眺めていたら、夜空が急にぼやけてきた。
「あれ、なんか視界が・・・というか何だこの眠気・・・・」
今まで感じたこともない眠気が体を支配していく。
急いでテントに入ろうとしても体が動かない。
頑張って立ち上がろうとしても足に力が入らない。
「だ、だめだ・・・かぜ、ひい、ちゃ、う・・・・」
そのまま椅子から落ちて意識を失った。
どれくらい意識を失ったかわからない、だんだんと意識がはっきりしてきた。
来ている服が無性に暑くてたまらない、目を閉じたままジャケットを脱いだ。
それでもまだ暑い。
「あ、暑い・・・?」
御殿場の夜は10℃を切る寒さのはずだ、なんでこんなに暑いんだ?
違和感に気づき、意識が覚醒する。
この時期なら聞こえないはずの、虫やカエルの鳴き声も周りから聞こえてくる。
「どこだ、ここ・・・?」




