表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇堕ち令嬢シンシア ~死に戻り少女は死なないことにした  作者: 九條葉月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/55

閑話 魔族の男・3

 


 魔王軍の四天王・グリッジは『聖女』が出現したという街の近くまで転移した。魔王から厳命されたので、ここからは徒歩での移動となる。


 もちろん、憐れな魔族の男も同行している。……正確に言えば服の襟を掴まれて半ば引きずられているのだが。


 人(魔族)一人引きずっているというのにズンズンと早歩きをするグリッジ。そんな彼は何かを思い出したかのように立ち止まった。


「そういえば、お前の名前は何という?」


 今さらか。というツッコミはグッと飲み込む男だ。そもそも四天王が密偵の名前を覚えているはずがないのだから、今さらとはいえ問いかけてくれたことには感謝するべきかもしれない。


「ははっ、ジールでございます」


「ジールか。お前は聖女を見たのだったな? どんな風貌だった?」


「はい。何とも美しい女でした。特にすらっとした立ち姿や、銀色の髪などこの世のものとは思えぬほどで……」


 魔族と人間はまるで異なる生き物だ。魔族は人間よりも魔力が高く、寿命も長いのだが……その影響か子供の数は極端に少ない。


 人間と猿よりも、さらに遠いはずの存在。


 だが、だというのに、人間と魔族は言葉が通じるし、美醜の感覚も一致していた。まるで『同じ世界』で暮らす上で不都合がないように仕組まれたかのように……。


 ともあれ、そんなことは疑問にすら(・・・・・)思わない(・・・・)グリッジとジールだ。


「そうか。そこまでの美人であるなら殺す前に『楽しむ』のもいいかもしれないな」


 グリッジの下卑た笑みを見て、『楽しむ』がどういう意味なのかを察したジールだ。


「あの、相手は聖女ですし、隙を見せるようなことをしては……」


「なぁに、しょせん甘ちゃんの女だ。人質を取れば何もできまい。それに聖女は頑丈だからな。俺が本気で動いてもしばらくは死なんだろう」


「は、はぁ……」


 なんとも舐めた態度のグリッジだが、ジールはそれ以上言葉を紡ぐのは諦めた。魔王様の発言すら理解しているのかいないのか分からない男だ、ここでジールが何を言っても無駄だろう。


 それに、これ以上のやり取りをしては――嫌悪感(・・・)が口を突いて出てしまうかもしれなかった。


(あれほど美しい聖女様(・・・)を、欲望のはけ口にしようなど……)


 自分が何を考えているか、自覚しないまま。


 ジールはグリッジの後に続いて、子爵家領の領都を目指すのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ