死に戻り令嬢
苦節12回。
私は、12回も人生をやり直した。
いや、自分の意思ではないから『やり直させられた』という方が正確だろうけど。
ありきたりなゲーム世界への転生。
自分が『悪役令嬢』にさせられたと気づいたのは、断罪される前日のことだった。
もちろんそんな時点で気づいてもどうすることもできなくて。私は聖女を虐めたという冤罪によって追放。職も伝手もなく放り出された貴族令嬢が『箱』の外で生きていけるはずもなく、すぐに死んでしまった。
それが、1回目。
気がついたら7歳の子供時代に巻き戻っていた。
そこから先は我ながら頑張った。頑張って頑張って、『悪役令嬢』にさせられないよう人生をやり直した。前世の原作ゲーム知識を活用して、イベントを一つ一つ潰していき、真っ当な人生を歩んだはずだった。
我ながら何とも『善人』な人生だったと思う。
でも、結局は聖女を虐げたという冤罪を吹っかけられ、追放。
そしてまた時は巻き戻り。
三度目はもう少しマシだったけど、結局は失敗して死亡してしまった。
三回もやり直していると、だいたい攻略方法も分かってくるものであり。どうやら、婚約者である王太子殿下からの好感度が私の結末に大きく関わっているみたいだった。
そこからはもう、テンプレな王子様攻略だ。
何度も何度もやり直し、殿下がいつどんなことを考え、どんな悩みを抱いているかを把握して。完璧に、完全に。殿下のためになる行動をし続けて。何度も何度も断罪されて。処刑や追放、その他多種多様なバッドエンドを経験して……。
そうしてやり直し続けた12回目。私はとうとう殿下を『攻略』したのだった。
問答無用のハッピーエンドだったと思う。
殿下と結ばれて。皆から祝福される結婚式を挙げて。子宝にも恵まれ、王妃として国をさらに発展させた。
殿下の妻として走り続けて、50年。私は子供や孫、さらにはひ孫たちに囲まれて幸せな生涯を終えたのだった。
そうして。
私の物語はお終い。
運命に打ち勝ち、幸せになって。ハッピーエンドを迎えたはずだった。
だというのに……。
「……なんで?」
目を覚ます。
死んだらもう目覚めないはずなのに、私は、目を覚ました。
嫌な予感がする。
都合12回。経験してきたことだ。もはや確信にも似たものを抱いている。
ベッドから飛び降り、鏡を確認。
鏡に映っていたのは――7歳の、私の姿だった。
顔に深く刻まれていた皺は、なくなっていた。
全て白くなったはずの髪は、金色に戻っていた。
どこからどう見ても7歳の幼女。ちょっと目つきが悪いながらも、十分『可愛らしい』と呼べる外見。記憶にあるとおりの姿……。
運命に打ち勝ったはずだった。
悪役令嬢という軛から解放されたはずだった。
王太子殿下に愛され、王妃となり、幸せになったはずだった。
でも、結果はこれ。
私は13回目の人生を強制されていた。
前世の物語では、幸せになればそれで終わるはずだった。
ハッピーエンドを迎えれば、それでお終いのはずだった。
でも、私はまた回帰させられて。
まだ、繰り返しの輪から逃れられることはできなくて。
――死んだら、やり直さなきゃいけないんだ。
私は、理解した。




