## 黄昏のような彼女に、彼は自覚し覚悟する。
「……? ……あ、ねぇ。あのさ」
ことんと首を傾げながら、本多さんはそう言葉を発する。
今度は俺が首を傾げると、本多さんはなぜか躊躇いながら囁いた。
「あの……えっと。橘山くん、って、……なんで、この公園に来たの?」
「え」
予想外の質問に、俺は目を見開いたまま硬直する。
俺だって、思ってた。
なんでこんなにも明るい本多さんが、この公園に来てるんだろう。
家に帰りたくない、って、どういうことだろう。
でも、聞けなかった。
俺だって、聞かれたら答えられないから。
——なのに。
「なん、で……」
「え、っと……橘山くんのこと、もっと知りたい、って思った、から?」
「っ、」
なんで。
なんでそんなこと、言うんだよ。
俺はずっと、和也以外との人との関わりを避けて来た。
だから。俺のことを知りたいなんて。
そんなこと、言う人はいなかったのに。
——なのになんで、こんなにも。
心臓が、高鳴っているんだろう。
本多さんに知りたいと言われたことが、嬉しいんだろう。
俺まで、本多さんのことを知りたいと思ってしまう。
「あっ、濁してくれたらいいから! 全然!」
慌てて言って、そう笑う。
その黄昏の笑顔も、鈴のような声も、ふわふわと靡く髪も。
彼女のすべてを、知りたい。
彼女のすべてをつくりあげているものを、知りたい。
だから。
俺も、覚悟決めなきゃ。
「——母親が、いなくてさ。祖父母と父親と、父親と再婚した義理の母親と暮らしてて」
「……、」
「それで……居心地が、悪くて。家に、帰りたくなくて。公園に、来てた」
一つ言葉を切って、また続ける。
「本多さんと会ってから、さ。ちょっと……毎日、楽しみにしてるんだよ」
「……ふぇっ、え⁉ わっ、わたしと会ってから、って……」
顔を真っ赤にしながら慌てる本多さんが面白くて、思わず笑ってしまう。
ああ。
やっと、自覚した。
俺は。
この黄昏のようなひとに、
恋焦がれているのだ。




