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[二部九章]あの時の約束

久しぶりの内面世界~Unknownとの約束。


『‥‥‥‥‥‥ここは』


気がついたら、見知らぬ場所に立っていた。

荒れ果てて、小石一つすらないような荒野。

けど、なんでだろうか。とても既視感のある光景でもある。


「やーっほー、久しぶり、って程じゃないけどちょっと間が空いたかな。こんにちは、私。」


そう声をかけてくるのは、真っ黒な私。


『‥‥‥‥‥Unknown』


ポロッと零れ出たのは、知らない単語。だけど、目の前の彼女を示す言葉だと直感で分かった。


「あー、流石に何回か来てると記憶に引っ掛かりはするか。そうだよ。私はUnknown。もう一人の貴女。」


そう言われて、Unknownをじっと見つめる。

今日は、フリルの沢山ついた真っ黒なドレスを着ている。

前はもっと簡素な服装だった気がする。


「あ、これ?これは“私”の趣味。可愛いでしょ~」


そう言ってくるくるりと回って見せてくるUnknown。

こくりと頷くと、ちょっと真面目な顔になってじっとこちらを見つめてくる。


「それにしても、なんで今回“ここ”に来たのか分かってる?」


そう問われても、ここがどこか、まだ私は分からない。‥‥‥‥多分、Unknownの口ぶりからして、何度か訪れているんだろうけれど。

それを察したのか、Unknownが辺りを見渡してから私に詰め寄ってくる。


「何度目かの説明だから簡単に。ここは貴女のこころの中。私はその管理者。おーけー?」


『うん。分かりやすい説明ありがとう。』


「‥‥‥‥‥‥どーいたしましてぇ。さて。じゃあ何でここに来たんでしょーか。」


記憶の中を探ってみる。

ふと、視界が真紅に染まって、私がここに来る直前の事を思い出す。


『“アザトースの義足”。』


そう呟くと、Unknownはにんまりと微笑む。どうやら正解のようだ。


「そ。咄嗟に反応してこちらも義足を展開したけれど、防御としては紙切れ一枚分程度ってところかしら。死なないで済んだだけ行幸ね。」


『でも、なんであんな存在が地上に?』


天上での記憶なんか私には無いに等しいけれど、若狭が教えてくれた。アース=プラネットという名の、ノアの方船の主が私を拾ってくれて、天上の神々の目から逃れさせるためにしばらく滞在させてくれていたって。

であれば、私は‥‥‥‥‥


「そ、見つかっちゃったわけ。原因に心当たりくらいあるでしょ?」


そう言われても、と言いかけて、黙る。


心当たりなら、しっかりと一つ、これだというものがある。



『‥‥‥‥‥ティナ。』


「そ、それも正解。あの子に見つかっちゃった時点で天上の神々か他の何者か。そう言ったものに見つかったのはまず間違いないでしょうね。そして、殺されかけた。」


‥‥‥‥‥‥?ひとつ、違和感を感じた。


『Unknown。』


「何よ。」


『“捕まえておきたい存在”を、“殺そうとした”。矛盾してない?』


ここが私の心の中で、こうやって管理者であるUnknownと会話ができるということは、きっと私が頭の中を、意識のないうちに整理しようとして起きている事象のはず。


「‥‥‥‥‥ちょーっとそれは浮かばなかったわ。確かに。んで?私はどう考えてるの?」


『刺客の行動を、制御できていない。つまり、』


あぁ、とUnknownが言った。


「刺客は、私達と同じく創られた存在である。‥‥‥‥‥しかも急ごしらえで、ね。成程。」


私はこくりと頷く。

すると、Unknownは心底面倒くさそうな顔をして言った。


「ねぇアンタまさかまた‥‥‥‥」


『だって、どうにかできるかもしれない、そうでしょう?』


「そりゃそーなんだけど。‥‥‥‥‥多分、それ、一番難しい行為よ。」


苦虫を口の中いっぱいにして咀嚼したような顔をするUnknown。


『うん。でも止めない、止められないでしょ、Unknownは。』


そう言うと、心底不愉快そうな顔をしつつも頷くUnknown。


「はぁ‥‥‥‥もう!自分を殺した相手が“操られてるかもしれない”からって“助けよう”なんて!本当にもう!その存在に殺されかけたのよ!?私は!!」


『でもそれに当人の意識が乗ってないなら罪にならないと思う。』


「だー!!!!わぁかったわよ!!納得してあげる!もう、前回の約束だって守ってくれやがったし‥‥‥‥」


そう言ってある一点を見つめるUnknown。

視線の先を追うと、一輪の、小さな花が咲いているのを見つけた。


『これは‥‥‥‥』


「自覚のないとある感情。‥‥‥‥‥‥前回、約束を押し付けたのよ。私。花の一輪でも咲かせて見せなさい、暇だから、ってね。」


『‥‥‥‥‥‥その感情は、教えてはくれないんだ?』


「当然。教えるつもりなんか無いわ。んじゃ、思考も固まったことだし、さっさと帰った帰った!!全く、他の皆にどれだけ心配かけたと思ってるのよ、私。」


『‥‥‥‥‥‥ごめん。でも、Unknownもありがとう。』


そう言うと、きょとんとした顔をするUnknown。


『貴女がいてくれるから、私は節目節目にきっと貴女と話すことで自分を見失わずにいられる。だから、ありがとう。本当に。』


「‥‥‥‥‥‥ば、バッカじゃないの!?もう!あんたが死んだらこの身体乗っ取ってやるんだからね!!」


顔を真っ赤にして怒るUnknown。どうやら図星だったみたいだ。


『うん。そうならないように頑張るよ。‥‥‥‥‥じゃあ、またね。』


「はいはい。‥‥‥‥‥怪我には気をつけなさいよね。」


最後まで素直じゃない私だな、なんて思いつつ、私はUnknown、もう一人の私にさよならを告げる。





Unknownは葵さんじゃないけど、確かに葵さんでもあるのです。

だから、彼女はきっと約束を守ってくれるでしょう。

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