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[二部八章]隣り合って重ならない世界

今回は甘酸っぱい展開から一転してちょっと真面目な話になります。


暫く、沈黙の時間が訪れる。

全く以て集中できていない私をよそに、要君はただただ大事そうに私の事を抱きしめる。

もしかしてわざとじゃないかとも思うけれど、ちょっと気恥ずかしさの方が勝って聞けない。

そんなことを考えていると、上から声が降ってきた。


「んで、天使様ってなんなんだ。」


『まだ覚えてたの!?なんもないってば』


「お前は何の意味もない言葉を発しないと俺は思うんだが。お前の言葉はたまに人間離れしたところもあるし、その辺りの説明を求めたいところだな。説明しないならそれなりの理由を教えろ。」


‥‥‥‥なんだかんだで、要君は私の事をよく見ているんだなと思った。


多分、これ以上は誤魔化すことは難しいだろう。

ただ、むやみに話すこともないと思う。

けど、もしも私の“勘”があっているのであれば、彼には話さざるを得ない時が来るはずだ。それならば、今説明しても構わないかもしれないとは思う。


『要君。今から一分間。瞳を閉じて。』


「ん。」


彼は素直に瞳を閉じる。それを確認してから、私は“部屋にかけていた魔術”を解く。


「一分経ったが?」


『じゃあ目を開けて。ゆっくりと。』


ちゃんと指示通りに瞳を開ける要君。

彼の目の前には、今、たくさんの異形の標本や魔導書、古文書などが散乱しているのが見えるはずだ。

そして、それらは本来“常人には耐えられないもの”だ。


「‥‥‥‥‥これが、お前が隠していたものか?」


『‥‥‥‥‥‥そうだね。ねぇ、要君。“異形”って見たことある?』


拒絶反応は、無い。

つまり、彼は知っておくべき側の存在だと思った。

少しだけ、深呼吸をする。

彼は、私が人間じゃないことを知ったらどんな反応をするんだろうか。


「外見が一切変わらないお前を除けばいないと思うが?まぁ、本家にはそう言ったものが受け継がれてるとか聞いたことがあるくらいだな。それがどうした?」


本家に、分家。もしかしてと思い、ちょっと話を寄り道させる。


『要君。もしかしてその本家って“寿”?』


「そうだが?何でお前が知ってるんだ?」


あぁ、そうか。

それなら納得したし、話さない理由もなくなった。むしろ話さないといけなくなった。


『寿 文人、って言うのは親戚かな。ちょっと今、彼が私の妹と一緒に行動してるんだけど。』


「文人ならよく知ってるが?それにしてもお前、妹なんかいたのか。‥‥‥‥‥そいつがどんな人物かは知らんが、お前の言い方から察するに文人が一緒にいるならそいつも、お前も人間じゃないんだろう?」


うん、頭の回転が速い人間はこれだから困る、というか話がサクサクと進みすぎる。


『そうだね。改めて名乗るよ、要君。私は天音 未希。天使とか、そういった“癒し”の要素を持った存在だよ。人間じゃない。後妹の葵ちゃんはもっといっぱいまぜこぜになった存在。

この部屋の物もそう。“隣り合って重ならない世界”、人ならざる者の世界だよ。』


「そうか。」


『なーんか反応が淡白だなぁ。なんかこう、ないの?びっくりしたー、とか。』


「俺が言うと思ったか?」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥反応の想像ができない。

まぁ、拒絶されるよりよっぽどいいや、と私はため息をついた。


「で、その異形の話で本家、分家と来たら俺もそういう人間じゃない物の血を引いている可能性があるって事か。」


まぁ、そこまで推理するのは要君の頭でなら簡単な事だろう。

私は特に隠すこともなく頷く。


『常人ならこの部屋の、今の本来の姿を見ただけで発狂しちゃう可能性があったからね。だから隠してたんだけど‥‥‥‥‥何の因果か、要君はそこそこその異形の血が濃いみたいだね、何ともないでしょ。』


「まぁ、興味を惹かれるくらいしかないな。その辺の説明はしてくれるんだろう?」


まぁ、本来なら隠し通すつもりだったけれど、彼の興味や好奇心の強さは幼いころから折紙付きだ。ここで下手に誤魔化すよりかは、一つ一つ説明して理解して、危険な行動を起こさないようにしてもらった方が楽そうだ。


『時間はかかるけどね。でも、知りたいんでしょう。さっきから目がキラキラしてる。色んな意味で。』


「そりゃな。んで?いったいどういった事情で、この部屋で行われていることの目的は何なんだ?」


相手が頭がいいと、話がとても進めやすくて助かる。それに、要君の頭脳を借りられるんなら葵ちゃんについても何か新しい視点から情報が得られるかもしれない。


『まず、私が今しているのは、妹の葵ちゃんの持つ性質が、今何が一番強く出ているのか調べているんだ。それが分かれば、いまちょっとごちゃごちゃしてる葵ちゃんの状況がよくなるかもしれないからね。で、その調べている内容についてなんだけれど——————————』


それから、私は要君に色々な話をした。

彼は興味津々で話を聞いてくれたし、彼の視点から思ったことも素直に教えてくれた。

さて、そうなったらとことん付き合ってもらおうじゃないか。

葵ちゃんを助けるために、それに、他の色々な実験についての話もできそうだし




なんだかんだで切り替えの早くて、頭のいい二人。

この二人のコンビが後々どうなってゆくのかはお楽しみです。

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