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729 ライバルの顔ぶれ

 そのあとさらに数回戦って、何とか予選突破を決めた。


 さすが俺の『スサノオ零式』。

 かつて培ったプラモ小僧としての技をすべて注ぎ込んだ甲斐があった。


 もちろん頑張って操縦してくれるベレナにも感謝だ。


 さて、俺のいた予選ブロックはけっこうサクサク進んで、他よりも早く全行程を終了できたらしい。

 他の予選ブロックでは、まだまだ熾烈なバトルが展開されている。


 決勝進出の栄誉を得ようと、腕によりをかけた自作改造『ゴッド・フィギュア』で激突し合う。

 ……青春だなあ。


「せっかくだから決勝でぶつかるであろうライバルの偵察に繰り出すか」

「私はちょっと休憩してきます……!」


 ベレナは予選での気疲れが激しいようで、しばらくそっとしておこう。


 では俺一人でも未来のライバルたちを品定めしに行くか。

 どんな人たちがいるかなっと……。


   *   *   *


 しかし、見学に出かけた瞬間すぐさま不安になってきた。

 自分らの試合でもあのカンブリア大爆発のような様々なハデスさんを見せつけられてきたからな。


 再びあのようなキワモノを発見したらさすがに食傷気味になりはしないだろうか?


 そんなことを考えているうちに視界に入った他予選ブロック。


 そこで戦っていたのは……なんか見覚えがあった。


「エルフ?」


 魔族の催しでエルフが参加しているとは珍しい。


 しかも、あのエルフ個人的な心当たりがある。

 ウチの農場で働いているエルフの一人じゃないか!?


「ポーエルか? キミも出場していたとは!?」


 ウチの農場で働くエルフの一人ポーエル。

 その担当は……たしかガラス細工。


「モノ作りの匠を誇る我々エルフが、このようなイベントがあると知ってスルーできるはずがありませんわ! ご覧ください聖者様! 我々が作成した超ハイレベル『ゴッド・フィギュア』を!」


 そうしてポーエルが示した『ゴッド・フィギュア』は……。

 総ガラス製だった。


 透明!


「これほど透明度を保ったガラスで神像を形作る! そんな技術は我らエルフにしかなしえないと自負します! その素晴らしさは、本大会で広く認知されること間違いありませんわ!」

「うん、たしかに綺麗だ。綺麗だが……!!」


 なんという透明感。

 ガラスの透明さが、フィギュアの曲線によって微妙なる屈曲が起き、その中をすり抜けていく光の調子が幻想的だ。


 その美しさはたしかに大会に出てきたどの『ゴッド・フィギュア』も及ばぬだろう。

 しかし美しさだけでは……。


「試合開始……終了」

「ぎゃあああああああッッ!?」


 俺の危惧した通り、ポーエル自慢のガラス製フィギュアは、対戦相手からの一撃で砕け散ってしまった。

 脆いと評判のガラスだからこういうことになるとは思ったが、案の定だ。


 透明な美しさにおいては間違いなくトップクラスに行くだろうが、今回はあくまで対戦によって優劣を決めるマッチョブルな大会。


 そこにガラス製のフィギュアはあまりに不利すぎる。


「ポーエル……、趣旨を見逃してしまったか」


 しかし対戦相手も迷わず壊しに行ったなー。

 そういうルールとはいえ……非情か。


 ちょっと可哀想になったから破片を集めてすぐ農場にお帰り。

 先生なら時間を戻してガラス像も元通りにしてくれるだろうし。


「グッフォフォフォフォ! エルフどもめ、失敗したようだな!」

「その声は!?」


 ドワーフ族のエドワードさん!?

 やはりドワーフもこの大会に出場していた!?


「世界一の職人ドワーフこそこの大会の出場者に相応しい! にわか仕込みのエルフなどには及びもしない匠の『ゴッド・フィギュア』をお見せするわい」


 まあ、予想はされていたからなあ。

 しかし本当に出場してくるとは。ドワーフの職人芸で生み出されたフィギュアとはいかなるものか?


「見てくだされ! これがドワーフ職人の全力でもって作成された、純金製ヘパイストス像ですじゃ!!」

「うわぁ……!?」


 金きらだぁ……!?


 今回もモチーフは彼らの守護神ヘパイストス。

 ただしドワーフ族が思い描くヘパイストス神はかなりマッシブとなっていて、実物を知る俺としてはかなり違和感なんだが。


 しかしながら、今回披露されたヘパイストス像のヤバさはそれだけではない。


 総純金製。

 目も眩むほど金ぴかに光り、旭日であるかのごとくだ。

 しかも、ただ純金であるだけでなく、各所にダイヤモンドやらルビーやらも散りばめてあって尚更煌びやか。


「どうだ! この大会に数多く出ているフィギュアの中でも、我が制作のヘパイストス像こそがもっとも豪華であると自信が持てるぞ! これを越えるものはきっとないであろうよ!!」


 うん、まあそうだね。

 純金と宝石を塊にしたお値段で言えばきっとダントツであろうよ。


 うん千万円かな?


 しかし何度も言うようにですね。この大会は『ゴッド・フィギュア』を操作することによるバトルで優劣を決めるものでしてね……!


「試合開始!」

「ぐおおおおおおおッ!? 動かぬうううううッ!?」


 そりゃそうなるでしょうよ。

 純金といえばこの世のあらゆる鉱物の中でもかなり重い。一、二を争うぐらいに。


 そんな金をフィギュア化したら重さで動けなくなるに違いない。


『ゴッド・フィギュア』用の小さな魔法石では、さすがに純金を動かせるほどの動力は得られない。

 結果、漬物石然として不動となる他ないのであった。


 それでも対戦相手のフィギュアが『よいしょ、よいしょ』とばかりにクソ重たい純金の塊を押し、場外に落っことしてしまった。


「試合終了ー」

「そんなぁあああああああああッ!?」


 こうしてドワーフ族の威信をかけた純金フィギュアもあえなく脱落したのであった。


「敗因はひとえに趣旨を読み違えたことかな……!?」


 ポーエルもそうだが、見た目の華麗さ、デザインの秀逸さに囚われて『ゴッド・フィギュア・バトル』の競技性を見落としてしまっていた。


 今回は残念な結果になってしまったが、それらのフィギュアの価値が変わるわけでもないので、後々なんか別の機会にその出来栄えを誇ってほしい。


 ……さて。

 このブロックの見学も終わったところで、別のところへ顔を出してみようか。


 他にもめぼしいライバルはいるかな?

 と視線を配ったところで……。


「おや聖者殿」

「魔王さん!?」


 なんと魔王ゼダンさんと出会った。

 偶然の遭遇にしては相手が大物すぎる。


 しかもこんな趣味人の集まりにおいて、こう言っては何だが魔国の主が余りにも場違い。

 仮にも主催者が彼の父親であるとしても。


「我もこの大会に参加しているのだ。今のところ予選も順調に勝ち進んでいる」

「ええぇ!?」


 意外の声を上げてしまった。


 そんな、大魔王と違って真面目一徹の魔王さんが、こんな遊びのイベントに!?


「そう意外そうにしないでくれ……我にも事情があってな……!」


 とバツが悪そうな魔王さん。


「実は……我が息子のゴティアのことなのだが……!」


 あ、はいはい。

 魔王ゼダンさんとその妃アスタレスさんとの間に生まれたご長男ですよね?


 俺の仲間内ではもっとも早く生まれた……。

 五歳? 六歳?

 新生児としてはけっこうなお年となったはずだが、まだまだ可愛い盛りだろう。


「背も伸びて足腰もしっかりしてきたし、言葉も上手に使えるようになって、大分成長してきた。もう次期魔王としての教育も始まり、何事も順調といったところだ」

「それはそれは」


 よいことではないですか。

 俺としても既に父親になったことで魔王さんの浮かれる気持ちが手に取るようにわかる。


「しかし……幸せに思う分心配もあってな」

「はいはい?」

「我が息子ゴティアだが……我が息子ゆえかもしれぬが……少々堅苦しく育ってな。まだまだ小さいというのに笑いもせず、日々勉強にばかり打ち込んでいる」


 そんな感じに?

 俺も自分の家族やら農場のことにかかりきりでゴティアくんとはしばらく会えていなかったが……!?


「真面目なのはいいことだが、しかし何事も過ぎるのはよくない。特にいずれ我があとを継いで魔王となるならば、行き過ぎた真面目さが狭量さに繋がらないかと不安にもなる。そこで少しは遊び心も備えてもらおうと思ってな」


 それで、この大会に?


「子ども一人を出場させるのも寂しかろうと、我も同行したのだ。さすがに父親も参加するとなれば断るわけにもいかぬでな。ゴティアには、もっと年相応に遊んでほしいと思っている。大きな責任を背負っているとしても、子ども時代に少しも遊んだことのない者がロクな大人になるはずもないのでな」


 仰る通り。

 それなら優秀な助っ人がいるじゃない。ゴティアくんの祖父にして、本大会の主催者でもある生粋の遊び人が……。


 そう思ったけど、思った途中で『ダメだな』と思った。

 遊び心を教えてあげるにしても適度というものはやっぱりある。……あの人は見るからに限度をぶっちぎっているからな。

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書籍版19巻、8/25発売予定!

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↑コミカライズ版こちらから読めます!
― 新着の感想 ―
[一言] うん全万円かな? → うん千万円かな?
[気になる点] ゴティア君の上層教育の為にまさかの魔王様登場! これは人魚王も参加してるかもしれないですね。 [一言] まさかゴティア君の為に魔王様迄参戦しているとは思わなかったですね。 どう考えても…
[一言] >遊び心を教えてあげるにしても適度というものはやっぱりある。……あの人は見るからに限度をぶっちぎっているからな。 いや、あんたも限度ぶっちぎる方だからね?
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