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246 饂飩と天麩羅

 うどん食いたくなった。


 そう言えばしばらく食べてないな。

 この冬で鰹節も開発したことだし、もはや材料に不足はないだろう。


 作ってみるか、うどん。


    *    *    *


 まずは麺を打つ。


 小麦粉に塩水を混ぜて、こねるぜ。


「お、ご主人様がまたなんか作ってるぞ?」

「今度はどんな美味しいものができるのかしら?」


 ヴィールとプラティが。

 もはや食い物は完成する前から嗅ぎつけてくるようになってきやがった。


 いや、もう予定調和だからいいけどさ。


「何ができるのか超楽しみね。挽いた小麦に水を混ぜて、こねてるみたい……!?」

「ううむ、これ何か見覚えがあるぞ? 何か……? そうだ……!?」


 俺がうどんをこねている様を見て、ヴィールは何かしら記憶の泥をさらうような難しい表情をした。


「そうだ! 思い出した! これはパンを作るんだな!?」

「パン!?」

「小麦粉をこねて焼いて作るヤツだ! なんだご主人様、何やら新作を創造する雰囲気で、もはやお馴染みパン作りなど大袈裟だなあ!」


 俺そんな雰囲気発していたの!?

 それを敏感に感じ取るコイツらもコイツら!?


「どれ、おれもパン作りなら手伝ってやろう! パン生地をこねるのは楽しいからな!」


 ヴィールも俺に並んで、小麦粉に水を混ぜてこね始めた。


「パンをこねるぞー♪ パンをこねるぞー♪ 小麦粉と水と塩砂糖と種菌混ぜてパン生地を作るぞー♪」


 御機嫌である。


 俺はその隣で、黙々とうどん生地をこねる。


「バターも混ぜて、さらにこねるぞー。ある程度こねたら発酵させるぞー」


 こちらも生地を寝かせ、充分に時間を置いたあとに麺棒で伸ばす。

 切って麺状に。


「発酵が終わったら再びこねて、ちょうどいい形に千切り分けるぞー」


 出来上がった麺を茹で、同時進行でつゆも作っておく。ここで削り節が活躍だ。

 茹で上がったうどんを熱いつゆの中に投入し、刻みネギを散らして……。


「生地をオーブンの中に入れてー、たっぷり焼いてー」


 できた!

「できた!」


「「違うッッ!?」」


 台所に、うどんとパンが二つ並んでいた。

 炭水化物と炭水化物の二重奏。


「ご主人様パン作ってたんじゃないのか!? 想像したのとまったく別のものが出来ているではないか!?」

「別にパン作るとは一言も言ってないけども!? てか途中で別のもの作ってるって気が付かなかったの!?」


 それもアレだが、ヴィールが独力で一からパンを作れるようになってるのが軽く感動ものなんだけど。

 試しに一つ齧ってみる。

 焼きたてだけに美味しい!!


 ……ん? でも何だか塩辛くないか?

 いや感涙の味か。


「ふーん、それより旦那様の新作料理を味わいましょうよ」


 プラティ感動薄い。

 そして断りもなく俺の作ったうどんに手を付ける。


「スープの一種かしら? 器の中がほとんどおつゆで、何だか長い変なものが入ってて……」

「ハシで食うのか? おれこれ使うの苦手なんだけどなー」


 ヴィールも早速うどんに興味を持ってかれた。


 言う割には上手く箸を使い、うどんをちゅるちゅるすすって口に運び……。


「「うめぇーーーーーーーーッ!?」」


 ハイ頂きました。


「何だこの長いアレのシコシコとした歯応え!? パンと同じ材料だから同じようなフワフワかと思ったら全然違うぞ!?」

「スープの方も美味しいわねえ。この味はこないだ作った鰹節? なるほど鰹節あればこそできた料理なのね!」


 二人の反応が好調で嬉しい限りだ。


「俺の作ったパンにうどんつゆ浸して食ってみよう。……美味しい!」

「こらヴィール行儀悪いわよ。……でもたしかに美味しいわね」


 二人が味の探究者と化して色々試している……!?


 俺はそういう食べ方あまり感心しないけど……。

 でも気になるからあとで試してみようかな? 一回だけな?


 さて、では俺はもう一手間……。


 冬の間の漁で獲得したのは何もカツオ(っぽい異世界の魚)だけではない。

 他にもたくさん獲ってきたさ。

 その中でも、エビっぽいものが取れたので、これに衣をまぶして油で揚げて……。


「ほい」


 二人の、まだ食べてる途中のうどんの碗に入れてあげた。

 エビの天ぷらを。


「「はぁえええええーーーーーーーーーーーーッッ!?」」


 二人は本能で歓喜の声を上げた。


「これは凄い!? 凄いものだとわかるわ!! そう例えるならば、単体でも凄い二つのものが、合体して一つのものに! 凄さが二倍どころか三倍に!!」

「このエビを包んでいる衣にうどんのつゆが染み込んで美味しさが相乗する! この衣の黄金色ゴージャス! おれが食するに相応しい!!」


 大喜びだなあー。

 その横で俺は今度はかき揚げを作っていた。


 他にうどんのトッピングって何があったかな?

 肉、たぬき、きつね、わかめ、月見、山菜、ごぼう天……。

 んん~?

 もう出てこない?


 いや待て、もっといっぱいあったはずだ。

 大抵の駅内にある立ち食いそば・うどん店には壁を埋め尽くすようなトッピングメニューの羅列があったはずだ。


 たとえば……。

 コロッケうどん?

 いや、それはあまりに奇手だろう。コロッケの中身がつゆに解け出してドロドロの何かに……。

 あれはあれでいいよね? いやよくない? いいか?


 カレーうどん。

 あれはまた独立した別個の食べ物じゃないか? レパートリーの一種ではなく。

 まあでも我が農場はカレーを作れる準備ができてないし。

 保留で。


 具材で個性を出す縛りに囚われないなら、ざるうどんやぶっかけうどんもある。

 これらは新たに具材を調達しなくてもいいから、すぐさま作れるけど……。


 あっ、いや待て、ざるうどん用のすだれ作んなきゃ!!


 用意するものが色々あって大変だなあ。


 そして禁断の……!


「納豆うどん!!」


 その恐ろしい想像によって物思いから帰ってきた時、台所の状況は一変していた。


「この納豆うどんは、よい仕上がりですね」


 !?

 納豆うどんが現実のものと化している!?

 もちろんその実行者は、納豆天使ホルコスフォン!?

 彼女の手によって水戸のうどん屋みたいなことに!?


「納豆とうどんの取り合わせは、優良なものです。私の納豆レパートリーに加えます」


 いやホルコスフォンだけじゃない、他にも台所は農場の住人で賑やかになっていた。

 オークやゴブリンが、俺の打ったうどんの残りを茹でて、次々碗に入れていく。

 つゆも入れていく。

 俺の手を煩わせずにそこまでやるとは……。


「あ、すみませーん。勝手に作っちゃいましたー」

「我が君もどうです? 美味しいですよー」


 いや、それ俺が拵えたんだけど?

 ヴィールだけじゃなく、皆ももはや俺なしで料理ができるようになっていたとは……!?


「こっちの天ぷらって言うのもやってみようぜー」

「カボチャを揚げよう! それからナス! それにトマトにキュウリもどうだ!?」


 なまじ元を知らないだけにチャレンジへの躊躇がない!?


「そして揚げたらうどんに投入!!」

「素晴らしい! いろんなうどんが味わえるぞ!」

「このサツマイモ天を入れたうどんはなかなかいいぞ!?」

「こっちのゴボウを刻んでかき揚げにしたのを入れたうどんもいい!!」

「バターの天ぷらですー!」

「アイスクリームの天ぷらですーッ!」

「この天ぷらとうどんに合う酒は……ニホンシュか!?」

「うどんに海草入れたらおいしいんじゃね?」

「なら山菜も……!」


 もはや食探求の情念は俺から溢れ出し、農場の皆に伝わっているんだなあ。

 プラティが俺の子どもを産むとわかって時が進んでいく実感を持ったが、それだけじゃない。


 すべてがちょっとずつ成長していたんだ……!

 俺たち皆一人一人!


 そしてその成長は、これからもずっと続いていくぜ。


 そしてホルコスフォン。


「次は納豆を天ぷらに揚げてみましょう」

「やめろ微妙に上手くいきそうなチャレンジ!?」

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― 新着の感想 ―
ヴィールが独力で一からパンを作れるようになってるのが軽く感動ものなんだけど。 全くだw 納豆うどんは、汁無しで納豆とタレ(もしくは生醤油)のみで、あとは薬味をパラリ、くらいで食べたいな。
[一言] ググッタラ納豆の天ぷらほんとにあった
[一言] ググッタラ納豆の天ぷらほんとにあった
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