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1517 ジュニアの冒険:襲撃的再会

 僕ジュニア。

 ついにやってきた、ここが……!


『聖なる白乙女の山』!!


 世界最大にして最高難易度のダンジョンだという!?


 最強竜アレキサンダーさんが主を務めるダンジョンで、ダンジョン等級は規格外の六つ星。

 これは、冒険者ギルドによって格付けされる等級……その最高が五つ星であるのに対して限界突破した格付け。

 世界広しといえども、この掟破りの法外等級を持ったダンジョンは、ここ一ヶ所のみであるらしい。


 それほどに『聖なる白乙女の山』は、他に並び立つもののない最高格の山ダンジョンということなんだろう。


 旅の締めくくりとして挑むに相応しい。

 そう思って山のふもとへと降り立った。


 そこで待っていたのは……。

 何とも賑やかな風景だった。


   *   *   *


「さあ、寄ってらしゃい見てらっしゃい!!」

「『聖なる白乙女の山』名物、聖なる白乙女まんじゅうはいかがかなぁ!?」

「うまい! うますぎる!!」

「宿は決まりましたか!? まだの方は是非とも白雪館へ!!」

「本日のモンスター情報! レアモンスターの出現データあるよー!」


 賑やかぁ……!

 活気があっていいな、どころじゃない!


 ここは『聖なる白乙女の山』の麓。ダンジョンの入り口地点というべき場所だが、その地点が人でもうごった返している。

 人も多いが建物も多い。

 冒険者が準備を整えるための宿屋であったり武器や防具屋であったり。

 しかしそれだけじゃなくてなんか賭場とか射的場とかの遊興施設まであって、それこそまるで一大観光都市であるかのようだ。


 ……なんだ、あの『聖なる白乙女の山・歴史郷土資料館』って?


 僕が想像していた最強ダンジョンの雰囲気じゃないんですけど?


 僕が思い描いていたのはもっと……殺伐と緊張感があって、選ばれし者のみが足を踏み入れられる……なんて場所じゃないんですか。


「『聖なる白乙女の山』見学ツアーはこちらでーす。一合目、二合目のみの見学となりまーす」


 ああ、誰でも踏み込めそうだ。

 お土産屋まで運営されている。『聖なる白乙女の山』タペストリーとかある。


 僕の最終試験場は、ここで間違いないのだろうか?


 と、とにかく実際ダンジョンに踏み込んでみなければわかるまい。


 ダンジョンの入り口はどこだ?


「あの……ダンジョンに入るにはどこから?」

「ハイ兄ちゃんこっちだよ、こっちだよ! カワイイ子が揃ってるよ!」


 そうですか。

 では案内に従って……。


 って違ーう!

 絶対に違う!!


 あれはただの客引きだ。

 恐るべし『聖なる白乙女の山』。入り口前から侵入者を惑わす罠が張ってあるのか。


 これは相当に難解だぞ。

 ヘタに進むと入っちゃいけないお店に踏み込んで持ち金搾り取られる。

 ここからもう既にダンジョンは始まっているのか。


 一体どうすれば、正しい道を進むことができるんだ。

 他のダンジョンにはない独自の障害がある。


 これが世界最難関ダンジョン『聖なる白乙女の山』か!


「ジュニアさん!!」


 おわぁッ!?

 ビックリした、何者だ!?


 新手の客引きか!?

 名前まで呼んで巧妙な!

 僕は正式な許可を得ているお店にしか入らないぞ!


「それなら問題ないですよ! 冒険者ギルドは各国から認可を受けている何処よりも正規な組織ですから!」


 は!?

 冒険者ギルド!?

 誰もが聞いたことのあるその組織の名を出すキミは誰だ!?


 えっと……誰だ?


「酷い! お忘れですか!?」


 記憶にない相手が僕との関連性を強烈に主張してくる。

 怖い。


「サリメルですよ! アナタの専属となったギルド職員の、サリメルです!」


 専属!?

 ギルド職員!?


 う~ん……あッ、思い出した思い出した。

 あれはたしか旅の最初の頃。


 一番目に入った人間国で僕は冒険者の登録をしたんだった。

 その時冒険者ギルドで僕の受付をしたのが……この……サティスファクションさん? だっけ?


「サリメルです! ダメですよ上級冒険者たるものヒトの顔と名前はしっかり覚えておかないと! 冒険者は上に行くほど人脈が大事になるのですから!」


 は、はあ……!?

 いや普段は顔や名前はよく覚えている方なんだがなあ。


 何故かこの……このサンビームさん? のことは情報が頭に入ってこないというか……。

 記憶が拒否するというか……。


「何を言っているんですか!? これから私たちは二人三脚で冒険者の頂に立つのですよ! 互いにパートナーとして尊重し合わないと!」


 これだ。

 この壮絶な押しの強さで苦手意識が抑えられないんだった。


 かつて人間国の王都で冒険者登録をした時、最初は素性を隠していたから対応が物凄くアッサリしていたんだよな。

 それでクエストを一つ二つとクリアしていって、段々目の色が変わっていき、『農場王(聖者)の息子』という出自が割れたらもう狩人の目になった。


 どうも上昇志向が強い彼女は、僕という優良な冒険者にくっついてみずからの地位をも高めようと画策。

 これによって迫りくる、その……ガツガツとした雰囲気が……僕としてはなんとも言えぬと言いますか……。


 ですが、そんなサッキュバスさんが何故ここへ?


「サリメルです! さっきから『さ』しか合ってない!」


 ああ、そうでした……!

 しみません……!


「ここで何をしていたか! もちろん、ジュニアさんをお待ちしていたんですよ!」


 な、なんだってー。


「専属の私に一言もなく王都を去ってしまうんですもの。今すぐ追うべきと考えましたが、所詮一般人の体力では上級冒険者のジュニアさんに追いつくなどできません」


 なので。


「待ちに回ることにしたんです! ジュニアさんがいずれやってくるであろう場所を当たりつけて、必ずやってくると信じて! 苦節の甲斐がありました! ジュニアさんはここに来たんですから!」


 何という執念というか、執着というか。


「ジュニアさんのような上級冒険者のスピリッツを生まれつき持つ人なら必ず、ここへ挑戦しにくると思っていました。この『聖なる白乙女の山』に!」


 行動が読まれているところがまた怖い。

 この人、執念だけじゃなくて頭も回るしカンもいい。


 たしかに僕自身の意志で『聖なる白乙女の山』に向かうと決めたんだから完全に思考が読まれたのも脅威だ。

 いや驚異だ。


「世界各地で経験を積んだあと、満を持して最難関ダンジョン『聖なる白乙女の山』に挑もうというわけですね。その慎重さ、冒険者として高得点です!」


 いや、僕にそんなつもりは……。

 ……いや、そうか。

 この最高難易度ダンジョンに挑もうとしていることに変わりないからな。


「ジュニアさんの冒険心に、この私が寄り添います!『聖なる白乙女の山』攻略に私が専属ギルド職員として、万全のサポートを敷きますのでご安心ください!」


 いや、ちょっと待って。

 さっきからチョイチョイ出てくる語句が気になるんですけれど。


“専属”って何?


「専属は専属ですよ、『専門的に属する』ギルド職員です。私はジュニアさんのサポート業務を専門で行うギルド職員というわけです」


 いや本当に待って!?

 いつの間にそんなのになったんですかサリメルさん!?


 専属契約を結んだ覚えとかまったくないんですが!


「はい、なので私の独断です。ジュニアさんがよろしければ専属契約を結びますが?」


 保留で!!

 開き直りやがった、凄いなこの人!?


 もしかして僕は、だいぶ前から強力な人に目をつけられていたのか?

 これもまた『聖なる白乙女の山』に張り巡らされたトラップ?


 なんて恐ろしいダンジョンなんだ『聖なる白乙女の山』!

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