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1514 ジュニアの冒険:ドリル継承

 僕は見通しが甘かった。


 僕の父さんは、何か困ったことがあったら人を呼んで助けてもらう。

 助け合いこそがこの世の真理。

 人は互いに力を合わせればどんな問題だって、たとえ天災だろうと乗り越えていくことができる。


 そのことを簡単に考えすぎていた。


 父さんは人から助けてもらうけれど、それ以上に人助けしている。

 だからこそ多くの人が恩義を感じ、父さんの要請に応えてくれる。

 恩と縁の循環、そのことを僕は失念していたとレタスレートおねえさんに指摘されて初めて気づいた。


 僕は様々なものを父さんから継承することいなるけれど、恩情と信頼は無条件で継承されるものではない。


 僕自身が懸命に動き回って信頼を築き上げていかねばならないんだ……!


 そういうわけで、せっかく来てもらったレタスレート&ホルコスフォンのWおねえさんだが、これ以上は世話を貰えなさそうだな。


「この西地区のホテル街の再整備! それにお金を出してくだされたら儲けの20%をお渡しするということで!」

「それは儲けが出たらの話でしょう? 実際に一度失敗しているわけだから、二度失敗する確率は高いわよね?」

「同じことをすれば失敗するじゃろう。しかし今の我らにはジュニア殿が出してくれたアイデアがある! それをもってすれば復活は可能! よっておかねちょーだい!!」


 あちらでアゼルさんとレタスレートおねえさんの話が喧々諤々と進んでいる。

 あそこまで行ったら小僧の僕が入り込む余地はない。


 しかし……、それらの話し合いも温泉をどうにかしない限り進むことはない。

 僕の観光地化のアイデア“温泉”を実現しない限り、お客を呼び込む望みは成り立たないのだから。


 ホルコスフォンおねえさんが納豆ダウジングで温泉水脈を見つけてくれるのだから、あとは掘り出すだけなのだが……。

 こうなったら……。


「僕自身の手で掘る!」


 僕としても乗り掛かった舟。

 中途半端に放り出して知らん顔では寝覚めが悪い。


 そこまで無茶ではないはずだ。

『究極の担い手』を使えばただのスコップでも……シャベルでも? 毎秒1メートルは掘れるはず。

 その勢いで冥界に至るまで掘り進めれば……。


「お待ちなさい」


 なんだ!?

 そこにおわすはホルコスフォンおねえさん!?


「一度は突き放しましたが、わたくしもマスターの従として、その息子であるアナタを生来から見守ってきました。情の一片もないというわけではありません」


 よって。……とホルコスフォンおねえさんは言う。


「みずから切り拓く気概を見せてくれたことに免じ、行く道を示してしんぜましょう。ご照覧あれ」


 ホルコスフォンおねえさんは両手を広げると、なにやら集中し始めた。

 ……マナが揺れ動くのを感じる。


 さすが天使のホルコスフォンおねえさん、魔力化せずに直接マナを操作できるのか。


「右手よりドラゴンキラー。左手よりゴッドイーター」


 なな、なんだ?

 ホルコスフォンおねえさんの右手左手から、それぞれなんか光の刃が……!?

 ……光の刃!?

 カッコいい、マジカッコいいッ!?


「天使に備わった、超常神威装備です。近接戦闘の切り札と言ったところですね。……その二つを、合体」


 ホルコスフォンおねえさんが左右の両拳を合わせると、それぞれから伸びた光の刃も合わさって、より強力な……何だコレ?

 光の巨大な杭? みたいなものへと変貌する。


「これこそ天使の突撃貫通形態。これをもって当時のガイザードラゴンをも串刺しにしたと言います」


 そして……。


「大地を貫通し、温泉を掘り当てたのもこの刃によって、です。農場でも、温泉街となった場所でも、この突撃形態で温泉を掘り当てたのです」


 ドラゴン殺しの凄い武器を……いいんですか、温泉掘りに使って?


「問題ありません。むしろ平和利用できてよいことでしょう。さてジュニアくん、わたくしはやり方を示しました。あとは真似するだけです」


 真似かー。

 ……真似……?

 どぅうぇええええええええええええええッッ!?


 ホルコスフォンおねえさん、それってつまり!?

 その天使の必殺技を、僕が見様見真似で再現しろと仰るのかッ!?


 そもそも光の刃なんて出す機能、人間にはないぞ!?


「それはわかりませんよ。ジュニアくんアナタは今、あらゆる点で御父上にはまだまだまったく敵いません」


 ハッキリ言わないで! 事実は時に人を傷つける!


「しかしアナタが生まれ持った能力だけは違います。『究極の担い手』は最初からアナタに備わった、いわば生来の機能。神から与えられしマスターの『至高の担い手』とは、本体への馴染み方が違う。外付けの機能が同期にリソースを使われる分、一体の力には及びません」


 ヘパイストス神みたいなこと言う……!


「実際『究極の担い手』は『至高の担い手』以上の発展性を見せると、わたくしや奥方様は予想しておりました。アナタ自身もみずからを矢面に晒す旅の中で実感したのではありませんか?」


 うう……!

 たしかにこの旅を通じて『究極の担い手』の使い方は劇的に広がった。それは経験を積んで発想が豊かになったからと思っていたが、それだけが理由じゃなかった?


「……よし」


 こうなったら可能性に挑戦してみよう。

 挑戦するだけならタダだし。


 両手に意識を集中して……、マナの流れを特に意識するんだ。


 ヴン。


 ……ぶん? なんだ今の音は?

 うわぁあああああああッ!? 光の刃、出た!?

 僕の手から光り輝く何かがぁあああああああッ!?


「感動している場合ではありませんよ! プロセスは完了していません! 次は、左右の光剣を合わせて一つの巨大な大光剣を作り出すのです!」


 そんなサクサクやれって感じで言われても!


 右と左を……相反するモノ同士を……!

 合わせる!!


 うおぉおおおおおッ!?

 物凄い反発だッ!? でもそのお陰で反発力が生まれて、異なる光の刃が螺旋状に回転する!?


「そうです、これが……これがドリルです!」


 ドリル!?

 なんだか心が高鳴る響きだ!


 しかもこれなら、どんな障害が立ち塞がろうと容易に貫通して進める!

 よし行くぞ!

 目指すは地中、熱い血潮に到達するまで!


「行くのですジュニアくん! 今こそドリラーとしての第一歩を刻むのです!」


 僕はッ! 会得したドリルを前方に出して、まるで水中に飛び込むように地面に突入した!

 うおぉおおおおおおおおおッ!?

 凄い、ドリルがやすやすと地面を掻き分けて僕をより土中深くへといざなう!


 おおおおおおおおおッッ!!

 地面を削り、脇目もふらず一心不乱に進め!

 迷わず行けよ、行けばわかるさ!

 行くぞーッ!


 三!

 二!

 一!

 うごりゃあああああああッッ!


 ぎゃあああああああッ!?

 アッツ!? 熱い熱い熱いッ!?

 地の底から噴き出す熱い湯に当たったッ!?


 地中を掘って温泉に当たったぁあああああッッ!?


「アナタの……と言うよりジュニアの出した案はたしかに魅力的ね。それなら、再整備にこちらの案を取り入れてくれるなら出資は前向きに……、どえぇえええええええええッ!?」

「スポンサーの意見を採用するのはいいが、ホテルを豆で埋め尽くせ……とかいうんじゃないだろうの? って、うほぉおおおおおおおおおッ!?」


 ぎゃあああああああああっす!?

 あっち、あっち、アチチチチチチチチチチッ!?

 燃えてるんだろうか!?


 一瞬前後不覚であったものの、気を取り直すと僕は既に地上に戻っていて、しかも目の前には凄まじい水柱が立っていた。

 ズドドドドドド……!

 と大きな音を立てながら。

 しかもやたら濃厚な蒸気をもうもうと立ち上げて。


「うっわぁ!? 温泉が噴き出てるぅううううッ!?」

「我々が話し合っとる間に何があったんじゃぁああああッ!?」


 レタスレートおねえさんとアゼルさんが揃って驚愕していた。


 そうか、これが温泉。

 お湯だから蒸気も物凄いんだ。


 しかしいくら何でももうもうとしすぎてない?


「摂氏90度と言ったところですね。源泉ですから温度も地熱次第です:


 きゅうじゅうどッ!?

 そんなものまともに浴びたのか僕はッ!?

 それでよく生きていられたな僕ッ!?


「アナタも段々と人間離れしてきましたね。さすがマスターのご子息」


 それでいいのかッ!?

 温泉を掘り当てることがこれほど大変なことだったとはッ!

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― 新着の感想 ―
 ドラゴン対策より頭のおかしい天使と人間への対策をするべきだったのでは?まあイタチごっこだけど。
穴を掘るなら天をつく!墓穴掘っても掘り抜けて、突き抜けたなら俺の勝ち!!
何故か竜巻を起こしてから使用するのが様式美な気がしてきましたぞ      
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