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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 4

 池の周りは遊歩道になっており、その道に差し掛かったところで海老ヶ池についての説明看板があった。そこには、この池がどうやってできたとか、伝説的な話と共に一周は四キロもあることが書かれていた。

 流石にその文字を見て相澤さんは嫌がっていた。

 

「待って歌恋ちゃん。四キロもあるのに一周も歩いたら私死んじゃうよ?」

 

「大丈夫ですよ。もし死んでしまったら、遺骨は海にばら撒きますので」

 

「冗談じゃなくてマジで」

 

「でも、海はこの先にあるのでどちらにしても歩くのには変わりありませんよ?」

 

「ええー。じゃあ海もういい……」

 

「ダメですよ! 海に行かなければ何のために新しい水着を買ったのですか!」

 

「私だけは買わされたにして欲しいかな」

 

 ふと岡澤君に視線を向けるとニヤけながらガッツポーズをしていた。

 気持ちはわかるが、その感情を表に出しても碌なことがないから僕は我慢。

 

「では海老ヶ池一周は諦めて、直で海に行きますか?」

 

 男子三人、それと相澤さんが賛成し海老ヶ池の遊歩道は回らず、直で海に行くことになった。が、その海もまあまあ遠かった。海老ヶ池を横目に如月さんの言う海への一番の近道を進むが、見えて来たのは住宅街で海は見えなかった。その住宅街を超えると今度は林が見えた。その林を抜けると、ようやく今度は本物の海が現れた。

 

「海にやって来ましたよ! 早速ですが何をして遊びましょうか?」

 

 如月さんは一人テンションが高かった。山河内さんも堺さんも平然としていたが、他のメンバーはへとへとで遊ぶなんて言葉が頭に浮かばないくらいに疲れ切っていた。

 

「如月さん……それよりも休ませて……」

 

「男子ですのにだらしないですね。このくらい簡単に歩けるようになってもらわないと困りますよ」

 

「『簡単に歩ける』って、僕らに登山でもさせるつもり?」

 

「ええ、将来的には」

 

 如月さんは鬼だ。間違いなく鬼だ。

 第一、僕らに登山なんかさせて何がしたいのだ。今体力をつけたところで将来的に体力仕事をするかなんてわからないし、動くよりもスマホを使ってゴロゴロしている方が現代的に合っていると思う。

 単に運動をしたくないだけの言い訳だがこんなにもすらすらと出てくるとは自分でも思っていなかった。

 

「歌恋? ここの海岸も牟呂戸亜難海岸国定公園に指定されているんだよね?」

 

 こんな時でも山河内さんは真面目だ。

 ここの海岸を含めてこの県に国定公園があったなんて十数年生きてきて初めて知った。

 

「そうですよ。この辺は断崖と岩石じゃなかったですか?」

 

「うーん……見えないね……」

 

「そうですね。一面青々とした海しか見えませんね」

 

「断崖となれば南粟サンラインじゃないと見えなかったかな?」

 

「そうですね。あそこでしたらどちらも見えていましたね」

 

「まあ、車なかったら行けないもんね。今回は仕方ないよ。それにしても岩石ないな。これじゃあただ海に来ただけみたい」

 

「それでもいいんじゃないですか? 旅行も研究も楽しめたもん勝ちですよ」

 

「そうだね。じゃあ精一杯遊ばなくちゃ」

 

 なぜだか妙に嫌な予感がした僕は、立ちあがろうとしていたのをやめて、相澤さんのように張り付いたように地面に座った。

 

「そうなると思って、ビーチボールを持って来ましたよ。これでビーチバレー対決なんてどうですか?」

 

「いいね! よし決まり!」

 

「ペアは、前回行った合同親睦会の肝試しのメンバーってことでいいですか?」

 

「今から決めるのも面倒だしそれでいいよ」

 

 と言うことで反対意見を全く聞かない如月さんと山河内さんにより、ビーチバレー対決が行われることになった。


「それでは第一試合、相澤・岡澤ペア対堺・中村ペア。試合開始!」

 

 如月さんは自ら参加することはせず、審判としてこのビーチバレー対決を見守っていた。いや、監視していたと言う方が正しい。

 

「何やっているのですか! もっとちゃんと取りに行ってください!」

 

 なれない長距離移動でへろへろの相澤さん、始まる前は「よっしゃ、やったるで!」と意気込んでいたけど水着姿の堺さんを見られなくて意気消沈している岡澤君、どちらも割と真剣にしているのに如月さんは手厳しいものだ。

 まあ、岡澤君の気持ちは分からんでもない。僕も如月さんが変に期待させるようなことを言うから、勝手に興奮していたが女子は誰もビキニを見せることなく、上には薄手のカーディガンを羽織って、下には短パンを履いていた。カーディガンももっと薄手の物でも良かったのに、上のカーディガンを脱いでくれない限り、水着はどう頑張っても見えるものではなかった。

 と言うか、下ぐらいは良かったのではないか。確かに短パンでも萌えるが、水着には敵わない。あの太もも裏のラインをじっくりと観察できる水着には……。

 話しが逸れてしまって申し訳ない。このことから分かったことは一つ。高校生で女子と海に行けても水着は必ず見えるものではないと言うことだ。ああ言うのは所詮物語の中だけらしい。現実はこうなのだ。まあ、そうホイホイとラブコメのように話は進まないよね。分かっていたけど、分かっていたけど、見たかった……。

 

「試合終了! 四対十五で堺・中村ペアの勝ち!」

 

 僕が変な妄想をしているうちにどうやら第一試合は終わってしまったようだ。

 

「次! 第二試合、相澤・岡澤ペア対山河内・中田ペア」

 

「はい!」

 

 山河内さんはやる気満々だった。

 

「第二試合、相澤・岡澤ペア対山河内・中田ペア試合開始!」

 

 威勢よく、耳に残る大音量で如月さんは笛を吹いた。

 僕らは事前に少し話し合ったが、これという作戦はない。一応僕が右で、山河内さんが左を守備する。たったのこれだけだ。超素人的な意見だけど、相手も素人。通用しなくても、ポジションを変えるくらいしか手はない。負けたら負けたで僕はそれでいい。

 初めのサーブは相手の相澤さんから。

 

「じゃあ、いっくよー」

 

 相澤さんのボールは左を守る山河内さんの方へ飛んで、山河内さんの華麗なサーブレシーブで、ボールはネット中央から約二十センチくらいの僕の真上に飛んできていた。僕はセッターだ。山河内さんが華麗にアタックを決められるように、山河内さんの歩幅に合わせて早めにトスをした。

 所謂、クイックトスと言うものだ。僕の速度でそれに当てはまるかは分からないけど、要はそんな感じのトスを上げた。

 タイミングはバッチリだった。岡澤君のブロックは遅れて、相澤さんの左足元にボールは落ちた。殆ど山河内さんの手柄だけど、先制点は僕らが挙げた。

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