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フェイタリズム  作者: 倉木元貴


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合同合宿会 2

 家で待っててもよかったが、如月さんのことで落ち着きをなくして、汽車が着く三十分も前に家を出た。駅にいくのには元々そんなに時間はかからないから、二十分以上も前に駅に着いてしまった。

 さすが田舎の朝だけあって人は少なく、ベンチも余裕で空いていた。僕はその一つに座って、イヤホンを使い音楽を聴きながら時間を潰した。

 それと同時に僕はどう如月さんに謝るべきか考えていた。ああ、家を出たばかりの時は、謝るべきなのか、それとも謝らなくてもいいのかで考えていたが、刻一刻と時間が過ぎるにつれて謝罪をすることは確定した。

 だから問題はどう謝るかに焦点が合わされていた。

 普通の謝罪で果たして如月さんは許してくれるのだろうか。何か折り菓子でも持って行こうかも考えたが、家にいいものはなくこんな時間に空いている店はコンビニしかなくそれは諦めた。あと、僕が突然如月さんに何かを貢いでいるのを見たらみんなびっくりすると思うしそれはやめた。

 一応謝罪の言葉みたいなのも調べてみたが「この度は本当に申し訳ありませんでした」なんて汽車で僕が頭を下げていると、周りから白い目で見られるのは確定だ。この歳でまだ変人にはなりたくない。いや幾つになっても変人にはなりたくないが。

 とにかく、どう謝るべきかを考えなければ……

 変に考え事をしているうちに汽車はやって来た。

 この先には怒っている如月さんがいると考えると、足を動かしたくなかった。だがそれはもっとできない行為だ。

 僕は諦めて二両編成の汽車の前方に乗り込んだ。前方を選んだ理由は単に近かったからである。

 前方の車両を見渡してみたが、ここには乗っておらずどうやら後ろの車両みたいだ。

 駅での滞在時間は短く、前方から後方への移動だけで汽車は動き出した。汽車はものすごく揺れる。動き出した汽車が安定するまでは吊り革に掴まってその場をやり過ごした。

 すぐ近くの踏切を越えると、しばらく直線を進み汽車の揺れはマシになり、歩いても転ばない程度にはなった。

 汽車の連結部分、二輌目への扉のところで僕は一旦立ち止まった。その理由は、この扉を開けたくなかったからだ。だが、ずっとここにはいられない。いずれ車掌がやってくる。それまでには覚悟を決めないと。それと次の駅に着くまでには。

 覚悟というか諦めのついた僕は、思い切って二輌目への扉を開けた。

 二輌目に入った僕はすぐにみんなは見つかった。どうやら誰も僕には気づいてない様だ。進行方向は違うけど、前回と同じように運転席のすぐ後ろの位置に座っていた。

 恐る恐る近づきながら、いつバレるのかとヒヤヒヤしていた。だが、近付いても誰も気付かなかった。このまま誰にも気づかれないようにやり過ごしたいが、この汽車に乗っていないのではと論争を立てられたらそれはそれで困る。僕にできることは白状することだけだ。

 一歩また一歩と足を進め、みんなの座っているところまで歩いた。

 手前に男子が座っていたことが何よりも幸いのように感じていた。もし、手前に如月さんなら僕は、先頭車両に戻っていただろうな。

 

「お、おはよう……」

 

 僕はそう言いながら、手前に座っていた中村君の横に腰を下ろした。

 

「おはよう」

 

「あ、大智、おはようさん! 昨日はよう寝れたで?」

 

「ああ、割とぐっすり……」

 

 女子たちにバレないようにこっそり座ったが、岡澤君の声で全員にバレた。

 

「中田君おはよっ! 朝からごめんね。歌恋が勝手に電話かけてしまって」

 

「あ、うん。全然大丈夫だよ……」

 

 本当は全然大丈夫じゃない。今すぐトイレに駆け込みたいくらいだ。

 

「同志よ。おはよう」

 

 相澤さんは相変わらず寝ぼけているようだった。

 

「おはよう。中田君」

 

 堺さんはいつも通り淡白。

 

「おはようございます。中田さん」

 

 如月さんは本当に怒っていないのか、普段と何も変わらない様子だった。が、それの方が余計に怖かった。


 今回も汽車の旅は長く三時間弱もかかる。

 今回は僕だけ途中乗車になっているから三時間弱で済んでいるが、如月さんたちは三時間以上の旅になっている。

 前回の合同親睦会の時は、如月さんからの課題もあり、覚えるのに必死だったが今回は課題は聞いていない。そんな僕はその三時間を音楽を聴いて時間を潰した。ゲームは充電を喰うということが前回でわかったから、今回だけは家にいるうちとログインだけに済ませた。

 如月さんからの課題がなかったからなのだろうか、今回の旅はとてものんびりに感じていた。

 三時間の汽車の旅を終えると、今度は前回同様バスの旅だ。まあ、前回のように長くはなくて、たったの五分。だから乗ったと思えばもう着いた。

 バスは大浜の丘公園前にに着き、僕らはそこでバスを降りた。そこからは徒歩移動。まあ歩くと言っても数百メートルだが。

 キャンプ場の入り口には、鉄でできた門がありそれを潜ると芝生の広場にちらほらとコテージが並んでいた。コテージの向こうには大海原が顔を出しており、青々とした海は一段と綺麗だった。

 如月さんは一人管理棟の中に入って行き、受付を済ませて鍵を持って出てきた。

 如月さんがいれば諸々のことはしてくれるからありがたい。

 

「今回も前回同様にデイキャンプで昼食を食べようと思っていたのですが、私たちが泊まる予定のコテージは、今宿泊者がいないそうで善意で早めに入ってもいいということなので、コテージの中で何か作りましょう」

 

 そういうわけでコテージの中に入って、リビングに荷物を全て置いて昼食の準備をした。

 コテージ内の台所は狭く、女子四人が並べばそれで埋め尽くされていて、男子は完全に蚊帳の外の状態だった。

 

「男子のみなさん。手が空いているのでしたら夜のバーベキュー台の準備をお願いしてもいいですか? 炭の用意はまだで大丈夫ですのでバーベキュー台だけでお願いします」

 

「おお、わかった! 任せとき!」

 

 岡澤君は一人外に出た。僕も手持ち無沙汰だから岡澤君に着いて行った。中村君もそんな僕について来ていた。

 

「組み立て方わかるの?」

 

「おお、めっちゃ簡単やで。よう見ときよ。ここをこうするやろ。ほんでこうして、こうして。ここをこやってするねん。ほんだら、もう炭置くスペースの出来上がりやねん。ほんだら、もう足つけるだけやねん」

 

 口での言い方が気になりすぎて、頭にあんまり入ってこなかった。と言うか、口での説明がはっきり言って下手だ。

 

「意外と簡単にできるんだね」

 

 精一杯のフォロー。

 

「そやねん。また片す時に片し方も言ったんわ」

 

「うん、お願いするよ……」

 

 片付ける時もこんな様子だったら、僕はいつまで経っても頭に入らないと思った。

 バーベキュー台の準備の整った男子は、如月さんに見つからないようコテージの影に隠れて残りの時間をやり過ごした。

 

「あれっ? 男子のみなさんどこ行きました?」

 

 如月さんの声に慌てて、僕たちは近くに落ちている枝を拾い集めた。

 

「あ! こんな所にいたのですか。で、みなさん何しているのですか?」

 

 如月さんは僕らに疑いの目を向けていた。

 

「いやな。時間余ったけん、せっかくやったら焚き火でもできたらな。と思って木の枝集めとったんよ」


「ふーん。ま、確かにいいかもですね。夜に見ると綺麗ですよね」


「そやねん。昼ごはんできるまでに、どないかようけ集めるわ」

 

 

 如月さんの言い方的に岡澤君の言葉を信じているわけじゃなさそうだけど、一応は納得していた。

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