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神の子孫、契約する

 



「なんだこれ?」


 俺の周りを飛び回る色とりどりの光。よく見ると、光は七色あった。赤、青、黄、緑、紫、白、黒だ。光は特に何をするでもなく、ただ俺の周りを飛び回る。何となく意思があるように思うが、光とどうやって意思の疎通をすれば良いのだろう。答えはあっさりと出てきた。


『精霊だね。八雲の神気に惹かれてきたのかな』


「精霊……これが」


 精霊。この世界に存在する自然を司る者たちのことだ。七つの属性に分かれており、火、水、土、風、雷、光、闇の精霊が存在する。この世界は精霊が供給する魔力によって魔法を発動する。魔力というのはあくまで人間が考えた概念で、特に呼び名が決まっているわけではないらしいが、わかりやすいのでわざわざ訂正する必要もないか。

 精霊は自然を司る者。つまり自然そのものと言っても良い。精霊がいなければこの世界は機能しなくなる。自然そのものがなくなるのだからそこに生きている生き物たちが生存出来なくるのは想像に難くない。

 精霊たちは俺から離れ、縁側から庭へでる。そして庭の中央で浮遊したまま動かない。まるで俺を待っているようだ。それは正しかったらしく、日向が俺を促す。


『庭まで来てほしいみたい。行ってあげようよ』


「わかった」


 俺はつっかけを履いて庭へ出る。精霊たちのもとへ行くと、七色の光の玉が輝き出す。そして徐々に人形ひとがたになっていき、庭に七人の男女が現れた。その中の一人(精霊に一人というのが正しいかはわからない)が前に進み出る。白い光の玉から人形になった女性だ。


「異世界の神よ。此度の顕現、我ら精霊王が全ての精霊を代表して感謝申し上げます」


「え?あ、ああどうも……」


 何か凄ぇ畏まられたんだけど……他の精霊たちも俺の前で跪いているし。俺、こういうの経験ないからどうすれば良いのか全然わからん。


「私は光の精霊王と申します」


「火の精霊王です」


「水の精霊王ですわ」


「つ、土の精霊王です」


「風の精霊王でーす!」


「雷の精霊王っす!」


「…………コク」


「彼は私の弟、闇の精霊王です」


 それぞれ自己紹介をしてくれたが、最後の闇の精霊王だけは頷いただけだった。すぐにルナが紹介してくれる。姉弟なのか……光と闇だから?おっと、俺も自己紹介しなきゃな。


「ご丁寧にありがとう。俺は櫛名 八雲。呼び方は任せるから好きに呼んでくれ。こっちは日向だ」


『よろしくね』


「クシナ ヤクモ様……ではヤクモ様と呼ばせていただきます。ヒナタ様もよろしくお願いいたします」


 日向も神獣だから精霊王より格が上なのか。


「うん。それで君らはどうやってここに?一応、この一帯は結界が張られているはずなんだけど」


「我々精霊は自然そのもの。自然全てが我々なのです。なので、最初からここにいたと言えます」


 そうか……自然そのものなら結界を張る前からここにいたというのも納得できる。


「じゃあ何で今まで話しかけてこなかったんだ?」


「申し訳ありません。ヤクモ様の訓練のお邪魔をしてはいけないと思い、お側に控えておりました」


「そうなのか。別に話しかけてくれてよかったんだが……まぁ、その気遣いには感謝する」


「勿体なきお言葉でございます」


「それで、要件は挨拶だけか?」


「いえ、実はヤクモ様にお願いがあって参りました」


 ルナがそう言った瞬間、全員が居住まいを正した。


「どうか、我々がヤクモ様のお側に侍ることをお許しください」


「えっ!?侍るって……マジか」


 侍るってつまり俺に仕えたいってことか?いやいや、いくらなんでも精霊王が誰かに仕えちゃダメでしょう。しかも俺、神とは言っても成り立てで全然偉くないし……。


「神にお仕えするのは我々精霊王にとって大変に名誉なことなのです。ヤクモ様にお仕えし、必ずお役に立ってみせます。どうかお願いします」


 ルナが深々と頭を下げると精霊王たち全員が同じ体勢になる。参ったな……彼女たちは本気だ。俺が困っていると肩に乗っている日向が話しかけてくる。


『いいんじゃない?受け入れてあげなよ八雲』


「そんな簡単に言うなよ……」


『でも、別に八雲の損になるわけじゃないし、むしろ精霊王が側にいてくれれば八雲にとっても有益だと思うよ』


 そりゃあ、なんたって精霊王だからな。魔法のこととか色々教えてもらえるだろうし。俺が悩んでいると精霊王たちが期待の眼差しを向けてくる。日向は早く返事してあげなよと目で訴えてくる。どうやら俺に味方はいないようだ……。


「はぁ……わかった。許可するよ」


 俺がそう言うと精霊王たちから歓声が上がる。そんなに嬉しいのか。日向も当然だと言わんばかりにうんうんと頷いている。きっとゲームだったら今、俺の前には「精霊王たちが仲間になった!」って文字が出ているんだろうな。まぁ、この際、新しい仲間を歓迎しよう。


「ってことでこれからよろしくな皆」


「はい。全身全霊、ヤクモ様にお仕えいたします!」


 光の精霊王が少し興奮気味に言う。他の精霊王たちも同じような感じだ。


「ではヤクモ様、我々と契約の儀を」


「契約の儀?なにそれ?」


「我々精霊はお仕えするときに契約を結ぶのです。それにより真にヤクモ様にお仕えすることができるようになります」


 俺的にはそこまでしなくてもとは思うが、本人たちがそれを望むならそれに応よう。


「わかった。俺は何すれば良い?」


「では我々の手を握っていただけますか。ヤクモ様のお力を少しいただいて契約の証といたします」


「わかった。手を握れば良いんだな」


 一人ずつ手を握って行く。何故か水の精霊王には抱きつかれたが……。全員の手を握り終わると精霊王たちの体が光りだす。何か俺の周り光ってばっかだな……。光が収まると特に変わりなく精霊王たちがそこにいた……いや、何か全体的に成長しているような気がする。着ていた服も何となく豪華になっている気がするし。間違いなく契約の儀の影響だよな……。


「ありがとうございます。マスター。マスターのお力で我々は神霊へと至ることが出来ました!」


 先程よりも神々しさを増した光の精霊王がそう言ってくる。何だよ神霊って……絶対俺の神気が関わってんじゃん。もう気にしたら負けか……はぁ。あとさり気なく俺の呼び方がマスターになってるし。


「えっと、おめでとう」


「ありがとうございます。マスター」


「ありがとうございます。誠心誠意お仕えします」


「ああヤクモ様。このご恩に報いるためにはどうすれば……そうですわ!ヤクモ様の子をっ!」


「あ、ありがとうございますヤクモ様」


「ありがとうございまーす!」


「ありがとうございますっす!」


「………ペコリ」


 それぞれ俺に感謝してくる。ちなみに名前をつけてほしいということだったので、ルナ(光)、イグニス(火)、アクア(水)、テラ(土)、シルフ(風)、ヴォルト(雷)、シェイド(闇)だ。最初はラテン語で全員の名前をつけようと思ったけど、そんなに詳しくないので、途中から思いついた名前をつけた。それにしても、本当にシェイドは無口なんだな。とりあえずアクアにはゲンコツをかましておいた。頭を抑えながらも嬉しそうにするアクア。うん。何かキャラの濃いやつだな。


「契約が終わったってことは俺も魔法を使えるようになったのか?」


「魔法……そうですね。精霊の契約者が使うのは厳密に言うと魔法ではないのですが、使えますよ」


 ルナが補足をしてから肯定する。


「ん?魔法じゃないのか?」


「はい。厳密には世界へと供給した力、人間は魔力と呼びますが。それを使って行使するのが魔法と呼ばれるものです。しかし、精霊の契約者が行使するのは精霊が世界に供給した力ではなく、精霊の力そのものです」


「精霊の力そのもの?」


「そうです。魔法によってもたらされる現象は精霊の力を模したものなのです。そのため、本来のものよりも威力や効果が落ちてしまうのです。しかし、精霊の契約者は精霊の力を本来の威力のまま使えるのです」


「つまり、精霊の契約者の方が強い魔法を使えるってことか」


「簡単に言えばそういうことですね。しかし、本来、精霊とは人間には見えませんのでそもそも契約することが困難ですが」


 そりゃそうか。簡単に契約できるなら誰も魔法なんて使わないよな。魔法が普及しているってことは精霊と契約している人はやっぱり少ないんだろう。あれ?待てよ……精霊と契約するのが難しいなら七属性の精霊王と契約した俺って……何かもの凄いズルをしている気になってくるな。本人たちが契約してほしいって家に来たんだけどさ。俺自身が神だっていう時点で反則か……うん。もうこの際開き直ろう。そうしよう。


「なぁ。俺も魔法使ってみたいんだけど」


「では、まずはマスター自身の魔力を感じるところからですね」


 おお。なんか異世界っぽい。魔力か……どうすればいいんだ?地球じゃ魔法なんて存在しなかったし、それこそ魔力なんてわからないぞ。俺が困惑しているのを見たルナがヒントをくれる。


「魔力とは生物の体に存在している魔核まかくにあるエネルギーのことですから体の中の魔核を探してみてください」


 魔核?いやいやルナさん。そんなものあるわけ無いですやん。異世界からきたんでっせ私……。思わず変な言葉遣いになってしまったが、仕方がないと思う。少なくとも魔核なんてある地球人がいたら向こうで大騒ぎになっていると思う。それをルナに伝える。ルナはクスクスと笑う。


「さすがに魔核が存在しない生物がいるわけありませんよ。ちょっと待ってください。私がマスターの魔核を確認しますから…………あれ?そんなはずは…………嘘……」


 ほらね。魔核なんてないでしょう。どんなに俺の体を見ても魔核が見つからないので、ルナの顔にどんどん焦りが見え始める。終いには他の神霊たちを呼んで確認しだした。それでも見つからなくて、神霊たちが気まずそうな顔をする。なんかこっちが申し訳無くなってくる。


「申し訳ありません。マスター。マスターの体には魔核が存在しないようです」


「うん。向こうの世界には魔法どころか精霊もおとぎ話の存在だしね。予想通りだからそんな顔しなくても大丈夫だよ」


「しかし、魔核が存在しないとなるとマスターには我々の力を行使することが出来ません」


 そうか。魔核が存在しないってことは魔力も存在しないわけで、魔法も使えないってことだな。まぁ、ないものは仕方がないし、残念だけどそこまで気にはしてない。そう言っても神霊たちは申し訳なさそうにしている。アクアに至ってはもはや絶望と言っていいような顔をしている。


「八雲様のお役に立てないなんて……これではわたくしの存在意義が。八雲様のお役に立って八雲様の寵愛を受ける計画が……」


 うん。何か言っているけど無視無視。とはいえ、神霊たちの顔を見ていると何とかしてやりたい。でも俺にはどうしようもないしなぁ……ん?待てよ。そもそも俺の体に魔核が存在しないならどうやって神霊たちと契約したんだ?しかも精霊王から神霊に昇華したんだよな。ってことは……


「なぁ。もしかして神気でもいいんじゃないか?」


「「「「「「「っ!!!!!!」」」」」」」


 言われてみればっ!という顔で固まる神霊たち。いや、誰か気づいてよ……。


「盲点でした。確かにマスター自身のお力を持ってすれば、魔力など必要ありません。私としたことが、こんなことに気づかなかったなんて……」


 ルナは一人悔しそうにしているが、他の神霊たちは良かった良かったと喜んでいる。一人だけ変に興奮気味のやつもいるけど。日向は俺の肩の上でやれやれといった顔をしている。なんにせよこれで魔力の問題は解決したわけだ。


「じゃあ、改めて魔法の使い方を教えてくれ」


「はい。と言っても、明確に何をするというわけではなく、マスターのイメージ次第で発動しますよ」


「えっ!?そうなの?何かこう詠唱的なものが必要なんじゃないの?」


「そういうのを必要とする人もいるようですが、本来、魔法は本人のイメージが強く反映されます。なのでイメージさえしっかりしていれば必要ありません。詠唱などはイメージしやすいように補助としての意味しかありません。なので詠唱しようとしなかろうと、魔法の威力は変わりません。契約者の使うものは別ですが」


 そうなのか……。魔法っていうとローブを着て三角帽をかぶった人が長ったらしい詠唱をしているイメージだったけど。現実の魔法は違うんだな。まぁ詠唱する人もいるらしいけど。


「イメージ……イメージ……」


 わかりやすいのは球体のものが相手に飛んでいく感じだよな。火……は危ないから水か?でもなんかアクアがウザそうだからダメだな。風は目視し辛いし……土が妥当か。大きめの石が飛んでいくイメージで手を家の敷地外の木に向ける。神気を石に変えるイメージで……その瞬間手の先から石が飛び出す。いや、正確には隕石かってくらいのバカでかい岩が木を薙ぎ倒しながら進んでいった。いやいやいや。とんでもないものが出たんですけど!?何あれ!?俺がイメージしたのは石だぞ。石。あれはどう見ても岩だろう!!どうなってんだこれ!


「素晴らしい威力ですね」


「凄まじいな……これが主の力の一端か」


「ヤクモ様ならばこれくらい当然ですわ!できれば水を出していただければもっと良かったのですが……」


「す、すごかったね。それに土属性を使ってくれた……。」


「ヤクモすごーい!!」


「すごいっす!!」


「…………!!」


 何か神霊たちは普通に受け入れてるんだけど……え、何?俺がおかしいの?だって岩が出たんだよ?驚くでしょ?驚くよね?神気を使ったからか?普通の魔力だとここまでにはならないんだろうか……とにかく、これはかなり神気を加減しないと魔法を使う度に大変なことになるぞ。これが火や水だったらと考えただけで寒気がした。森が焼け野原になるなんて洒落にならん。ある程度神気を扱えるようになるまで魔法は封印だな……。

 魔法の訓練が中止になったので、俺は縁側に座って神気の訓練をすることにした。日向は俺の直ぐ側で丸くなっている。ルナとアクアも側にいる。ルナはいいけどアクアはもうちょっと離れてほしい。イグニスとテラ、それとシェイドは俺の家を探検中。物珍しいものを見つけてはあーだこーだと話し合っている。火の精霊王ってもっと猛々しいイメージだったけど、イグニスは落ち着いたお兄さんって感じだな。テラとシェイドの兄貴分という感じだ。シルフとヴォルトは庭を飛び回っている。こちらはイメージ通りだな。雷の精霊っていうのはあんまり物語とかには出てこないと思ったけど、ある意味、俺たち地球人には馴染み深い気がするな。二人は最初、イグニスたちと一緒に家を探検していたけど、すぐに外へ出て追いかけっこをし始めた。まぁ、各々楽しそうで何よりだな。

 日が傾くまで神気の訓練をしてから皆で夕飯を食べた。神霊たちは食べれるのか聞くと日向と同じように食べなくても良いが、楽しみの一つであるらしい。ならばと全員分の夕飯を用意した。皆で食べた方が楽しいし、美味しいしな。これから賑やかになりそうだ。



早くもブックマークしてくれている人がいる。ありがたいことです。

そんな皆様に感謝しながら更新がんばります。

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