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神の子孫、街に行く0

お久しぶりです。光回線がイカれまして、やっと治りました。今日からまたよろしくお願いします。

 



 〜八雲side〜



「そしてヤクモに助けられたわけ」


 なるほど。そういう経緯があったわけか。それにしても、デスマンティスなんて見たことないな。この森に住み始めてから三年くらい経つけど。そんなにでっかいカマキリなんかいたらすぐに分かるだろうし。とはいえこの三年でこの森を探索できたのはおおよそ半分くらいだからたまたま出会わなかっただけという可能性もあるけど……まぁ、この森にはでっかいイモムシとかクモとかもいるからカマキリがいても不思議ではないか。え?そんなのいつ会ったって?それはまたの機会にしよう。


「災難だったな」


「あいつらの本性を見抜けなかった私が悪いのよ。臨時でパーティを組むときはもっと注意しなきゃいけなかったのにね」


 まぁそういう輩は総じて善人の顔をして近づいてくるのでなかなか見抜けないし、結果的にそいつらにはきちんと罰が下ったのだから良かったのだろう。


「それで、これからどうするんだ?」


「とりあえず、明日になったら街に戻るわ。組合に今回のことを報告しなくちゃいけないし。あとは依頼の失敗もね」


「さっきのフォレストエイプの死骸を持っていけば依頼の失敗はなくなるんじゃないか?」


 俺としてはどうせ使わないのでアリスに譲ってもいいと思ったのだが、アリスは首を横に振る。


「それはヤクモが倒したものだから。譲ってもらったものを納品するなんて私の冒険者としてのプライドが許さないしね。フォレストエイプの依頼は改めて受けてリベンジするわ」


「……そうか。まぁ、何か手伝えることがあったら言ってくれ」


「ありがとう。その時はお願いね。そういえば、ヤクモはこの森から出る気はないの?」


「ん?そうだな……」


 確かに特に今の生活に不満もなかったからずっと住んでいたけど、街に行ってみるのも悪くはないかな。


「一度、街に行ってみるのも良いかもしれないな」


「だったら私と一緒に行かない?私が依頼を受けたミルナードの街なら案内もしてあげられるし」


「そういうことならお願いしようかな」


「ええ。任せて」


 明日の方針が決まったので、アリスには夕飯を食べたあと風呂に入ってゆっくりと休んでもらうことにした。今日の夕飯はハンバーグだったんだけど、アリスは食べたことのないものだったらしく、その味に驚いていた。そして俺の家に風呂があるのも驚いていた。この世界には公衆浴場のようなものはあっても個人の家に風呂があるのは貴族くらいらしい。日本人としては当たり前なのだが……。街に行ったときも気をつけないとな。前の世界の常識で行動すると悪目立ちする

 かもしれない。

 アリスを客間に案内したあと、俺は神霊たちをリビングに集めた。自然と精霊たちも何事かと集まってくる。日向は俺の膝の上。俺が神霊たちを集めたのは俺の留守中についてだ。


「そばで聞いていたと思うけど、俺は明日からアリスと街に行くことにした。俺が留守の間、家のことを任せたい」


「確かに、結界があるとは言っても安心はできませんからね」


「私はヤクモ様と一緒に行きます!あの小娘と二人きりになんてさせられません!!」


「僕も行きたいな〜。街ってなんか楽しそう!」


「行きたいっす!」


「ぼ、ぼくもちょっと興味あるかな……」


「うむ。主が行くのならば俺も行こう」


「…………コク」


 神霊たちは皆一緒に行きたがる。それに触発されて精霊たちも行きたいと言い出す。全員行ったら意味ないだろうに……。霊獣たちの世話だってあるのに、全員を連れて行くことなど到底できない。それにいかに人の目に見えないとはいえ絶対ではないかもしれないし、こんな大所帯でいくのは俺的にも遠慮したい。


「流石に全員で行くのは無理だ」


「でしたら私は残りましょう」


 ルナが一番に街に行くのを辞退した。確かにルナが留守番をしてくれれば安心できるが……。


「本当にいいのか?」


「はい。確かに今の人間たちの生活に興味はありますが、絶対に行きたいという程でもないので。私はここでマスターのお帰りをお待ちしております」


「助かる。頼むよ」


「お任せを」


 ルナがそう言ってくれたのだが、流石にルナだけに任せるのも悪いので、あと何人かは残ってもらわないと。一番手っ取り早いのは……。


「じゃんけんかな……」


 俺がなんの気無しにそう呟くと、皆の目の色が変わった。そして視線でお互いを牽制し始める。なんだろう。なんか雰囲気が変わったぞ。


「ふふふ。じゃんけんで決着とは……皆様、負ける前に辞退した方が良いのではなくて?」


「フッ……じゃんけんと聞いては引くわけにはいかんな。この勝負、俺がもらう」


「ぼ、ぼくも頑張るよ」


「じゃんけんなら負けないよ〜」


「負けないっす!」


「…………コク」


 神霊たちの間で火花が散っているような気がするのは気のせいか……えっ、じゃんけんだよな?何でこいつらこんなに熱くなってるの?ふと見ると、神霊たちだけではなく精霊たちも同じように睨み合っている。普段はあんなに仲良しの精霊たちまで……そんなにじゃんけんにこだわりがあったのか?


「もともと精霊たちの間では傷つかずに勝敗を決めることがなかったので、こうして誰も傷つかずに勝敗を決められるじゃんけんに皆懸けているのです」


「それまではどうしていたんだ?」


「お互いの存在を懸けて戦っていました。まぁ、そこまでになるのは本当に譲れないときだけでしたが……」


 物騒すぎるだろ……。まぁ、彼らがじゃんけんに懸ける想いはわかった。わかんないけど、わかった。

 そしていつの間にか、壁に【第一回じゃんけん大会 〜街に行く権利争奪戦〜】という紙が貼られていた。予選リーグまである。どんだけ気合入れてんだお前ら……神霊・精霊関係なく10グループに分かれてじゃんけんをするらしい。ちなみにグループは公平を期すためくじ引きで決めたそうだ。いや、そのくじ引きで決めりゃいいじゃん……。

 進行役の風の中位精霊が敬々しく一礼し、選手紹介を始める。いるかそれ?今のふすまが開いた瞬間、したから格闘技の入場シーンのように煙が吹き出す。風と水の精霊の共同作業だ。そこにこだわるのか。

 最初に入場してきたのはアクア。優雅に一礼して居間に入ってくる。俺の横を通る際にウインクしていった。続いて、居間に入ってきたのはシェイド。くじ引きだから神霊たちが同じグループになることもあるのか。まぁ、じゃんけんなので精霊だろうが神霊だろうが関係ないんだけど……。

 その後は精霊たちの入場。両腕を突き上げる火精霊やアクアを真似してかお辞儀をする水精霊、俺とルナ、そしていつの間にか庭にいた霊獣たちに笑顔で手を振る風精霊など、様々だ。全員の入場が終わると、進行役の風精霊が選手のボディーチェックをする。それが終わると静寂が辺りを包み込む。選手たちが醸し出す雰囲気に思わず息を飲む。進行役の合図で選手たちが一斉に手を出す。


「いやぁぁぁぁぁぁああああ!!」


 勝負は一瞬だった。グーを出した者とチョキを出した者。ただそれだけのことであっけなく勝負は着いた。じゃんけんだから当たり前だけど。勝負が着いた瞬間、チョキを出したアクアは悲鳴を上げながら膝から崩れ落ちた。始める前はあんなに自信満々だったのにあっさり負けたな。他の負けた精霊たちも悔しそうに地面を叩く者、現実を受け入れられず呆然とする者、お互いを慰め合う者と様々だ。反対に勝った精霊たちはお互いに抱き合って勝利を称え合っている。シェイドはいつもの無表情だが、どことなく嬉しそうだ。


「あ、ありえませんわ……この私が負けるなど。納得できません!再戦を要求しますわ!!」


 負けたショックから立ち直ったアクアが進行役の風精霊に言うが、進行役は厳格な顔(本人はそのつもりだが、なんだか可愛らしい表情)で首を左右に振る。まぁ、そりゃそうだろうな。いっそ清々しい負けっぷりだったし。何度も食い下がるアクアに進行役はポケットから赤いカードを出してアクアに突きつけた。アクアは驚いたあと何か言おうとしていたが精霊たちに連れて行かれて居間を退場した。レッドカードまで作ってるとかどんだけ本格的なんだ……いやじゃんけんにレッドカードなんてなかったよな。段々と俺もこの雰囲気に毒されてきたようだ。



 予選第二試合はテラが勝ち残った。ここはアクアたちのグループと違い、普通にじゃんけんしていた。うん、これがじゃんけんだよな。勝ち残れたテラは嬉しそうにはにかんでいた。



 予選第三試合はイグニスがいた。まるでこれから戦場に向かう武士のような雰囲気を醸し出している。ボディーチェック後、イグニスは精霊たちを前にしてこう宣言した。


「フッ……ここまでよくぞ辿り着いた。もうお前たちに教えることは何もない。ここから先は男と男の戦いだ。お前たちの全てを懸けて見事俺を打ち倒して見せるが良い!!」


 なんかお前だけ競技間違ってないか?じゃんけんだぞこれ。そしてそんなイグニスの言葉に奮起する火精霊を始めとした男の精霊たち。一方、女子たちは冷めた目でそんな彼らを見つめていた。そりゃそうだ。男と男の戦いとか言われても彼女たちは女なのだから。そんな相反する空気の中始まった試合は……。


「フッ……成長したものだ。認めようお前たちを。再び相まみえるのを楽しみにしているぞ」


 そう言って居間を出ていくイグニス。それに感動する男子たち。師匠に認められた弟子というところなのだろう。相変わらず女子たちはそんな彼らを冷めた目で見ていた。そりゃそうだ。

 そもそもイグニス……お前、負けてんじゃん。カッコつけて出ていったけど、負けてんじゃん。しかも一発目で一人だけ負けてあとは見てただけじゃん。傍から見てるとめっちゃイタい奴じゃんお前……。



 予選第四試合はシルフとヴォルトの仲良しコンビだ。ここはかなり白熱していた。何度もアイコが続いたのだ。その数なんと十回。そしてそんな回数を堪え性のないあの二人が我慢できるはずもなく、風と雷を出して戦いを始めようとしたので、俺とルナで二人の首根っこを掴んで退場させた。当然、二人は失格である。進行役の風精霊はしっかりとレッドカードを出していた。しっかりと自分の仕事をするタイプらしい。



 これで神霊たちの参加するグループは終わったのであとは精霊たちだけのグループだ。ちっちゃい精霊たちがじゃんけんをする姿はなんとも愛らしく、俺を和ませた。本人たちは至って真剣なのだが、そんなふうには見えない。

 そして予選を勝ち抜いたシェイドとテラ、精霊たちは決勝トーナメントを始めた。それぞれ一対一の真剣勝負。勝敗に一喜一憂しながら試合は進む。俺もそろそろ寝たいが、せっかくここまで付き合ったのだから最後まで見届けよう。それが例えじゃんけんだったとしても。




 結果的に優勝したのはシェイドだった。テラは残念ながらベスト8。二位は男の子の風の下位精霊、三位は女の子の水の中位精霊だった。俺は進行役の風精霊から受け取ったメダルをそれぞれの首にかけていく。メダルまで用意しているとは……そして何故かプレゼンターにされる俺。まぁ、受け取ったときにとても嬉しそうにする彼らを見て悪い気もしないのでいいか。

 俺についてくるのはシェイド、テラ、二位だった風精霊と三位だった水精霊に火の下位精霊(女)、雷の中位精霊(男)、光の中位精霊(男)、闇の下位精霊(女)のベスト8のメンバーとなった。彼らは言わば代表選手たち。仲間の精霊たちから祝福され嬉しそうにする精霊たち。神霊や中位精霊を差し置いて自分たちが選ばれたことに恐縮する下位精霊たちだが、彼ら自身が掴み取ったものなので遠慮はいらないと俺が言うと、しっかりと頷き、胸を張っていた。

 こうして【第一回じゃんけん大会〜街に行く権利争奪戦〜】は幕を閉じた。賑やかな雰囲気を背に俺は自分の部屋へと戻った。


『これ、じゃんけんだよね?』


 日向の言葉は聞かなかったことにした。





大変な時期ですが、身体に気をつけて乗り切りましょう。

私も更新がんばります。

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