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【第16話:魔法】

 僕たちはフォレンティーヌさんの提案を受け、修練場に移動する事になりました。

 ワグナー校長に使用許可を取って貰った個別指導用の少し小さめの修練場です。


「ねぇねぇダイン? 楽しみだね!」


 僕も自分のギフトがわかるとあって、少し浮ついた気持ちになっていたんですが、セリアが僕以上にはしゃいでくれているおかげで、少し落ち着けました。


「そうだね。何か有用なものだったら良いんだけどな」


 そんな会話をしていると、


「セリア、ダイン。この建物は個別指導受けてる他の訓練生が沢山いるから、あまりはしゃがないようにね」


「はーい! わかってまーす!」


 うん。絶対わかってないよね。

 でも、ここで注意すると余計にうるさくなりそうなので、ここはスルーしておきましょう。


 ちなみに、守護者養成学校には学年と言うものがありません。

 それぞれ12歳の誕生日を迎えたら、もしくはそれ以上の年齢の人なら通いたいと思ったその日でも、適性検査さえ通ればいつでも通い始める事ができるからです。


 しかも……無料なんです!!


 これらの事は、守護者がいつも人手不足なため、少しでも早く、少しでも多くの人に守護者になって貰いたいという理由と、個々のギフトの能力に差があり過ぎて、学年という一括りで指導する事が難しいからだという話を聞きました。

 そのため、座学と基礎戦闘訓練などの共通の指導項目以外は、個別で担当教官がついて指導してくれます。

 僕たちが向かっている小さな修練場も、そういう状況にあわせて沢山の修練場が用意されており、今も見知らぬ訓練生が何かの訓練をしているのが遠目に見る事ができました。


 もちろんずっと孤独に訓練するという訳ではなく、ある程度訓練が進むと、その時点で同時期に入った人たちと模擬戦をしたり、チームを組んで防衛戦について学んだりもするそうですが。


 ~


 10分ほど歩くと目的の修練場に着きました。

 約一名、少し騒がしいままでしたが、迷惑をかけるほどではなかっったので良しとしましょう。


 ローズが鍵を開けて修練場に入っていったので、皆で後に続きます。


 修練場は思っていたよりも広く、半径30mほどはあるでしょうか。

 多目的部屋といった感じの殺風景な部屋ですね。


「この部屋で間違いないですね。校長、フォレンティーヌさん。私はちょっと訓練用の保護結界を起動してきますので、あちらのベンチに座ってお待ちください」


「じゃぁその間に、儂がこの修練場の簡単な説明でもしておいてやろうかの」


 ローズは部屋の隅にある何かの制御盤に向かい、校長が僕とセリアを呼んでこの修練場の簡単な説明をしてくれました。


 校長の話によると、この殺風景な見た目の修練場は、その見た目とは違い、床や壁、天井は、魔導学の粋を集めて作られているそうです。

 壁や床には衝撃吸収の効果が付与され、さらにはこの修練場内にいる者すべてに、斬撃、衝撃緩和、熱、冷気、雷耐性の効果を付与してくれ、他にもいくつもの安全策が取られているのだとか。


 ただ、治癒の効果はないので、怪我には気をつける必要があるそうです。


 これは現状治癒魔法はこの世界には存在せず、「癒し手」にしか怪我や病気が治せないので仕方ないですね。

 図書館で前に読んだ本にも、治癒魔法は魔導学悲願の夢だと書かれていたのを思い出します。


 他にも支給されている訓練用の剣や魔銃などは、この修練場の設備を前提にして作られているとか、一通りの説明がちょうど終わったところで、ローズが戻ってきました。


 訓練用の保護結界とやらの起動が終わったようですね。

 うっすらと部屋全体から魔力を発しているのがわかります。


「校長、保護結界の起動が終わりました」


「うむ。ご苦労じゃったな。それじゃぁフォレンティーヌよ。よろしく頼む」


「わかったわ。じゃぁダイン、ちょっと付いて来て」


 フォレンティーヌさんがそう言って修練場の中央に向かって歩き始めたので、僕も慌てて後に続きます。

 他のみんなは、ローズに促されて壁際まで移動しています。そこで見学するようですね。


「来たわね。ん~まずは何から始めようかな」


「えっと、これから何をするんですか?」


 まだ僕のギフトを教えてくれると言う話を聞いただけで、これから何をするのかを何も聞いていません。


「そうね。まずは私が魔法や()()を使うから、それを見て貰おうかしら」


 そう言うと僕に背を向け、両手を前に突き出して魔法の詠唱を始めます。


『今ここに願う。世界を支配する仮初(かりそめ)(ことわり)よ。その在り方に異を唱え、我が魔力を糧に世界に変革を!』


 詠唱が進むにつれてフォレンティーヌさんの足元に魔法陣が展開されていきます。


 そして……。


『喰らいつけ! 【氷の牙(アイスファング)】!』


 魔法名に合わせて出現したのは4本の鋭い氷の牙。

 数メートル先の地面から、何もない空間を喰いちぎるように。


「す、凄い!? フォレンティーヌさんって魔法も使いこなせるんだ!」


 そして僕よりも興奮している様子のセリア。


「セリアじゃないけど、凄いですね。初めて攻撃魔法を間近で見ました」


「そう? その割にはあまり驚いているようにも見えないけど?」


「え? いや、すみません。フォレンティーヌさんが凄い人だと最初から聞いていたので」


「ふふふ。別に謝らなくてもいいわよ。実際に魔法だけなら私より凄い人なんていくらでもいるもの」


 そうなんでしょうか。

 本で読んだ限りでは、かなり高位の魔法だったと思うんですが……。


「それに、魔法は色々な事ができる代わりに、対魔物という観点ではそこまで強くないわ。接近戦に弱いし、魔力が切れれば使えなくなるし、すぐに発動できないし……それこそ剣や魔銃、戦闘用ゴーレムの方が役に立つわ」


 確かに魔鋼を使って作られた剣は魔力を軽く流し込むだけで、その硬度を大きく上げる事ができるし、魔銃は一発の威力こそ少し劣るけど、魔法の半分以下の魔力で詠唱なしで撃つことができます。


 そして、戦闘用のゴーレムは都市防衛の要です。

 この街の守り神とも言われ、この城砦都市国家の名前を冠する大型戦闘用ゴーレム『シグルス』などは、魔物の中でも最上位の存在と言われているドラゴンとも戦えると言われています。


「それは確かにそうかもしれませんけど、魔法も覚えたいと思っています」


 それでもやっぱり魔法とか憧れるし、いろんな魔法を使えるようになりたいです。


「もちろん魔法はいろいろな場面で役立つので使えるに越したことはないわ。まぁでも、魔法は覚えるのも教えるのも面倒だから、魔法に関してはここの人に習って」


「はぁ……。まぁ、元々養成学校で教えて貰うつもりでしたので、それは別にかまわないですが……」


 本当はフォレンティーヌさんみたいな凄い人に教えて貰えるのかと、少し期待したので残念です。


 と、そう思ったのが顔に出ていたのでしょうか。


「そんな顔しないの。代わりにあなたの力の使い方を教えてあげるんだから」


 こちらを向いて僕にウインクすると、突然目の前に氷の木を出現させたのでした。


「これが私の()()『樹氷』よ」


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