【第15話:13】
「大丈夫な理由……それは、あなたがグリムベル出身だからよ」
グリムベル……フォレンティーヌさんは今たしかにグリムベルと言いました。
あの映像を見た事で思い出した「グリムベル第13孤児院」という言葉。
おそらく僕がその孤児院出身であろうという漠然とした記憶。
どこまでが事実で、どこからが妄想なのか? それともすべて事実なのか? すべて妄想なのか?
僕自身、何を信じればいいのかわからなかったのですが、まさかここでフォレンティーヌさんから「グリムベル」という言葉が出てくるとは思いもしませんでした。
僕がフォレンティーヌさんの口から出たグリムベルと言う言葉に少し驚いていると、セリアが先に声をあげます。
「ど、どうしてフォレンティーヌさんがダインが昔いたかもしれない孤児院の名前を!? 昔のダインの事を知っているんですか!?」
興奮して尋ねるセリアでしたが、その問いかけに返ってきたのは別の問いでした。
「あら? 記憶喪失と聞いていたけど、もしかして記憶が戻ったの?」
残念ながら僕の記憶が戻ったわけではありません。
そうこたえようとしたのですが、今度はローズが先に答え、身を乗り出して問いを重ねます。
「いいえ。ダインの記憶は戻っていません。それより教えて下さい! フォレンティーヌさんは昔のダインをご存知なんでしょうか?」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさい。直接私がダインの事を知っているわけじゃないの」
僕の事を知らないという言葉に少しがっかりする二人。
たしかに僕の事を知らないのは残念だけど、それでもフォレンティーヌさんはペンダントの事は知っていました。
「僕の事はともかく、このペンダントの事は知っているんですよね……そうするとペンダントは、グリムベル第13孤児院の孤児に配られていたペンダントなのですか?」
とりあえずそれぐらいしか思いつかなかったので、単刀直入に聞いてみます。
このペンダントは訳アリだと言っていたし、人に見られないようにとも言っていました。
このペンダント自体が有名という感じでもなさそうですし、そうするとフォレンティーヌさんはグリムベル第13孤児院の関係者なのでしょうか?
「だいたいあってるけど、少し違うわね。そのペンダントはグリムベル第1からだい第12……え? ダイン、あなた今第13孤児院って言った?」
なんだろう? 今度はフォレンティーヌさんが驚いて身を乗り出しそうになっています。
「その……曖昧な記憶なので自信はないのですが、漠然と思い出したのは『グリムベル第13孤児院』出身だったことです」
僕の言葉にあらためて驚きの表情を浮かべ、少し考え込む仕草をみせるフォレンティーヌさん。
いったいどうしたのでしょう?
「おかしいわね……孤児院は……はずなのに……」
フォレンティーヌさんが何かを呟いていますが、言葉になっていないのでちょっと聞き取れません。
どうも何か考えを整理しようとしているようなので、少し待ってみようかと思ったのですが、待ちきれない約一名が声をあげます。
「フォレンティーヌさん! その……一人で悩んでないで、もうちょっと私たちにもわかるように話してください!」
セリアが話がよくわからない事に我慢が出来なくなって、話に割り込んできました。
「あぁ、ごめんなさい。ダインがグリムベルという孤児院出身なのは間違いないと思うわ。でも、グリムベル孤児院は絶対に第12までしかないはずなのよ」
「そうなんですか? 僕も漠然と思い出した言葉なので、もしかすると間違っているかもしれないです」
正直、いきなり『グリムベル第13孤児院』という言葉が頭に浮かび、漠然と「あ~僕はその孤児院の出身だ」と理解した感じだったので、正確かどうかは僕にもわからないんですよね。
「フォレンティーヌさん。そういう事を知っているという事は、あなたもグリムベルという孤児院の出身なのですか?」
そう尋ねたのはローズだ。
確かにここまで詳しいのだから、孤児院出身もしくは関係者、少なくともかなり孤児院について詳しいのは間違いないよね。
「……まぁあなた達ならいいか。そうよ。私はグリムベル第4孤児院出身よ」
やっぱりフォレンティーヌさんもグリムベル孤児院の……え? でも、そうするとフォレンティーヌさんは……。
僕と同じようにこの世界の人間ではない?
今更ながらに気付いたその事実に、僕は「今ここでは言えない」と言った意味をようやく理解しました。
「やはりそうなのですね。それは……それはどの城塞都市国家にあるんですか?」
「……それは言えないわ。ごめんね。それから、この事は他言無用よ。あなた達もダインの事が大事なら、絶対に人に言っちゃダメ」
「はい……わかりました。絶対に口外しません」
ローズは孤児院がどこにあるかも教えてくれない事にかなり不満の様子ですが、フォレンティーヌさんの真剣な表情を見てしぶしぶ納得したようです。
気付いたからこそ理解できるけど、その質問にはこたえられないですよね……。
「セリアもいいわね? 絶対に人に言っちゃダメよ」
「わ、わかってるよ~」
口を膨らませて少し拗ねるように答えるセリアを横目に、僕は話を先に進めます。
「僕を指導してくれるという理由は何となくですがわかりました。それで……肝心の指導と言うのはどういった事を?」
「そうね。あなたの基本的な能力を見極めて、あなたのいの……ギフトの使い方を教えてあげるわ」
「ギフト? 僕はやっぱりギフトを授かっているんでしょうか?」
「そうね……そう思っていいと思うわ。それとダイン、あなた自分のギフトがよくわかっていないでしょ? 私の指導を受けるなら、それも教えてあげられるわよ」
導きの水晶の判定ではいろいろおかしなことになっていて、本当にギフトを持っているのか自信がありませんでした。
フォレンティーヌさんに指導を受ければ、その理由もわかるかもしれない。
それにしても、単純に何らかの力を持っていると言うのはちょっと嬉しいな。
僕だって男の子だからね。
「ダイン、良かったね!」
「うん。水晶ではよくわからない事になっちゃったから、ちょっと心配だったんだよね」
セリアの言葉を受けて二人で喜んでいたんだけど、ローズが少し訝し気な表情を浮かべて待ったをかけます。
「セリア、ダイン、ちょっと待って。……フォレンティーヌさん、疑うようで申し訳ないですが、どうしてあなたにそんな事がわかるんでしょうか?」
確かに僕の事を知らないと言ったフォレンティーヌさんが、どうして僕がギフト持ちだとわかるんだろう?
それも何かグリムベルという孤児院に関係しているのでしょうか?
「ん~それもちょっと説明しにくいわね……わかったわ。それなら今からそれを教えてあげる。ワグナー校長。ちょっと修練場を借りられるかしら?」
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これから徐々にダインの能力が明らかに☆
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