表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/1047

待ち合わせ


 成り行きに流されるがままにレンリとウルの学都アカデミア観光に付き合うことになってしまったルカでしたが、かなり楽観的かつ好意的に解釈すればこの状況は悪いことばかりではない。そう言えなくもない、かもしれません。



 ラックが捕まった経緯に関しては昨日のうちにリンから聞いて、とりあえず当面の危険はなさそうだと判断できましたが、それはあくまで推測であって実際に牢に入っている姿を確認したわけではありません。


 ですが、ルグに聞いた限りでは、どうやらレンリたちは実際に囚われの身となったラックの姿を確認しているはず。ならば会話の中から何かしら有益な情報を得られるかもしれない……みたいなことを、この時のルカは考えていました。


 家族以外と関わるようになってから多少改善されたとはいえ、ルカの身内への依存傾向は依然強く残っています。だからこそラックの身を案ずるばかりに、現実的にそれが可能かどうかを度外視してしまったのです。


 もしも、この判断をリンやレイルが聞いていたら全力で引き止めていたでしょう。

 単純に監禁のための人手が足りないというのもありますが、なにしろルカの口下手さは筋金入り。上手く会話を誘導して望む情報を聞き出せる可能性よりも、いつも以上に挙動不審になって疑いを持たれる可能性のほうが遥かに高いのですから。


 まあ、決めてしまったことは仕方がありません。



「…………よし」



 どうにか兄についての情報を得るべく、ルカは密かに気合を入れました。 








 ◆◆◆







 レンリとルカは、まずはウルと合流するために、一旦レンリの居候先であるマールス邸へと向かいました。元々、レンリは今日の探索中止を伝えるために早めに家を出ていただけなので、どのみち一度戻るつもりだったのです。


 乗合馬車オムニバスの車内席に座って、ガタゴト揺られながら待つこと数分。



『あっ、昨日のおねーさん!』


「こ、こんにちは……ウルちゃん……」



 停留所で降りると、すでに屋敷の前で待機していたウルが二人の姿を見つけて、とてとてと駆け寄ってきました。

 ウルの身体の一部でもある服は自在にデザインを変えられるようで、レンリの着ているのを小さくしたようなワンピース姿です。



「いやはや、ウル君は実に興味深いね。別のウル君や他の守護者には何度かお目にかかったが、こうして街にまで出て来るのは珍しいのだよ」


「おや、叔父さま?」



 見送りのつもりなのか、屋敷の主であるマールスも外に出てきていました。

 ちなみにウルが屋敷に滞在する件について、彼は快く了承していました。

 植物分野の魔法を専門とするマールスにとって、ウルの存在は非常に興味深いもののようです。



「植物を分解・再構築して肉体や衣服を作るとは実に素晴らしい。一度でいいから解剖させて欲し……がっ!?」


「うふふ、先生。冗談にしては笑えませんよ?」


「いや? 別に冗談じゃな……ぐぉ!?」


「……先生?」



 普段は温厚なインテリなのですが、学者の性分ゆえか、興味深い研究材料が手元にあるとついつい暴走してしまうようです。

 ホウキを持って追いかけてきた弟子兼家政婦のアルマ女史に思い切り頭部を殴打され、頭を押さえて地面をごろごろ転がりながら悶絶していました。


 ちなみに彼の言う解剖云々はあくまで学術的な好奇心によるもので、マールスに幼女をアレコレするような猟奇的趣味はありません。まあ、動機がどうあれ変態的なことには違いませんが。



『あははっ、なんだか面白いの!』



 しかし、当のウルは意外とマールス邸の人々を気に入っている様子。

 この調子だと、結構な長逗留になるかもしれません。




 それはさておき、頭部のダメージが回復したマールスは、やっとレンリが連れて来たお客に気付いたようです。



「おや、そちらのお嬢さんはレンの友達かい?」


「え……は、はい……っ」



 ルカは一連の流れを見てすっかりドン引いていましたが、



「ああ、叔父さま、彼女がルカ君ですよ。ほら、前に私が話した力持ちの」


「ああ、あの力持ちの」


「……ぁう……そ、そのルカ……です」



 共に迷宮探索をする仲間ということで、すでにレンリから話を聞いていたようです。おかげで紹介は早く済みましたが、初対面の相手に「力持ち」で認識されていたのが恥ずかしいのか、ルカは俯いてもじもじしています。



「もう一人の男の子は今日はいないのかい?」


「ええ、ルー君ならどうも風邪を引いたらしくて」



 まあ、実際には監禁されていて、しかも目の前にいるルカが犯人の一人なのですが、今のレンリには知る由もありません。仮に本人が言っても冗談だと思ったかもしれませんが。

 

 ともあれ、無事にウルと合流することができました。


「で、それなら彼が復調するまでは迷宮のほうは休んで、私達もゆっくりしようかな、と。ああ、そうだウル君。事後承諾になってしまったけど、今日はルカ君も一緒だから」


『うん、我は別にいいのよ。よろしくね、オドオドのお姉さん』


「う、うん……こちら、こそ」



 呑気に休日を満喫しようとするレンリとウル。

 ルカは果たして、疑われることなく兄についての情報を聞き出すことができるのでしょうか?



昼休み頃と夕方以降。

どっちの時間帯に投稿したほうがPVの伸びがいいか検証中。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ