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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』

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絶対無敵のラメンティア

本日二話目の更新です。

順番飛ばしにご注意ください。


「なんなの!? キミ達さぁ、マジでなんなの!?」


『ちょっとちょっとお姉さん、いくらビックリしたからって我の口調をパクらないで欲しいの! まあ、気持ちはとってもよく分かるけど……』


 レンリ達が驚くのも無理はありません。

 なにしろ因果や時空の彼方に消え去ったはずの連中が、さも当然のような顔をして自分達の朝食を盗み食いしていたのです。いえ、この際朝食はどうでもいいのですが。



『くく、まあ落ち着け』


『そうだよ、若い私。ほら、ウル君も。温かいお茶でも飲むといい』



 マールス邸一階の食堂を我が物顔で占拠しているラメンティアと運命剣。

 『今日』の最後に見た時はラメンティアの胸に刺さっていた運命剣ですが、今はもう引き抜かれてテーブルの上に横たえられておりました。



「まあ、飲むし食べるけど……で、結局キミらは何でいるわけ?」


『うむ、教えてやろう。まず悪が「夢現」を発動させた後のことなのだが』



 『夢現』に加えて『復元』や『強弱』、更にはありったけの神力を用いた『奇跡』を発動させたラメンティア。普通に考えれば力を使い果たして消滅するか、そもそも最初から生まれなかったことになるかでしょう。実際、ラメンティア自身もそのつもりだったのですが、そこで予想外の出来事が起きたようなのです。



『気付いたら見渡す限りの真っ白い空間にいてな。アレはウル達が創っておった天国や地獄とも完全に別物であったな』


『ついでに言うと、ラメンティア君に刺さりっぱなしだった私も一緒にね』



 彼女達が気付いた時には、見覚えのない場所にいました。

 その空間の正体については未だに確かなことは分からないようですが。



『ちゃんと調査する時間がなかったし、私の未来知識込みでも仮説の域は出ないけど。アレはきっと数多の異世界全てを内包する、より高次元の概念的空間……みたいな? 真理とか根源とか原初とか零とか事象の地平線とか、漫画やアニメでもたまにそういう設定出てくるでしょ。多分、ああいう感じのやつ』


「あー……うん、まあ何となく分かったけどさ。そんな大層な場所に行ったキミ達がなんでここでのんびりサンドイッチ食べてるわけ?」


『くくっ、気になるのは分かるが、そう急くでない』



 何はともあれ、気付いたら見覚えのない空間にいたラメンティア達。これ以上はないと思われた彼女の最悪ぶりが大幅更新されるのは、ここからでした。



『感覚的なものではあるが、あのままでは遠からず悪は消滅しておったのだろうな。なにしろ、歴史の流れがねじ曲がったことで悪が生まれる因果は消え去った。最後に大逆転キメたことだし、最初はそのまま気分よく消えてやってもよいと思ってたのだがな』


「ふむふむ、それで?」


『ああ、殴った』


「ええと……なんて? 誰を?」


『だから、殴った。悪としても向こうが頭を下げて丁重に頼んでくるなら大人しく消えてやっても良かったのだがな、あの因果律の奴めがいきなり上から目線でムカついたから不意討ちでグーパン入れてやったのだ』



 果たして、因果律というのはグーで殴れるものなのか。

 高次の概念的空間ゆえの特性なのか。

 レンリにはさっぱり分かりません。



『それで相手が怯んだ隙にしこたま蹴りを入れてやって、トドメに運命剣で滅多刺しよ。そしたら因果律の奴め、泣きベソかきながら逃げていきおった! くかかっ、二度と逆らうなよ雑魚が!』


「へー、すごーい。因果律って泣くことあるんだ」


『こらこら、私。思考を放棄するのはまだ早いよ。まあ、そんな真似ができた理由としては、この私がラメンティア君に刺さってたのが大きいんじゃないかな? 詳しい仕組みについては、例の如く禁則事項で言えないんだけど』



 元々、運命剣は未来から時間軸や因果を無視する形で来ていたわけです。

 歴史の流れを正常に保つような高次元の修正力が存在したとして、運命剣はそうした影響を誤魔化したり弱めたりする機能を有する。ここまでは前提として、そこに更なる偶然が重なりました。


 元は戦闘中に更なる権能封じを狙われぬよう刺されっぱなしにしていただけですが、特に痛みや不快感がないせいか、戦いが終わってからもラメンティアには運命剣が刺さったままの状態になっていたのです。そうして偶然にも一体となっていたことが、時空や因果の修正力的な作用への耐性や認識力、干渉力をもたらしていたのでしょう。



「その因果律? それが神判定なのかは分からないけど、剣の私で滅多刺しって大丈夫なの? 因果を司る世界の仕組みが消えて、時空の流れが滅茶苦茶になったりしない?」


『はっ、そんなもん悪の知ったことか! その時はその時だ!』


『私もついついラメンティア君に加勢して、権能なんだか時空間に備わった機能だかも分からないまま斬れそうなのを片っ端から斬らせちゃったからね。とりあえず現状は目に見える異常は起きてないようだし、まあ大丈夫なんじゃないかな多分?』



 下手をすれば問題はこの世界だけで収まらず、数多の異世界の過去や未来といった全時空をも巻き込んで大変なことになっていたのかもしれません。


 もっとも話題がこのあたりまで及ぶと、内容が抽象的になりすぎて具体像を想像するのも難しいためか、レンリも一周回って逆に落ち着いてきました。仮に問題があったとしても、少なくとも今の時点で世界は無事なわけですし、それより何より今更できることがあるとも思えません。考えても仕方のないことを考えても無駄に疲れるだけなのです。



『ま、ここまでの話はあくまで分かる範囲の材料から半ば無理矢理組み立てた仮説だけどね。本来のラメンティア君なら、自分があの白い空間にいると認識することすらできずに消滅してたんじゃないかな?』


『そうか? よくよく考えたら悪だけでも楽勝だったと思うがな。それで因果律の奴をボコって、気が付いたら学都の郊外に運命剣を持ったまま突っ立っておったのだ』



 当のラメンティアも運命剣も、自分達の身に起こった出来事を正確に理解しているわけではないようですが、何はともあれ消えずに済んだのは確かな様子。一度は使い切ったはずの神力も、何故だか『夢現』を使う前までと同じくらいに戻っていました。そうなると一度は潔く消え去るつもりだったことなどすっかり忘れ、色々とやりたいことも出てくるわけで。



『で、そこから先は学都の街中を普通に歩いて、道中で悪に絡んできた時間パトロールだか時空警察だか名乗る頭のおかしいチンピラ連中を適当にボコって返り討ちにした……のは別にどうでもいいが。ともあれ、こうして真っ先にレンリに会いに来てやったのだ』


「へえ、そうなんだ。それは光栄だね。あと多分だけど、そのチンピラって適当に流していいやつじゃないと思うんだけどね?」


『あの人達は私のいた未来とは別口っぽかったかな。もうちょっと詳しい話を聞きたかったけど、もしかしたらもう来てくれないかもしれないね』



 ちなみに『今日』の魔王がラメンティアと結んだ契約はまだ生きているようです。

 彼女が語るチンピラ達が生きて帰ったのがその証左。もう少し詳しい話を聞きたいところですが、運命剣曰く、残念ながらそれは望み薄とのことでした。きっと、よっぽど酷い目に遭わせたのでしょう。



「ねえ、ラメンティア君さぁ。キミ、もしかして無敵なの?」


『くかかっ、なんだようやく気付いたか!』



 単純な強さ比べなら対抗し得る面々もいるとはいえ、そういった強い弱いとは関係ない部分で異常にしぶとい。もはや何をどうすれば死ぬのかも分かりません。先程までは大きな敗北感を覚えていたレンリとしても、ここまでくれば素直に感服するばかりでありました。



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