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第22話

反響があまり無いので一挙、総集編でお送りしています。

 闇を漂うアルドルのその瞳に光り輝く鳥が映る。

 

「大丈夫だよ、不安にならないで」


 その少女の声にアルドルは尋ね返す。


「君は誰だい」


 無邪気な少女の声が答える。


「リュミエールだよ。

 リュミエール・フュテュール。

 あなたの名前を教えて」

「アルドル。

 アルドル・ル-ク・ソラリスだよ」

「アルドル・・・。

 ふふふっ、アルドル」


 嬉しそうに無邪気に笑う少女の声に戸惑っていると。


「ねえっ、アルドル私とお友達になって」

「君と」

「君じゃないよ。

 リュミエール。

 リュミエール・フュテュールだよ」

「分かったよ、リュミエール友達になろう」

「ふふふっ、ありがとうアルドル」


 その言葉とともに光の鳥はその形を少女へと変えてアルドルの手を取り一際輝くその胸の輝きに導く。

 手が触れると光が弾けアルドルの意識を飲み込んでいく。




 朝の光が射し込みアルドルに目覚めるように促す。

 体を起こし見知らぬその部屋に戸惑いながらも記憶を手繰り寄せる。

 王都アッペティートでの解放軍のリーダーのユリアンの凶行を止めるべく黒騎士エクリプス・グラヴィリィオンに戦いを挑んだのである。

 漆黒の穴に吸い込まれたところでアルドルの意識は途絶えたのである。

 あらためて部屋の中を見回してアルドルは驚く。

 立ち上がると膝をついて床に触れる間違いなく本物の木である。

 床だけでなく壁もアルドルの寝ていたベッドも家具も木材でできている。

 信じられないことである荒廃したこの世界で何故こんなにも木材を豊富に使うことが出切るのであろうか。

 驚きから覚めないアルドルの耳に扉の向こうから階段を駆け上がってくる音が聞こえる。

 振り向くと同時に扉が開け放たれ短い金の髪に蒼い瞳の少女がリルルと共に現れる。

 リルルは嬉しそうにアルドルに向かってその肩にとまって頬にふれる。

 

「おはようっ、アルドル。

 3日間も眠ってたんだよ。

 アルドルってお寝坊さんだよね」


 無邪気な笑顔でそう言う少女に戸惑うアルドルを不思議そうに見つめながら少女は尋ねる。


「どうしたの、アルドル」


 小首をかしげる少女にアルドルは戸惑いながら。


「・・・えっとっ、君は」


 その言葉に少女は頬を膨らませて、


「リュミエール。

 リュミエール・フュテュールだよ。

 アルドルとお友達になるって言ったじゃない」


 その名前に夢で見た光の少女を思いだす。


「そうだリュミエールだ。

 リュミエール、君があの場所から助け出してくれたのかい」

「あの場所ってアルドルが漂っていたところかな」


 その様子から本人もあまり分かっていないようなのでアルドルは言い忘れているお礼の言葉を先に口にする。


「ありがとう、リュミエール」

「ふふふっ、どういたしましてアルドル」


 聴きたいことは色々あるがその前に、


ぐうぅぅぅ~~~っ


 アルドルのお腹が鳴りリュミエールはクスクス笑いながら、


「そうね、食事にしましょうねアルドル」




 階下の食堂に下りてようやくここが宿屋だとアルドルは気付く。

 リュミエールはカウンターに向かい注文をするとアルドルを席に誘う。

 席に座るとリルルがアルドルの肩からテーブルの上に移る。

 嬉しそうに見つめるリュミエールにアルドルは尋ねる。


「色々、聴きたいんだけどいいかな」

「うん、いいよ」

「まず、ここがどこになるのかを教えてもらえるかな」

「う~んと大陸からでいいのかな」

「そうだね、大陸のどこか詳しく教えてくれるかい」

「ここはエスト地方のユアン領にあるフヨウの町だよ。

 そしてここはフヨウの町にある宿屋さんなの」

「エスト地方、確か僕はウェストゥ地方にいたはず」

「そうなの」


 リュミエールの言うとおりならば大陸の反対側ということになる。

 アルドルが考え込んでいるうちに料理が運ばれテーブルに並べられていく。

 そこでアルドルは気付き服をまさぐるが生憎持ち合わせがない。

 それに気付いたリュミエールがアルドルに笑顔で、


「大丈夫だよ、私お金を持っているから」

「・・・お金っ?」

「そうか貨幣経済はエスト地方でしか成立していないから分からないよね。

 あとで教えるからまずは食べましょう。

 冷めちゃうものね」


 そう言ってリュミエールは箸を器用に使って食事をはじめアルドルも見よう見真似で箸を使う。

 その様子がおかしいのかリュミエールはクスクスと笑いながらも箸の使い方をアルドルに教える。

 



 夕刻アルドルはフヨウの町の共同墓地を訪ねる。

 リュミエールがアルドルを助けたときにはシャ-ル・ヴィエルジュ=エクレールは四肢を砕かれ修復不可能なほどのダメージを負っていたそうである。

 そしてエクレールのアマトゥールもアルドルを守るために力を使い果たし息絶えていたのである。

 リュミエールはアマトゥールの亡骸をこの共同墓地に埋葬して弔ってくれたのである。

 あのあとディレッタ、リムニ、セレアル、オニロ、アーデルハイト、ナディア達がどうなったのかはアルドルには分からない。

 果たして無事なのであろうかそれを知るのが怖くもある。

 ここがエスト地方ならば戻るのにどれだけかかるのかどんなに急いでも1年は過ぎるであろう。

 考えた末アルドルはリュミエールの勧めに従い王都に向かうことにする。

 2000年の歴史を持つ王都フォルクローアその存在はアルドルを驚かせるのに十分であった。

 アルドルの知る限りは300年以上続く王都は存在しないからである。

 王は聖地で契約しその恩恵を授かると同時にその胸に紋章を刻まれ不老不死となる。

 しかしその契約は同時に呪いを受けることも意味する。

 王都レブランカでギーゼラから聞いた話では聖地にたどり着いた一行の中で王に選ばれたのはまだ母の胎内にいたナディアであった。

 そして生まれると同時にナディア自身がその契約に同意したのかは分からないが胸に紋章が刻まれたのである。

 そして契約内容である他者への差別を実行すべく王都に階級社会を築く。

 王都アッペティートでの契約は飽食であり際限無く食べ続けることである。

 聖地でかわす契約はそのどれもが遠くない将来に王自身が破滅を引き起こすべく仕組まれたものであるとアルドルは考える。

 では何故わざわざそんなことをするのか。

 そもそも聖地が技術の恩恵を授けること事態が疑問ではあるがこれは人間という種を生かさず殺さず管理するためのシステムではないのかとオニロは推測していた。

 そうなると今度は何故そのように人間を管理する必要があるのかという疑問が生まれる。

 結論の無い追いかけっこのように次から次にへと疑問が浮かんでくる。

 結局分からないことばかりになる。

 気がつけばもう陽も沈みかけている。


「今まで、ありがとう」


 アマトゥールにそれだけを告げてはアルドルは宿へと帰ることにする。




 リュミエールが教えてくれたエスト地方に関する話は驚くべきものばかりであった。

 2000年の歴史を持つ王都フォルクローアによってエスト地方の自然は一部のみであるが回復しており木造の建築物が主流になっているというのである。

 そして物資の流通は貨幣を用いた取引が主流となりこれはエスト地方全域に広がっているのである。

 その他にも王都フォルクローアによって様々なものがエスト地方全域に広がり影響を与えている。

 その夜盗賊の襲撃に会うフヨウの町でアルドルはリュミエールから渡された剣に驚く。


「この剣はいったい」


 リュミエールから渡されたのは白く透きとおるような刀身を持ち鍔の部分には乳白色のディエスアムがはめ込まれている。

 一見エペ・クウランかと思ったが全くの別物でディエスアムによって魔術式が書き込まれた仮面に連動して魔術を行使できるグリモワール・ラムである。

 それでアルドルは彼女リュミエールがヴィルジニテであることを知る。

 盗賊を撃退したアルドルは翌日リュミエールが引き受けてきた隊商の護衛の仕事をすることになり更にその翌日にアルドルはフヨウの町を旅立ち王都フォルクローアを目指す。




 旅の途中ナキアの町に立ち寄ったアルドルはそこでディスティー・アニマーという名の少女に助けられる。

 ディスティーは養い親であるリムニ・アニマーの使いで来たことを告げてアルドルを導く。

 ユアンの町でアルドルを待っていたのはセレアル、オニロ、アーデルハイト、であった。

 オニロの説明によるとリュミエールは元々スゥド地方のエスポワールの町で眠っていたのである。

 突然、消えたことで魔術による追跡をしてエスト地方でアルドルと一緒にいることが分かり追いかけてきたそうである。

 案内されたエスカルゴのリムニの変わらぬ部屋では仮面をつけたリムニが床に伏せていた。

 アルドルが消えた後にリムニとディレッタの2人もマイクロ・ブラックホールに消えたことをオニロがアルドルに伝える。

 そして事象の地平の彼方へと飛ばされて記憶を失ったまま60年前のスゥド地方にリムニがたどり着いたことを知らされる。

 記憶が戻ったのは8年前の王都アッペティートでの戦いの日であった。

 今はあの王都アッペティートでの戦いから8年が過ぎウェストゥ地方ではユリアン率いる解放軍がその技術を奪うためだけに次々と王都を襲っていることが語られる。

 王都の技術力を奪ったユリアンはウェストゥ地方で一大勢力を築きいずれは聖地の技術力も奪うために攻め込む準備を行っているという。

 

「顔を見せてくれないか、リムニ」

「恥ずかしいわアルドル、私もうすっかりおばあちゃんなのよ。

 お願いあなたの記憶の中の私のままでいさせて」


 リムニが息を引き取ったのはその2日後であった。

 ディスティーはリムニが本当は記憶を失っていなかったのかもとアルドルに言う。

 何度も結婚の話もあったが全て断りまわりに聴かれても何も答えることはなかったそうだ。

 リムニを弔うとその最後の言葉をアルドルは思いだす。


「ディレッタに会ってあげて、アルドル。

 彼女は今王都フォルクローアであなたを待っているわ。

 フォルクローアの王鬼姫(きき)・ヴェリテ・ソリチュードこそがディレッタなのよ。

 私よりも遥かに永い時をアルドル、あなただけをディレッタは待ち続けているの」


 王都フォルクローアへ自由に出入りできるという(ふだ)を手にアルドルはリムニの墓にしばしの別れを告げる。

 ディスティー、セレアル、オニロ、アーデルハイト、リュミエール、リルルと共に王都フォルクローアを目指しアルドルは旅立つ。



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