第2話 本城決戦
☆魔王城
「・・・ウカツだった。魔王城の周りには何もない」
・・・私は、更に、戦災奴隷を買い集め。城の周りに、村を数カ所作った。
魔族は遊牧、狩猟民族、あるとされた村は当の昔に移動した後だった。
森林の手入れと、食料を自給自足しなければね。
食料と、日用品を送ってくれるけども、いざというときのために、自給自足にしたい。
魔王城は、大昔、暴君魔王ガーデムが作った城、
しかし、勇者パーティーの侵入を許し、十人の魔王が討ち取られたので、縁起が悪いとうち捨てられた。
長いこと、魔王は誕生せずに、空位が続き、城は空だったが。
ここには、骸骨博士さんとアリーシャさんが住みついて、アキラ様が転生され、約十年、3人だけで住んでいたそうだ。
魔王城を出た魔王、それがアキラ様の評価。
長いこと、魔王は城に残り、命令だけをしていたそうだ。
ふう。しかし、魔王は、魔族の戦長、戦争が無いときは暇ね。
権限も委譲してきたから、ヤクーツも、これから、更に栄えるでしょう。
もう、私の出番は、勇者に殺されるぐらいだわね。
しかし、ここに来て、3ヶ月後に、体に異変が生じた。
「ウグ、イタい。ウググッ」
朝、起きたら激痛を感じた。
「魔王様!如何されましたか?」
「回復術士を!」
・・・・
「無理です。回復術が、効きません・・・業病のようです」
「私らの、祈祷も効かないよ!」
「そう・・うっ」
「おい、これを飲め」
グビグビ
ワシムさんが、薬粥を持って来てくれた。苦いが、少し、痛みが和らぐ。
「実は、ワシらの国、ドワーフ国にも転生者や、転移者は現われるのだ。彼らの中で、『内政ちーと』を起こす者もいる・・・しかし、文明を変えるほどの発明をする者は・・早死にする。この世界にある異世界の文明の物は、「まよねーず」ぐらいだ。定着しないのだ・・・」
「そう・・なの?」
「その時に、培ったレシピじゃ。ワシらドワーフは業は深い。一時でも長生きしてもらって、発明をしてもらおうとした狂気の時代があった。その時に、開発されたレシピじゃが、痛みを和らげることしかできない」
そうか、誰も何も言ってくれなかった。もしかして、ワシムさんはこのためについてきたの?
「念のためのつもりじゃた。政務から外せば、業病は発症しないと皆は予想したのじゃ。あんたに、円盤を召喚してもらって、ドワーフ秘伝の技術として、50年後に解禁する予定じゃった」
あ、アキラ様が、回復術士を沢山つけてくれたのも。
「ワシが、教えた。アキラ殿は、必死になって、回復術士や祈祷士を集めたのじゃ」
「大変、武器、弾薬を召喚しなければ!」
・・・
「イタい!」
ドサッ
私は召喚途中に倒れた。
「能力を使うと、こうなる。しばらく、安静にするのだな」
ワシムさんは止めなかった。経験してわからすためね。
もう、対勇者戦闘団も解散、ストックしてある弾薬、武器を欺し欺し使っても、5年で部隊行動は出来なくなる・・・
「ワシムさん。せめて、小銃弾は・・」
「作れない。薬莢もつくれん。炸薬の製造は無理だ。やっと、黒色火薬ぐらいじゃろうな。バネに至っては、板バネがやっとだ。まだまだ先じゃ。だから、発病はないと安心しておったのだが・・」
そう、この男は、現実を突きつける。フフフ、下手に嘘を言われるよりはいい。
「どうする?聖王国に聖女の派遣を打診するか?ワシのルートで可能だが」
「いいえ。秘密裏にしても情報が漏れる。魔王が病気と知ったら大軍が来るかも知れない。条約を結んだが、条約は破るためにある。・・・勇者がすぐに来るとは思えない」
しかし、現実は、非情だ。
勇者遠征の事前通告が来た。
「勇者パーティーが、討伐の旅に出たと、連絡が来ました。勇者、剣聖勇者アルバート、聖女はセイコ・・・ドラゴンに乗って・・・魔王様!!」
私は膝を付いた。しかし、安心もする。
「フフフ、命の恩人だから・・まっ、いいか。これも我が定め」
1日、ベッドで安静にしている。なるべく、体力を温存するためだ。
遂に、その日が来た。
「魔王城に・・・あれは、飛龍系ドラゴンが向かっています!乗っているのは、勇者パーティー!」
「グルルちゃん・・・そうね。ドラゴンは気まぐれだから、勇者側についた。あの男、気持ちだけはいい男だ。仕方ない」
私は何か嬉しくなった。
「まあ、いいわ。魔王を殺せば、この戦いは終わり。女神圏は結束しお祭り騒ぎ。勇者は法外な報酬と栄誉を得る。その熱狂のエネルギーは魔族領に向かうことはない」
ドラゴンの上には、アルバート君と、美丈夫のエルフ、そして、人族の聖女、釣り目で、20代後半、ダークエルフの少女、4人のパーティーね。
「ほら、薬粥だ。行ってこい」
ワシムさんは、止める気が微塵もない。嬉しい。
私は薬粥を飲み込み。この世界で初めて、召喚した武器、64式小銃に弾コメをして、城の中庭に向かった・・・
☆
「剣聖勇者アルバート!魔王殿に拝謁しに来た!」
「フフフ、私は、魔王、アズサ・ササキ、承る!」
クラッ
足がふらついた。
シュン!
アルバート君がスキル俊足で、一瞬で、私に近づき・・斬るのだろう。相手の弱みにつけ込む。立派な戦術、文句を言う気は微塵もない。
この男に斬られて終わる人生、悪くはない。
だが、
「え、何、お姫様抱っこしているの?」
「これを飲め!」
「え、え、説明を」
「嫌なら、口移しだぞ!いや、良くても口移しだぞ」
「え、え、飲むから止めて!自分で飲めるから!」
私はアルバート君が、取り出した小瓶を受け取り、透明な液体を飲む。
何故か、安心して飲めた。
ピカッ
体が、青く光り輝く。
「フウ、転生者の業を断ち切る。世界樹の樹液を原料にして作った秘薬だ。南方の大陸に行ってきた」
・・・もしかして、
「嬢ちゃん。よかったのう」
「ええ、まるで、孫の結婚式を見ているようじゃ」
ええ、
美丈夫のさらさらした長髪のエルフが・・・
「骸骨博士さん!」
そして、少女だと思ったダークエルフが、
「アリーシャさん?!」
「ワシらが調合したのじゃ。毒味で飲んでみたら、若返ったのじゃ。ワシは死んでも魔道を極めようとして、アンデッドになった愚かなエルフの魔導師じゃった。名前も忘れたから、骸骨博士と呼んでくれんかのう」
「私は人族年齢で15歳に若返った。70歳じゃ。ピチピチになってしもうた」
そして、人族の聖女は、
「私は聖女セイコよ。ほら、ドランホラン、継続購入できなくなるのは、あれだしね。勇者システムのテストとして、本当に魔王城まで行けるのか道筋の調査に来たのよ。フン!元気そうじゃない。良くなったら、ドランホラン召喚しなさいよね」
最強聖女と名高い。聖王国の筆頭聖女だった。
「「「「ワーワーワー!おめでとう!」」」
歓声が響いた。
魔王城の周りに、民衆が・・・あれは、対勇者戦闘団の皆と、イワンさん。ブゼンさん。ムサビ、ガオスさん獣人族。・・・地竜に乗っているサーラちゃんと、妖精馬で空にパタパタ飛んでいるアリスちゃん。先代魔王、アキラ様も、空に・・いた!
「皆・・・有難う。見守っていてくれたのね。アルバート君、グスン」
この世界に来て、いっぱい泣いたけど、初めて嬉しくて泣いた。
「さあ、姫よ。このまま結婚しようか?」
「ホワッツ!」
「アハハハ、照れているな。『承る』とは、結婚のことだろう?」
・・・助けてくれたけど・・・あっ、そうか。この男、スキあらば、結婚しようとしていた。
女性が名を名乗れば、熱烈な愛の告白だっけ?
でも、嫌じゃない。
しかし、雰囲気に流されるのは嫌いだ。
ましてや、結婚、相手は勇者と魔王・・・何かと問題があるだろう。
「贈り物だ。受け取ってくれるかな」
・・・これを受け取ると後戻りが出来なくなる。でも・・・
私は受け取った。問題は後で考えればいいだろう。二人の共同作業・・あっ、この男、考えるのが苦手そうだ。
「アルバート君、これは何?髪飾りかな。猫ちゃんの手の飾りのようだけど」
「ああ、これはな。令嬢用のメリケンサックだ。ワシム殿に作ってもらった」
「エイ!」
私はメリケンサックを投げた。
「ハア、ハア、ハア、却下!結婚は却下!普通、指輪か何かでしょう!?」
「ギャアアアア、討伐報酬3ヶ月分が、弧を描き飛んで行く~」
「それ、いわんことか。ワシは言ったろう?女の子にメリケンサックは無粋の極みじゃと」
「しかし、これしか思いつかなかったのだ。故郷だと、恋人にこれを渡して、結婚したら、いつでも、俺をこれで、ぶん殴って結構、だから結婚してと」
「あんたのド田舎の風習は知らんぞ!」
「これは・・」
「「「アルバートが悪い!」」」
「勇者様が悪いですわ」
「何を考えているのよ!アルバート、レーザビームをブチ込むわよ!」
「グウルルルルルルルルルルル」(だから、金ピカのネックレスにしておけばよかったのに)
「クゥ、クゥ」(果物だよ)
「ワシムさん。全部、知っていたの?」
「いや、秘薬を探すところまで知っていたが、その後は不確定じゃったよ。探して、調合出来る確率は低いと思ったぞ」
・・・そうか。見つからなかったときのために、私を失望させないために、言わなかったのね。
探してくれる事実だけでも嬉しかったのに。
何だが、心がポカポカしてきた。
その後、魔王城の周辺では開発が進むことになる。
最後までお読み頂き有難うございます。
後、数話で完結予定です。
宜しくお願いします。




