『秘密兵器』
久住は神流を連れて誰も入れた事のない部屋を訪れた。彼自身もあまり近寄らない禁断の部屋。神流は込み上げる不安を押し殺しながら久住についていく。白いベッドとロッキングチェアしか置かれていない広いスペース。
「なに・・・ここ・・・」
神流は震えながら久住に聞いた。
「とっておきの秘密が置いてある場所さ」
ベッドから静かに誰かが下りるのが見えた。レースを開けて二人の前に出てきたのは綺麗な青年。白銀の長い髪を靡かせ、端整な顔立ちで二人を見つめている。
「おはよう、透韻」
久住が声を掛ける。
「・・・勝手に入ってくるな」
不機嫌な声で青年は久住を睨みつけた。
「そう怒るな、透韻。神流が怖がるだろう」
「神流・・・?」
「私の恋人だ」
「・・・随分若い恋人だね」
「そうそう!君の子どもが此処に向かっているそうだよ」
「えっ・・・」
予期せぬ報告に青年は動揺した。
「会いたいだろう?何年振りかな?」
「お前が仕向けたのか?」
「いいや。私は何もしていない。あの子達が勝手に動いてるだけだ」
青年は黙ってしまった。
「今日は其だけ伝えにきたんだ。じゃあ、また明日」
久住は神流を連れて一方的に部屋を出ていった。厳重に鍵を掛ける。
「あの人は・・・?」
「彼は透韻。私の友人だよ」
「でも・・・若かった」
「そう。彼は歳を取らない。23年前、不死鳥の心臓を食べてから透韻は不死身の身体を手に入れた。永遠の美貌と一緒にね」
「不死身・・・」
「透韻は死なないし老いもしない。云わば無敵だ。彼を利用しない手はない」
神流は一度だけさっきの部屋を振り返った。永遠を手にした青年。けれど、それは決して心地好いものではない。神流は哀しい想いが込み上げてきた。
静かになった部屋で透韻は久住が言っていた事を考えていた。
「創葉・・・リン・・・」
もし、本当に此処に向かっているなら止めなければならない。カナンは止めなかったのか――?其とも解ってて行かせた――?自分は何も出来ない。何かあっても助けられる確証がない。どうか、久住の手には及ばないで・・・。




