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ランドマイン  作者: 淡月 涙
13/50

『合流した仲間』

迂闊だった。例え、久住にバレても罰を受けるのは自分だと思っていたから。まさか、遊音が代わりになるなんて・・・。戒は自分の甘さに後悔した。早く助けに行かなければ・・・。遊音はそんなに力のある子じゃない。残虐な拷問でない事を願うばかりだ。




暗い懲罰房の中で、遊音は罰を受けていた。天井から吊るされている鎖に両手を繋がれ、膝立ちのままクノウが有する電気を帯びる鞭を浴びていた。身体は傷だらけで激しい痛みに体力も奪われていた。

「気が済んだ?」

「いいわぁ、この子。弱った表情がそそるのよね。もっと痛め付けたくなる」

「あまりやると死んでしまうよ。程々にしておきなさい。死んだら意味ないからね」

「はぁい」

少し物足りない様子でクノウは久住と一緒に懲罰房から出ていった。静寂だけが残った室内で遊音は手を動かした。強く引っ張ると鎖は脆く壊れた。あれだけ続けて鞭を打たれたら古びた鎖は効力を失う。解放された遊音はふらつきながらも立ち上がった。

「早く・・・行かないと・・・」

だが、扉には頑丈に鍵が掛けられていた。今の彼ではどうしようも出来ない。遊音は疲れに任せて横になった。

「麗夢・・・」

小さく友の名を呼ぶ。もうどの辺まで逃げたのだろう。また、戻ってくるだろうか。その時は、君と背中合わせで戦えるボクでいたい・・・。





「折角の息抜きだったのに、何なんだよ」

いきなりカフェに入ってきた黒服の男達。彼らは麗夢とアスカに銃を向けてきた。

「脱走したのはお前だな?」

黒い服を着ている麗夢に男達が聞いた。

「もうバレちゃった訳?」

「一緒に来て貰おうか」

麗夢は嘲笑うかのような笑みを浮かべた。

「絶対に嫌だ」

「この・・・!」

男が引き金に手を掛ける前に麗夢は男の顔に手を当てた。そのまま電撃を放ち、一瞬で男は黒焦げになった。

「俺に銃なんか利かない」

倒れた男を見て他の黒服達が一斉に発砲してきた。女性客の悲鳴が響き渡る。アスカと麗夢は銃弾を避けながら外に出た。

「殺すの?」

「恨みはたっぷりあるからな。嫌なら見物してていいぜ。アスカ」

「冗談。おれだって恨みはある。レイラを殺された事、忘れた訳じゃねぇ・・・!」

アスカが腕を振るうと激しい風が男達を切断した。周囲にいた人々は恐怖に刈られて逃げ惑う。中には小さな子どももいた。

「鎌鼬か」

「銃しか使えない奴らにはこれで十分だ」

「へぇ。なかなか強気な少年達だ」

男達の中から青年が現れた。さっきまで居なかった筈なのに、いつからいたのか。麗夢は不思議に思った。

「電撃に風かぁ。いいねぇ、その能力。でも、僕には負けるよ」

少年は意味深な笑みを向けた。





リンと創葉は微かな騒ぎに気が付いた。先程通ってきた所から音が聞こえた。

「何かあったのかな・・・?」

「戻ってみようか?」

「・・・でも、なんか・・・」

嫌な感じが漂っていた。リンは創葉に近付き、自然と腕に抱きつく。

「・・・怖い」

「ボクがいるよ、リン。君には絶対触れさせない。其にこの感じ・・・」

創葉は気になる事があった。妹を危険な目に遇わせたくないが、一人にさせるのも気が引けた。

「リン。ボクに付き合ってくれる?」

「・・・解った。でも、あたし・・・」

「君は戦わなくていい。ボクの傍から離れないでね」

「うん・・・」

二人が道を引き返そうとした時だった。向こうから駆けてくる男の子が目に入った。

「たっ・・・助けて下さい・・・!」

リン達に気付いた男の子は必死に頼んできた。

「どうしたの?」

男の子の背を擦りながら創葉が事情を聞く。

「街で・・・戦いが起きて・・・。二人のお兄ちゃんが奴等を倒してくれたんだ・・・!でも・・・後から出てきた男の人にやられちゃって・・・・。お兄ちゃん達、ぼくを助けてくれたんだ・・・!でもぼくには力なんてないし、怖い・・・。」

「落ち着いて。案内してくれる?」

「う、うん。解った。こっち」

二人は男の子に案内されて街の中枢まで戻ってきた。人集りが出来ており、黒服の男達が目立っていた。

「酷いな・・・」

野次馬の一人が呟いた。リン達は人を掻き分けながら中央に出た。黒服達が囲っていたのは、傷だらけになった麗夢とアスカだった。全身に酷い傷を負っており、立ち上がれない程に体力を奪われていた。

「呆気ないなぁ。こんなんで能力者だなんて語らないでよ」

二人を見下しながら青年が言った。創葉は彼に見覚えがあった。

「もっと遊べるかと思ったのに、つまんない。まぁ、でも力は潰したから運びやすくなったけど。お前ら、こいつらつれてけ」

黒服達が動こうとした時、リンが立ちはだかった。堂々とした面持ちで青年を睨む。

「行かさない。」

「誰あんた。二人のお仲間?」

「そうだよ!」

「ふぅん・・・。じゃあ、君にも来て貰おうか」

「えっ」

「待って!」

創葉がリンの前に出た。

「・・・久しぶりだね、佐月」

「・・・?」

「覚えてないの?創葉だよ」

「そう・・・は・・・」






『ねぇ、きみ大丈夫?』

『・・・誰?』

『ボクは創葉。君の仲間だよ』

幼い記憶に残る彼の面影。優しくてどんな辛い拷問にも耐えて弱味なんて絶対見せなかった。いつだって正義感振り翳して自分だけ犠牲になって・・・。でも、そんな君に救われてたんだ。君がいるから生きてこられた。間違っているぼくらの世界を治そうと、立ち上がる姿勢に憧れを抱いた。君がいれば大丈夫だって、君の『大丈夫』だけで何度でも這い上がる事が出来たんだ。創葉・・・。ぼくは君と――。

『脱獄!?』

『うん。今なら出来る気がする。佐月も一緒に来る?』

『・・・もし見つかったら・・・』

『見つからないようにする。決行は深夜だ。不安なら無理に付き合わさない。佐月。ぼくはね、世界を知りたいんだよ。こんなちっぽけな箱庭で見てきた事だけで世界を知っちゃいけないんだ。本当の世界を見たい。いつまでも此処にいたら駄目なんだよ』

君の想いは正しいよ。世界を知れば君はもっと知りたくなるだろ?そして、いつかはまた此処に戻ってくるよ。本当は一緒について行くべきだったんだろうけど、ぼくの考えは君とは少し違ってきていたんだ。負の想いが強くて勇気がなかった。だから、チャンスを君だけに任せてしまった。成功を祈ったよ。君は自由に生きていく人間だ。道を選べる力がある。君がいなくなった後も辛い日々を生きる事が出来た。でも、負の感情は思うようにコントロール出来なくて・・・。





「こんな状で会うなんてね」

佐月は哀しげな表情で創葉を見た。

「どうだった?世界を知る旅は。仲間も出来たみたいだね」

「この子はボクの妹だ」

「へぇ。きょうだい居たんだねぇ。感動の再会も出来たって訳だ」

「佐月・・・。何で君が黒服側にいるんだ?」

「知りたい?」

「あぁ」

「うーん・・・まぁ、久住に抜擢されて?なんか一人で檻にいるのも退屈だから、少し外で動かないかって言われてね」

「其で、そっち側についたのか」

「意外と久住って優しくてさぁ。居心地悪くないしいっかなぁって。能力も使えるしね」

「何故、この二人を攻撃した?」

「命令だったから。そっちの黒服来てる子は脱獄犯。連れてこいって言われててさ」

「やりすぎじゃないの?」

創葉はきつく睨んだ。

「だっ・・・だって・・・抵抗するなら傷つけても良いって言・・・命令・・・で・・・」

佐月は動揺しながら言葉を濁した。

「これ以上、二人を傷付けるようなら、ボクは君と戦うよ」

「やだっ・・・!」

創葉に言われて佐月は泣きそうになっていた。

「・・・創葉と戦うなんてやだよ・・・!」

「なら、二人を返してくれる?」

「うん。創葉の仲間なんでしょ?いーよ」

それを聞いていた黒服達は驚いた様子で佐月に駆け寄った。

「佐月様、困ります。勝手に判断されては・・・」

「だって・・・創葉に言われたら言う通りにするってそうなってるんだもん」

「ですが、久住様にはどうやって説明するおつもりですか!?」

「戻らないよ、ぼく。久住なんて大したことないでしょ。君達も安全な場所まで逃げた方がいいね。久住に見つかる前に」

黒服達は戸惑った。佐月の予想外な行動に判断が鈍っていた。

「創葉!」

佐月は彼に飛び付いた。こどものような無邪気な笑みを見せながら。

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