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あれから母とオリヴァーと一緒にラルクロッドに戻った。
息子の前でも全く遠慮せず、父と母がイチャイチャしているのは、親として正しいことなのだろうか? とにかく父が母から離れたがらない。父には馬車馬のごとく働いてもらったから、ある程度は仕方ないと思えるが、さすがに息子の前ではちょっと自制してほしい。
父が、局長の母を離さない状態だから、副局長に就任したばかりの俺が、魔法局でも毎日忙しく働かされる。
まったくもって解せん。
あー、俺だってミュゼリアに癒やされたい・・・。
*****
ロイエル、オリヴァー兄様、お母様を見送ってから、私はグレイウッドに残り、師匠の娘としてグレイウッドの王宮に挨拶をしに行った。
「娘にして、孫に嫁がせるのか? ちと、ずるいのう」
「すでに相思相愛で常にイチャイチャしてるんだから、誰も割り込めんよ。それでも割り込んでくるなら、私でも抑えきれない孫が大暴れして、サクッとこの世界が終わるぞ。クハハっ」
「クハハではないわい。そなたが存命中はしっかりとあれの手綱を握っててくれないと儂だけじゃなく、この世界中が迷惑するんだからな? ところでミュゼリアよ、お主らの子を予約できんかのう? もちろんあれには内密での交渉だ」
予約? なんて答えるのが正解なの? 困って師匠を見上げると、師匠は私の頭をなでながら任せろという顔をしてくれたのでホッとした。
「私の可愛い娘を困らせないでくれるかい?我が家の家系の見事な執着っぷりを見てきただろう? 内密がバレた時を想像してごらんよ。ただ面倒なだけだ。二人に子ができたら、ちゃんと報告はさせる。今度こそ上手くいけばいいな、ククっ」
「だよなぁ。血筋なのか? 魔力量なのか? 全くもってこちらの思惑通りに進んだためしはないからのう。まあ、それでもそなたが居てくれれば、それだけで周辺国への牽制になるから、感謝してるぞ」
「こちらも自由にさせてもらって感謝してるよ」
その後は、師匠達の話を陛下や殿下達からたくさん聞いた。
師匠はなんと陛下から好意を寄せられていた。でも夜会で師匠が伯爵家の三男にひと目惚れをして、あっさりと結婚してしまった。師匠も陛下が王太子でなければ考えなくもなかったと。自由に動けない王妃になることだけは絶対にイヤだったらしい。
陛下が、王妃に憧れる方が普通だと思っていたが、あっけなく振られてしまったと、ひどい女だと言いながら、泣きマネしていたのは面白かった。
二人はとても良好な関係にみえる。お互いに伴侶がいない状態なのだから、今なら?なんて思っていたのが顔に出ていたのか、師匠に「来世に期待だな。今世は友で充分だ」と言われてしまった。陛下からも「今世でこの先十年共にいるよりも、来世で五十年共にいられる方を選ぶ」と、にこやかに言われた。
とても素敵な二人の関係性に感動してしまった。
お母様こそはと、王家の誰でもいいから気に入ってもらい婚約をしてほしいと、師匠も協力して幼い頃から王宮で過ごす時間を多くとって交流していたが、グレイウッドを訪問したお父様にあっさりとひと目惚れしてしまった。お父様も同じくひと目惚れをしていたので、とんとん拍子で話が進み、あっという間にラルクロッドへ嫁いでしまった。
そっちの王家はちがーう。陛下の嘆きは面白い。
ロイエルは幼い頃から生意気で、王家の方から次に期待すると言われたらしい。
あれから恨みをかうと、倍返しどころじゃすまされないから面倒だし、あちこち修復するのに金もかかるしなと、何かを思い出したようで、ぶるっと身震いした陛下も面白かった。
あまりにもロイエルらしくて、笑いを堪えるのが大変だった。
緊張したけど、楽しい時間を過ごす事ができた。
二人が帰った後の王宮では、
「あの親子三世代に比べたら、穏やかで、ほんわかしてて可愛いかったのう」
「ええ、本当に残念です。ユニオン商会の会頭の姪だったらしいですね。 私が義娘に欲しかった。毎日癒やされたい」
「ユニオン商会か・・・。まあ、大賢者様がテコ入れに参加してると聞きましたから大丈夫でしょう。それにしても素敵なレディでした。もう少し話をしたかった」
「正直に言ってタイプでした。でもロイエル殿が相手では立ち向かう勇気も出ませんね」
「魔力持ちの二人だから、子は複数望めるだろう。全員ミュゼリアに似てくれることを祈るしかない」
「怪物を野放しにするより、コントロールしてくれる相手ができたのは良かったとも言えますね」
「こちらには西の賢者様が嫁ぎに来てくれます。彼女を大切にしましょう」
「だな。さーて、仕事に戻るか」
そんな会話がされていた。
この世界で、師匠、お母様、ロイエル、私の他に、賢者の称号を持つ人が三人いるということで、そちらにも師匠と共に挨拶をしに行った。
「あらぁ、可愛いわぁ。ずっとここに居てほしいわぁ」
南の賢者様で、とてもお胸の大きなお姉様には滞在中、ずっと抱きしめられていた。柔らかくてとても気持ちいい。男の人が喜ぶ理由が分かった気がする。
「ほう、その若さ。実にうらやましいのぉ」
師匠と同じくらいの年齢に見える北の賢者様からは、なぜか手作りの飴をたくさんもらった。でも、自分で舐めるのはお勧めしないよと言われ、困惑した。
師匠からも、ろくな目に合わないから、気に入らない奴に渡して確認してみろと言われた。
舐めたらどうなるんだろう・・・。
すっごく気になるぅ。
「まあ、グレイウッドに嫁ぐ予定ですの。仲良くしてくださいませ」
西の賢者様は、見上げるほどの長身でスタイルのいい方だった。
皆さんいい人ばかりでホッとした。
「賢者も魔女も、たいがい女で変わり者ばかりだ。今、ロイエルだけしか男がいないのは、男は器探しをしなければならない。自分の魔力量を受け入れられる器を持っている伴侶を探すのが大変なんだ。女は自分が器だからな、好いた相手と結婚すればいいだけの話だ。娘はロイエルを産んだが、なぜか女が産まれやすいし、そもそも子ができにくい。その上、魔力量が増えるほど、一人と添い遂げるつもりがない奴の方が圧倒的に多くなる」
「私の魔力量はロイエルの半分だけど、大丈夫?」
「まあ、気にすることはない。大丈夫だろうと私は思ってる。私と娘の次に魔力量が多い女はお前だ。ロイエルは、運命をよく掴んだと言えるな。だが、ロイエルはお前の事が好きすぎるから、大丈夫だと言っても、お前の体を心配して子は望まないかもしれない。そこら辺は二人でよく話し合いな」
「はい」
その後は、大賢者様がいると話を聞きつけた国や、師匠の古い友人達につかまって、もてなされたり、問題を解決したりとバタバタした日が続いたが、師匠の人気、発言力に判断力、魔法の扱い方の凄さを改めて知ることができた。
二匹の聖獣も、どこへ行っても崇拝され、びっくりした。
私は二匹のお世話係と思わることが多々あった。そんな私を師匠がお腹を抱えて笑っていた。
師匠の聖獣は、
「クハハっ、ミュゼリアは本当に面白いからのう。儂らをペット扱いするのは、お主くらいだ」
ノアは、
「これらの反応が普通で、お前が異常だったことにやっと気付いたか。ミュゼリアよ、これからはもっと儂らを崇めろ」
そんなこんなでグレイウッドに帰国する日が、予定より大幅に遅れた。
公爵邸に帰ってきた途端、エスが泣きついてきた。
「全然ちょっとじゃなかったぁ、二人に一緒について行けばよかったぁ」
うん、ごめん。素材がなくなったのね?
でも一人で探しに行かなかったのは偉い。
我慢できのも偉い。
エスの頭をなでてヨシヨシとあやす。
「頼んでいたローブは出来た?」
「出来たよぉ」
「ありがとう。 明日から素材探しに行こう」
「ホントぉ? うれしいぃ」
普段のエスは、語尾が伸びて変な話し方になるところが可愛い。
エスが満足するまで素材探しに付き合うつもり。それが終わったら、私はラルクロッドに帰る。
エスはグレイウッドに残り、お父様が亡くなった原因を探りながら、魔道具師として公爵邸の敷地内に師匠が建ててくれた別邸で続けていく。エスの要望を全て叶えたこだわりの設計だ。素材は師匠や他の魔法使いが集めてくれる予定。
初めてできたお友達のエスも一緒にラルクロッドに連れて行きたかったが、グレイウッド側が待ったをかけた。確かにエスの発想力と、それを現実にする技術は凄いのだ。国から出て行かれては困る気持ちも分かるから、悲しいけど我慢する。転移を使えばすぐ会えるし、私はロイエルが監獄のようだったと言っていた学園に行かなければならない。ラルクロッドで寂しい思いをさせるなら、グレイウッドに残ってもらい、やりたいことに専念してもらうのが一番だと思う。
私もエスに色々な魔道具を作ってもらった。
「タダはダメだから、お友達価格にするねぇ」
エスは亡きお父様と、タダで仕事の依頼を受けることだけは絶対にダメだと約束していたと言うが、請求書にある金額を見ると、これってほぼタダよね? この金額じゃ赤字でしょ? 何度言っても間違ってないよぉと言うばかりだし、せめて見合った金額の半分は受け取ってと、お金を渡してもいつも返されてしまう。
そんな私達の長いラリーを、ノア達がいつも呆れた顔で眺めている。
師匠の聖獣は、
「互いが初めてできた友達だから、大切なんだろうな、微笑ましいのう」
ノアは、
「ふん、毎度よくもまぁ飽きずに続ける。くだらんやり取りだ」
そう言って、ふかふかのマットに丸まり、耳も器用に倒して聴覚をふさぎ、昼寝をはじめるのであった。
*****
「予定よりだいぶ帰ってくるのが遅れたのに、もう今度は二年待たなきゃなのかよ」
「ふふ、卒業したらやっと結婚できるね。新しいローブをエスに作ってもらったの。お揃いだよ? 術式もたんまり組み込んであるの。私もロイエルみたいにローブを着て学園生活を送るつもり。そこもお揃いだよ? ロイエルとお揃い、ふふ、すごく嬉しい」
無意識なのか計算なのか・・・。
まぁ、確実に無意識なんだろうが、どうしてこんなに可愛いことをさらっと言えるのかねぇ。
なあ、学園なんて行く必要なくないか?
なあ、俺の傍で、俺に可愛がられていればよくないか?
どうにか口に出さずにすんだが、ミュゼリアはお見通しのようだな。
「・・・ああ、サンキュ。 はぁ、離れたくない」
「私だって同じ気持ちだよ? 離れたくないし、大好き」
手を伸ばしてきたミュゼリアをぎゅうぎゅうに抱きしめ、久しぶりにするキスは止められないし、優しくなんてできなかった。それでも、ミュゼリアは懸命に受け入れるし、ミュゼリアからも求めてくる。
ったく、そういうところもたまらないから、キスが終わらないんだからな?
ふぅ。
俺もしつこくしすぎたと反省するくらいに長いキスを終え、ぐったりと俺にもたれるミュゼリアは、本当に美しく成長した。
ボンっまでは育たなかった胸だが、絶対に平均以上の大きさだ。っていうか、俺好みのサイズで素晴らしい。拍手を送りたい。
腹の肉はキュっとはならなかった。相変わらず、肉はつまめるが全く気にならないし、むしろこれ位がちょうどいい。何より抱き心地が最高に良い。
尻もボンっとはデカくはならなかったが、そもそも望んでいなかったから満足してるし、触り心地は滑らかでずっと触っていたい。
あー、マジ幸せ。
そう、幸せなのだが、俺には全く意味が分からないこともある。
胸に顔をうずめるのはよくて、服の上からなのに手で胸を触るとなんで怒られるんだ?
尻をなでることは許されるのに、揉むとなんで怒られるんだ?
ま、あれもダメ、これもダメと言われるよりかはマシか。
後で、オリヴァーに聞いてみるか。
とにかくあと三日で学園の寮に行ってしまうミュゼリアを愛でることに集中した。
後日、
オリヴァーにこっそりと小さな声で尋ねてみたロイエルは、
「ぶっほ。 ゴホゴホっ」
顔面に、オリヴァーが思い切り噴き出した茶を浴び、何度も変態野郎と罵られた。
グレイウッドでは怪物扱い。
ラルクロッドでは変態扱い。




