マリベール
声が聞こえる。これは…歌?
【魔導国家アヴィオール】
そこには声を失ったある少女がいた。彼女が伝えたい想いは、願いはそこにあるのに声がない。
失語症。マリベールという少女は幼い頃戦争で両親を目の前で亡くした。その心の傷が声という大事なものを奪ってしまっていたのだ。
手話も確立されていない世界。彼女にとって伝える手段は文字とジェスチャーしかない。
これはそんな彼女が……いや、私(語り手)も紡いでいこう。マリベールの事を!
【魔導国家アヴィオール】にある王都レグルス
日が昇り始める頃、朝露に草木は照らされ王都全体が動き始める。
ふわっふわな金色の長髪を靡かせていると肩をたたかれ呼び止められた。
「マール!」(マリベールの愛称)
振り向いた先には幼馴染のエルシアが朝から元気な笑顔で話しかけて来たのだった。
「ちょっとマール!あなたまた今朝は髪のお手入れサボったでしょ。折角グラスベールみたいで綺麗なんだからしっかり整えなきゃ!!」
そう言うとエルシアはマールを側道によけ道沿いにある花壇の煉瓦に腰をかけさせ手早くマールの髪を整えてあげた。
「はい!出来ましたよっと。おはよう!今日もお仕事?」纏まった髪を気にしながらマールはコクリと頷いた。
「そっか。まぁ貴女の夢なんだもんね!お仕事しながらお歌の勉強出来るし良い事づくめね。でも不便はない?大変な事は?」
ゆっくりと目を瞑り笑みを浮かべながら首をふる。
「ならいいけど…もし夢が叶った時は私が一番初めのお客さんなんだから。そこの所忘れないでよね!あっじゃ今日はこっちでお仕事だからまたね」
お互いに手を振りマールはエルシアを見送り自身も目的地へと急いだ。
これはある星で魔法科学が研究され始めた時代。これにより世界で生活が大きく発展し進み出したがそれと同時に戦争兵器等の開発にも各国は力を入れていた。国々は常に争い続けてお互いに多くの血を流していた。そんな世界に生きた少女の物語。彼女は自らも、そして運命さえも紡いでいった。




