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秘技の名はミラージュ・イモータルボディ

罪園の放った必殺の光線――

|第六段階・無尽光散涙雨ルミナス・シャワーレイン


範囲内の全攻撃対象に向けて、必中のビームを放つ技だ。


発射時点でロックオンされていたならば逃れる手段は無い。

俺の影人形も補足されている――影に戻して回避しようとしたが、予想どおり、その行動はキャンセルされた。

必中攻撃を撃たれた時点で、攻撃された対象には回避行動自体が取れなくなる縛りが強制される仕様になっているらしい。


――こちらも命中は前提だ。


罪園つみぞのの手から放たれたビームは瞬時に空間を切り裂いて迫って来る。

青白い光の尾を引きながら、それはまるで生き物のように空中を蛇行した。


その軌道はまさに追尾ミサイル。

無慈悲にして逃れられぬ死の象徴――


B級冒険者でしかない俺の動体視力では、目で追うだけが精いっぱいだった。


「(来るか……!)」



()()()()()()()()()



ビームが命中する寸前の、刹那。

母さんは自身のスキルを発動した――


そこで、罪園にとっては計算外の出来事が起きる。


「……ッ!? 理解、不能」


俺と影人形は()()()()()()()


全身を貫くビームの奔流は、しかし俺にダメージを与えることなく、あらぬ方向へとねじ曲がり、彼方へと軌道が逸れていく――


罪園はきょろきょろと周囲を見回している。


そう、あいつは俺と影人形を見失った――なぜならば、俺と影人形の身体の表面は「鏡のように変化して、周囲の風景を投影して溶け込んでいる」のだから――いわば、疑似的な光学迷彩。


一念化粧ダブルフェイク】だ。


母さんのユニークスキルは、自身が触れた対象に対して、表面の質感を変化させることができる能力。

可視光線を反射する「鏡」の性質を与えることができれば、罪園のユニークスキルである【月光華セフィラ】のような光線系の攻撃を反射することが可能となるのだ。


いつ、母さんが俺や影人形に触れたかって?

罪園は覚えてるわけないよな――


----------------------------------

「はいっ、いってらっしゃいのキス……ね?」


背伸びして俺の頬に口づけをする母さん。

俺と母さんは密着していた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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罪園は俺のことが好きだと言ってくれた。

俺や母さんのイチャイチャを憎んでいるとも言っていたな。


実の母親が、18を超えた息子に、いってらっしゃいのキスを、毎日の日課にしてる、なんて――罪園にとっては理解不能の行動だ。


そんな記憶、積極的に消したくなるはず。

女心を利用するなんて、卑劣、最低、女の敵と――


「(アキには罵倒されるかもしれないがな。仕掛けてきたのは、罪園……お前の方なんだぜ!)」


俺は鏡の身体となり、全身が光を反射して風景を映し出していた。

その姿は罪園の視点ではダンジョンの空間そのものに溶け込むように見え、輪郭すらも不明瞭となっているだろう。


俺は傍らに影人形を呼び戻す。

影人形を踏み台にすると、それを足場にして跳躍する!


俺と影人形は影で繋がっているんだ。


俺が飛ぶと、影を紐にするように引っ張られて影人形も浮かび上がる。

飛んできた影人形を踏み台にして、再びジャンプ。


空中跳躍――二段ジャンプ、三段ジャンプを繰り返す。

これは罪園相手にはまだ見せていない秘密の技。


「(名付けて――影鬼ステップライドといったところかな)」


――ちなみに、これは「影踏み鬼」の遊びにかけてるんだぜ?


上空では罪園がフライトユニットを駆使して飛行していた。

その銀髪が風に流れ、ぴっちりとしたシルバーのボディスーツが輝いている。


自分が天空の支配者でもあるかのように――だが、その天下もここまでだ!


「影踏み鬼」の遊びは「鬼ごっこ」へとシフトする。

影を踏んで跳躍する勢いをそのままに、俺は罪園に向かって突っ込んだ。


「罪園……つーかまえたっ!」


「きゃあっ!」


影人形と共に罪園につかみかかる!

前後から挟み込むように、二人がかりで拘束した。


一度掴んだからには、離さない――つもり、だったのだが。

少しだけ、予定外の事態が発生する。


「……これが、罪園のスーツ……」


滑らかなスーツの感触が手と腕と胸を通して広がっていく。

素材の冷たさとは裏腹に、次の瞬間、俺は全身が熱くなるのを感じた。


罪園は無表情を保ちながら、か細い声を出す。


「提案します。……その、恥ずかしがるくらいなら……離れてください」


「そ、そうはいかねえんだよ……離したら逃げるだろ!」


密着した身体から伝わる柔らかさから、罪園 リアムの完璧なスタイルが否応なく伝わってくる。特に、胸元のふくよかさが俺の胸板に押しつけられて、存在感をこの上なく主張していた。


くそ……俺は離さないぞ……決して下心は無いし!


「これは、戦術だ……俺がお前に勝つためのな!」


「戦術――!? はっ」


どうやら、気づいたようだな。


罪園の放った必殺技は、必中攻撃。

俺と影人形が鏡のボディとなったことで軌道は逸れたが――そのビームは歪曲して、空中を疾走しながら、ふたたびロックオンした俺たちを狙ってくる。


ビームはダンジョンを破壊しながら、鋭いカーブを描いてこちらに向かってくる。

命中するまで終わらない攻撃――

だが、俺と影人形は「鏡」の性質を得ているためノーダメージだ。


「――――ッ! これを、狙って」


「そういうことだ。

 俺の攻撃じゃ、お前を倒しきれないからな」


俺を狙うホーミング攻撃に罪園自身を巻き込む。

名付けて……と、技名を考える前に。


光の奔流が俺と罪園を貫く。


罪園が背負ったフライトユニットは粉々に砕け散り、まるで墜落する戦闘機のように回転しながら罪園自身も地面に落下していった。


「……罪園っ!」


俺と影人形を狙うビームは消失した――

本体である罪園が意識を失った証拠だろう。


まずい、このままじゃ罪園は受け身を取れない!


「……任せて、リョウちゃん!」


「母さん、頼む!」


いつの間に【一念化粧ダブルフェイク】を発動したのか――


ピンクのツインテールにブルーの瞳、自身のトレードマークを取り戻して、すっかり自称JK配信者に戻った星羽ミハルが参戦する。


母さん――ミハルは、その小さな身体に手を大きく広げて待ち構えていた。

慎重に落下する軌道を見定めているようだ。

その、直後――



ズシン……! と、衝撃音。



空中から落下した罪園の身体を、ミハルは難なく受け止めた。

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