2-11 新たな仲間
すいません、更新遅れました。
拓海が目を開けると、カプセルのそばで待っていた胡桃とアイリスが笑顔で出迎えていた。
隣のカプセルを見ると誰も入っていなく、既に男達は一足先に立ち去っていた。
「やったね拓海! 自分よりランクが上の相手を三人倒すなんてそうそう出来ないよ!」
「凄かったです! 拓海さんはお強いのですね! かっこ良かったですよ!」
拓海は二人の賞賛の言葉に照れながらも応えた。
「二人共ありがとな! でもかなり危なかったよ。まさかあの銀色のオーラを放つだけであんなに体力? を持っていかれるなんてな……。前に試した時はここまで消耗しなかったんだけど……。それはそうと、あいつらは? もういないようだけど」
「あ~、あの三人組? 何か捨て台詞はいて、どっか行ったよ。あの感じだともうちょっかいは出してこないと思う。とりあえずお疲れ様!」
アイリスと胡桃は笑顔で拓海の健闘を褒め称えた。
その後三人が部屋を出ると、少し離れたところに全身銀色の鎧に身を包んだいかにも騎士という格好で顎に生え揃った髭が特徴的な風格がある男が、豪快に笑いながら拍手して三人に話しかけた。
「おぉ、やっと出てきたか。おめでとう拓海君。観客席で君の決闘を見させてもらったよ。中々やるじゃないか」
「ど、どうも。えっと、あなたは?」
褒められて素直に嬉しかったが、何故か自分の名前を知っている男に驚きながら拓海はとりあえず騎士の男に聞いてみた。
「おぉ、失礼失礼! 俺はアストレア聖騎士団の副団長のモーガンという者だ。拓海君、よかったら今度騎士団の訓練を見学しに来ないか? もちろんそちらの二人も一緒で構わん」
「えっと……。じゃあ、一旦落ち着いたら見に行きます」
突然の誘いにとまどいながらもそうモーガンに答えると、騎士団への招待状をモーガンが拓海に手渡して別れた。
モーガンが去っていくのを見送ると、後ろから胡桃が拓海の肩を叩いて振り返ると、胡桃は上機嫌な様子で拓海に笑いかけた。
「祝勝会しよ!」
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その後、祝勝会のためアルカディア城の酒場に拓海達が足を踏み入れると、突然何人か知らない人達が寄ってきた。
拓海は何事かと身構えたが、どうやらそれは杞憂だったようで、その知らない人達は「お前凄いなぁ!格上三人相手に勝つなんてよぉ!」「やるなぁ!坊主!」「これは期待の新星だな!」と皆口々に拓海の勝利を讃えていた。
そんな周りの声に嬉しくなった拓海は思わず笑みを浮かべた。
(なんか、誰かに褒められたのっていつぶりかな……。ちょっと照れるな……)
それから拓海達は空いている座席に座ってそれぞれ飲み物と料理を注文した。
するとアイリスはタイミングを見計らっていたのか、少しもじもじしながら拓海と胡桃に向けて頭を下げて言った。
「あ、あの! 私を拓海さんと胡桃さんのパーティーに加えて下さい! お願いしますっ!」
そんな目を強く閉じて必死に頼むアイリスを見た拓海と胡桃は少し驚いたような顔で顔を見合わせると思わず笑ってしまった。
顔を上げたアイリスはその様子を見てきょとんとしていた。
「ごめんごめん、俺達もアイリスがパーティーに入ってくれないかなって話してたんだよ。歓迎するよ! これからよろしくな、アイリス!」
「よろしくね! アイリス!」
「は、はい! よろしくお願いしますっ!」
感無量といった表情で返事をしたアイリスが拓海達のパーティーに加わることが決まり、改めて自己紹介をして今後の方針を話しあった。
そして今後の方針が決めつつ、三人は雑談を始めてお互いの冒険者の登録カードを見せ合うことになったのだが……。
「ちょっ、アイリス魔力の量も質もS!? あんた達何でそんなに良いの……」
胡桃がアイリスの冒険者の登録カードを見て落ち込んでいるとアイリスが慌てて胡桃に説明していた。
「わ、私はエルフの中でも割と優秀な血筋に生まれたらしくて……でも恥ずかしい話、実際はまだ魔法を上手く扱いきれてないんです……それはそうと拓海さんの魔力の質の方が凄いですよ! SSですよ!」
いまいち実感がない拓海はアイリスに褒められたが疑問を漏らした。
「う〜ん、あんまり実感はないんだけどな……。魔力の質が高いのってそんなに良いことなのか?」
「もちろん良いよ! 魔力の質が高いと少ない量で高度な魔法を使えたり、魔法の威力も上がるし、習得難易度が高い魔法も習得しやすくなるの。質が高いほど良いことは多いんだよ」
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その後、三人は雑談を一時間ほどして依頼を受けるのは明日からと決まり、今日はとりあえず解散することになった。
二人の魔力の質を見ていじけた胡桃は一人修行してくると何処かに行き、アイリスは魔法を上手く扱えるようにと魔法の扱い方について書いてある本を探しに本屋に行くそうだ。
そして、拓海は酒場で父について何か情報がないか聞き込みをしたが、相変わらず有力な情報が得られず拓海は一人テーブルに突っ伏していた。
(はぁ……駄目だ……全然情報が手に入らないなぁ)
疲れた拓海は突っ伏しながら、ふと周りのテーブルでの会話に耳を傾けた。
「なあ最近死の森の付近でモンスターの活動が活発になってるらしいぞ。まあ俺はあんな危険なところ行かねぇけどな!」
「がははは! そりゃそうだ!」
(死の森? どこにあるのかな? 今度胡桃に聞いてみるか……)
拓海はそんなことをぼんやり考えて酒場を後にしてモンスターの素材屋に向かうことにした。理由はただどんな物があるか興味があったからというだけである。
夜のアストレアを散歩して、目的の店に入ると既に誰かが何かを売っていた。フードつきのマントを着ていて顔まではよく見えなかったが、声からしてどうやら女性のようだ。フードを被った女性が拓海の視線に気づくと、拓海に声をかけた。
「どうかした? 私の顔に何かついてる?」
フードを外した女性を見て拓海は思わず見とれてしまった。女性は綺麗な金髪で蒼く透き通った瞳をしていた。元の世界でも拓海はこれ程まで人間離れした美しさを持った女性を見たのは初めてだった。
そして数秒後、女性が首を傾げてこちらを訝しげに見ているのに気づいた拓海は慌てて謝った。
「す、すいません。何でもないです……」
拓海は何故か恥ずかしくて顔をまともに見ることも出来ず、とりあえず頭を下げると女性は不思議そうな表情を浮かべて店を出ていった。その後、結局拓海はそわそわして店内をあまり見ることができないで店を後にしたのだった。




