第3話 (3)オラフさんと-1
初めてのゾンビナイトを終え数日が経ったが、結局カッピーというあだ名をハナさんに変更させることは出来なかった。最近ではむしろ他の人へカッピーというあだ名が広まる一方であり、益々一層変更の機会を失っていった。あぁ、無情なり。それは言い過ぎか。
ベンチに座り、どうにか打開策はないものかと思考を巡らせていると、のっしのっしと聞こえてきそうな勢いで巨体の男が近づいてきていた。
「お〜い、カッピー!難しい顔をしてどうしたんだい?」
「あぁ。オラフさん。お疲れ様です。特に悩んでいたわけじゃないですよ」
僕のことをカッピーと呼ぶオラフさん。「今まさにカッピーと呼ばれることについて悩んでいたんです」とは言えず、にこやかに返事をしてしまった。カッピーパンデミックはオラフさんにまで広がっていたのだ。もう止めることはできない。ここにいる以上、僕はもうカッピーなのだ。
後から聞いた話なのだが、オラフさんの名付け親もハナさんらしい。巨漢のオラフさんのぽよっとした感じが某犬のオラフというキャラクターに似ているからだと言う。僕ももうオラフにしか見えない。
「良かった。もしかしたら、りゅうじん君の事で悩んでいるのかと思って、心配してたんだよ」
「りゅうじん君って、誰でしたっけ?」
流れ出る汗をタオルで拭いながら、オラフさんは「写真を見ればわかると思うよー」と言いながら、スマホを取り出して操作を始めた。そして、オラフさんが腰掛けた途端ベンチが軋むのがわかった。あれ?大丈夫だよな?ベンチ壊れたりしないよな?さっきまであんなに広かったベンチが急に満員電車のようになってしまった。しかし、オラフさんから優しい柔軟剤の香りが漂ってきて、決して不快感はなかった。
ちなみにオラフさんはこんなに巨漢なのに、ダンスのキレが凄まじい。ゾンビとしてもその巨体で恐怖感増し増しである。デカさとは恐怖なのだ。実際僕もゾンビの時のオラフさんと相対すると、その大きさに生物としての恐怖を感じてしまう。蛇に睨まれた蛙状態、いや蛇どころではないモンゴリアンデスワームに睨まれた蛙か?まぁ何でも良いか。
しかし、その恐怖とは裏腹に普段のオラフさんはとても優しい。ゾンビナイトの初日にみんなにクッキーを焼いて配ってくれるのはイベントの恒例となっているらしい。美味しかったなぁ。あのクマの形したクッキー。
オラフさんは「これだよ、これ」と言いながら、ニコニコとした顔で僕にスマホの画面を見せてくれた。こんな小さいスマホがあるのか!と思うなかれ。それはオラフさんの巨大さによる錯覚で、実際は僕のスマホと同じサイズである。オラフさんの魔法のようなデカさに驚きながら、画面を覗き込むと男性がにこやかに笑っている写真が写っていた。幼くも見えるがキリッとした目からは大人の色気も感じさせる、何だか魅入ってしまう顔だった。端的にいうとカッコよかった。
「カッコいいですね。これがりゅうじん君ですか?」
「そう!すごいカッコいいし、普段も良い人なんだぁ。それにストイックで向上心の塊。何と言っても、その人気がすごいんだよ」
「まぁ後で調べてみなよ」と言いながら、オラフさんはスマホをしまった。
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