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ゾンビナイト  作者: むーん
閉幕編

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216/222

第216話 (202)SAYONARA

バタン


「あぁ〜終わっちゃった〜」


 扉が閉まる音がする。私はゾンビ達が帰っていくのをお見送りして、思わずそう呟いた。あぁ、遂にゾンビナイトが終わってしまったのだ。


「ゾンビナイト終わって、オタク達大丈夫か? 生活できてるか?」


「まぁ、後1週間でクリスマスショーも始まるし……」


「Sポテさん、流石に今ゾンビナイト終わったばかりなのにもうクリスマスの話は節操なさすぎですよ」


「Sポテさん、節操なさすぎで……」


「節操なさ過ぎで草!」


「……?!」


 自分のセリフをもじゃに奪われて驚く文子。


「秋が終わっちゃったね」


 私はそう呟いた。門の向こうへと帰っていくゾンビ達を見送った私達。私達3人は喪失感からか、どこにいくでもなくその場にとどまって駄弁っていた。


「千秋楽は悲しいもんですなぁ〜」


「今年はオールナイトまでしてもらって、もう思い残すことはないです。本当にありがとうございました」


「ほ、本当にオールナイトは推しゾンビの写真撮れまくりで最高だったね……」


「Sポテさん、眠りながら写真撮ってましたもんね……」


「酔拳ならぬ、睡撮ってね! 帰ったら撮った覚えのない写真があってびっくりだよ!」


「声出してワロタ」


 閉園時間のため、仕方なく3人が出口へと向かっていると、カルーアちゃんが近づいて声をかける。


「おーい! みんなー!」


「あ、カルーアさん! お見送りはしなかったんですか?」


「うん、ちょっとすることがあってね」


「お、お見送りよりも優先することがあったの?」


「……。はい、ちょっとファンレターを出してきたんです」


「ふーん……」


 ファンレター……。誰宛なのだろうと思ったが、あまり詮索はしないことにした。それよりも……。


「それより、みんなでゾンビナイトお疲れ様会しようよ!」


 私はみんなに提案する。この4人で一緒にご飯をする機会はなんだかんだなかった。みんなで話すときっと楽しいと思ったのだ。


「いいねー、それ! 来年に向けての反省会もかねて!」


「来年……。そういえば、もじゃが推したゾンビは消えるというジンクスあるらしい、知らんけど」


「ちょっと急に何?! 変なジンクス作らないでよ!」


「あははは!」


 私たちは仲良く話しながら、わいわいとゲートを出るのだった。Sポテさんやカルーアさんと、ゾンビナイトが始まった時よりも仲良くなれた気がする。来年までにはもっともっと仲良くなれるのかな。


◆◆◆


「いや〜、終わりましたねぇ!」


「お疲れ様〜!」


「おぉ……闇よ……」


 僕たちはゾンビナイトの出番を終えて、楽屋に帰ってきていた。これが正真正銘の千秋楽。終わりの時である。僕は今日心に決めていることがある。それは……。


——打ち上げだ……!


 オールナイト終わりは果てしなく疲れていて打ち上げに行くどころではなかった。しかし、今日はチャンスだ。何よりも、僕は今日が最終日。見送る会の一つや二つ、きっとあるに違いない……!


「あの、みなさん……」


「あ、カッピーくん! ちょっといい?」


 僕が休憩室のみんなに声をかけようとした瞬間、ビッグボスがやってきて声をかけてきた。


「はい、大丈夫です!」


「ごめんね〜終わったばっかのところ。ちょっとこっちに来てもらえるかな?」


「大丈夫ですけど……ここじゃダメなんですか?」


「そうね、ちょっとこっちに……」


 そう言うとビッグボスは僕を連れて近くの会議室の方へと入って行ったのだった。


◆◆◆


ガチャ


 ビッグボスとの会話を終えて、休憩室に戻るとハナさんどころかダンサー仲間の皆がごっそりといなくなっていた。


「あ、カッピーおかえり〜」


「オラフさん、みんなは……?」


「帰っちゃったよ!」


「帰った……?!」


 信じられない。バイトなり何なりは辞める人がいたら送別会やら何やらあるもんじゃないのか?


「そんな、打ち上げとかしないんですか?」


「そうだね〜、あんまりそういうのないんだよね」


「ハナさん達まで帰っちゃうなんて……」


「あの辺の人たちは明日早くからクリスマスのショーの練習もあるから、ささっと帰って行ったよ」


「えぇ?! そういえばすぐにクリスマスのリハーサルだって言ってたような……」


「僕は特に何もないから、カッピーを待ってようと思って! お腹空いたよー、何か食べに行こう?」


「オラフさん……!」


 僕は思わずオラフさんに抱きついた。あったかい。これが人の温かみというやつだろうか。その後、急いで着替えた僕たちは、二人きりの打ち上げへと向かうのだった。

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