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第203話 (189)リプレイスメンツ

——撒いたか?!


 バックヤードから逃げ出した俺は、カメラを大事に抱えたまま一目散に走って逃げていた。いつのまにかステージから少し離れて、ベイサイドエリアの近くまでやってきていた。


——とりあえずその辺に座って、アップロードしてしまおう。


 そう、ネットの海にアップロードさえしてしまえばこちらのものだ。あとはカメラを奪われようが、なんだろうが……


どんっ!!


がしゃん!


 そんなことを考えながら歩いていると、前から走ってきた人にぶつかった。走っていたのか結構な勢いでぶつかってしまい、2人ともその場に転げてしまった。


「痛っ!! 何よ!」


「ぶ、ぶつかってきたのはそっちだろう!」


 苛ついて咄嗟にそう言い返す。その声でぶつかってきたのが女だと知る。そして、顔を見ると知っている奴だった。


——こいつ、カルーアだ!


◆◆◆


——こいつ、リュウだ!


 探偵さんと別れて、急いでメインステージの方へと向かっていた私に男がぶつかってきた。その男はナイトベアー事件や、私の写真を無断使用したことで有名なリュウだった。久しぶりに顔を見て、怒りがメラメラと燃え上がってきた。そして、ぶつかってきたくせに人のせいにするなんて最低な男。怒りそのままに言い返す。


「ぶつかってきたんだから、謝りなさいよ!」


「謝るのはそっちだろ! あーくそ! カメラも落としちゃったじゃないか!」


——カメラ!


 リュウの言葉を聞いて、私のカメラもないことに気付く。ふと周りを見ると、リトルナイトベアーのストラップのついたカメラが横たわっていた。よし、私のだ。急いで拾い、レンズや動作を確認する。どうやら壊れてはいないようだ。ほっと胸を撫で下ろす。


「ちょっと! カメラ壊れてたらどうするつもりだったのよ!」


「それはこっちのセリフ……」


◆◆◆


 そう言いかけた瞬間、遠くの方で俺を探しているスタッフ達が目に入った。まずい。ここで揉めていては見つかってしまう。


「もういい! 俺は行くから!」


「ちょっと話はまだ……」


ちゃららら〜


 メインステージの方から音が流れるのが聞こえる。今年のゾンビナイトのテーマソングだ。どうやら、最後のダンスが始まったようだ。


「あ……!」


 カルーアがその音に気を取られる。走っていたのはショーに急いでいたからなのか。


——よし! 今だ!


 俺はその隙にカルーアの元から足早に離れた。少し行った場所にしゃがみ込み、カメラのデータを確認する。あの映像を投稿すればバズるのは間違いない。これでトップインフルエンサー様の仲間入りだぁ! しかし……


——あれ?! データがない?!


 そこには先ほど俺が撮影した不可思議映像のデータはなく、リトルナイトベアーや囚人ゾンビの写真が大量に保存されていた。そのどれもが自分が撮影した覚えのないものであり、数秒首を傾げていた。


——これ、俺のカメラだよな?


 横にぶら下がっているリトルナイトベアーのストラップを見る。確かに、自分のカメラにつけたものだ。しかし、よーく見ると細部の傷や汚れが自分のものではないような気がした。


——まさか、カルーアのカメラと入れ替わったのか?!


 間違いない。カルーアが囚人ゾンビを推していた投稿を見た覚えがある。これはあいつの推しゾンビの写真だ。ということは、俺のバズ確映像を収めたカメラはあいつが持っているということか。


——返せっ、俺のバズを!!


 俺はそう心で叫びながら、先程カルーアがいた場所へと引き返した。

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