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第14話 (14)確かめたい。

「ねー、最初だけ出てこなくて後々復活するとか過去に例あるかなー」


「ない(震え声)」


「ないのかー」


 文子の写真整理が終わり、歩き出した2人。文子が今日重点的に写真を撮りたいと言うゾンビがいるエリアへ向かう途中、何やら男性2人の揉めているような声が遠くから聞こえてきた。


「この声、Sポテさんじゃない?」


「え、待って。この声Sポテさんなんだけど。Sポテさんと言うことに気づいて横転」


「横転してる場合じゃないよ!ちょっと行ってみよう!」


 もじゃと文子が向かった先では、大柄の男性2人が揉めている様子だった。1人は先程までニコニコと2人と話していたSポテトさんで間違いなかった。あの笑顔は面影もなく、今は怖い顔で口論を繰り広げていた。


 どうやら、ゾンビの出てくる門の前で場所取りしているうちに、近くの人と揉めてしまったようだ。数人はその様子を気にしていて、スタッフを呼んだ方がいいのではないかと慌てていた。しかし、大きなカメラを持ったUPJオタクたちは、こういうことに慣れているのか、冷静にスマートフォンをタップして時間を潰している。


「Sポテさん、大揉めで草」


 実際こういうオタク同士の揉め事は少なくない。特に人気の高いゾンビナイトの季節は人が増えるため、それだけ揉め事は多くなる。しかし、Sポテトさんが何故揉める事があるのだろう。


「だーかーら!何度も言ってるだろ!埒があかないな!」


「怒鳴らないで下さい。話を聞いて」


「うるさい!お前女の子の前だからって正義面するんじゃねぇよ!Sポテトだか何だか知らないけど、調子乗ってんじゃねぇぞ!」


「別に女の子の前だからってわけじゃないですよ!公式から荷物だけでの場所取りは禁止されてるでしょう」


「ちょっと離れてただけ。ハンカチ置いてたんだよ!ハンカチ!」


「だからハンカチだけで場所取りは公式で、、」


「ごちゃごちゃ五月蝿いな!ハンカチ置いてたんだ!」


「落ち着いて話を、」


「そもそもお前のその服装は何だよ!ゾンビと同じような、勘違いされる格好はダメなんじゃないのか!」


「僕のこれは違うんです。スタッフに確認して、OKもらってますから。あなたのハンカチとは、訳が違う」


「もういい。はい!この話おしまい!ハンカチ置いてたんで、俺はここで出待ちさせてもらうから」


 もじゃは思わず笑ってしまった。いい年した大人が、ハンカチ一枚置いてたから俺の場所だなんだと騒ぎ立てている。なんだそれ。完全に常軌を逸している。自分より一回りも二回りも上の世代の人たちが、ハンカチ置いてたんだなんだで揉めている姿なんてこの世で最も見たくない景色の一つだ。


 そもそもハンカチ置いたからって何なんだ。ハンカチ置いたから自分の土地になるなんて、地面師が聞いたらびっくりである。彼らもいろいろな書類を偽造したりしてやっと、自分の土地と詐称しているのに。ハンカチ置いただけでいいなんてお手軽である。


「あなた、麻婆さんですよね?前もこういう場所取りをして、SNSで問題になってましたよね。スタッフさんを呼べばどちらが悪いか一目瞭然ですよ」


「どうされましたか?」


 どこからか女性の声がした。どうやら騒ぎを聞きつけてスタッフさんがやってきてくれたようだ。良かった。これでこの場はうまく収まりそうだ。しかもこの人よく見る、しっかりと場を仕切るタイプの女性スタッフだ。UPJオタクの中では、この人のことをボススタッフと呼んでいる。


「う。い、いや何でもないです。僕はもう行くので。では」


 ボススタッフの到来で、具合が悪くなったのか麻婆さんは急にそそくさと場を後にしたのであった。ボススタッフ恐るべし。しかし、麻婆さんはSポテトさんに近づき、お前覚えとけよ、と呟いて去っていった。


 かくして、ポテトと麻婆の争いは終止符が打たれた。それにしても米国的な料理であるポテトと中国料理の麻婆の争いとは。ウルパー内の米中関係は最悪のようだ。


「うぅ。Sポテトさん、ありがとうございます」


「いや、いいんだよ。変なやつに絡まれて大変だったね」ニコッ


 どうやら、あの女の子の場所を難癖つけられて奪われそうになったのをSポテトさんが守ってくれたようだった。よっ、我らの治安維持隊長Sポテトさん。


「ウルパーには頼りになる近所のおじさん的存在がいるんですよ。Sポテトさんっていうんですけど」


「TKちゃん、嬉しいんだけど、おじさんはやめようか。僕まだ30になったばかりだし」


「30はもうおじさんなんじゃ?」


「え?!もじゃちゃんまで?!えーそうかなぁー」


「Sポテトさんがおじさんなの解釈一致すぎてww」


「おじさん、おじさんって言うな!そんなに老けてきてるかなあ」


「あはは!冗談ですよ!気にしすぎです!」


 Sポテトさんと談笑しながら、ふと考える。麻婆さんが今後変にSポテトさんに絡んでこないといいけど。あの人、前もSNSにネチネチと色んな文句を言ってたからなー。


「もじゃちゃん、心配ありがとう。でも、体格では負けないし、正義はこっちにあるんだから大丈夫だよ」


「かっこよすぎワロタ。惚れた」


「惚れたって照れるなぁ。あっ、後10分でゾンビが出てくる時間だ!」


「麻婆のせいで予定が狂った。推しの出待ち出来ないとか無理なんだけど」


「あ、文子ちゃん!急に急がないで!じゃあ、Sポテトさん!また今度!」


 Sポテトさんに手を振り、文子を追いかけるもじゃ。文子達と一緒にいると慌ただしく、推しを喪失した寂しさが紛れるようだった。


〜〜〜


「はぁ〜」


「どうしたんですか?ビッグボス」


「さっきも場所取りがどうのってお客さん同士で揉めてて注意しに行ったのよ。まだ始まったばかりなのにこのトラブルの量。先が思いやられるわ」


「いやぁ〜。大変ですねぇ」


 他人事のように返事をするタテノくんに対して、ピリッとした空気を出すビッグボス。


「タテノくん、後で話があるわ。ちゃんとゾンビナイトやショー時のルールについて教える必要がありそうね」


「え?!後でですか?今日はちょっと…。あ、明日ならちょっと時間あります」


「なら、明日」


 そう言い残すと、ビッグボスは去っていった。知らない間にビッグボスの地雷を踏んでしまい、残務が生じてしまったことを後悔しつつも、何が悪かったのかわからないタテノくんは、先ほどのビッグボスの如くため息をつくのであった。


「はぁ〜」

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