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第12話 (12)造花が笑う

「カッピー!おつかれさんだねぇ。この間は大変だったんだって?」


「ハナさん、お疲れ様です!大変って何のことですか?」


「シャクレ野郎のイベントに強制連行されたんだろう?可哀想に。よしよし」


 野郎呼ばわりされるシャクレさんに笑いつつ、ハナさんに頭を撫でられて少しドキドキしてしまった。ハナさんは異性に対しても距離が近いので少し対応に困る。本人に他意はないのであろうが。しかし、確かになんかいけ好かない雰囲気があったよなぁ、シャクレさん。


「シャクレ野郎って!シャクレさん、元々UPJに居たんですよね?すごい先輩面してましたよ。ハナさんはシャクレさんと時期被ってたんですか?」


「被りも被ってイツメンって感じだったよー。まーったく仲良くはなかったんだけどねー」


 ハナさんが仲良くないとなると、よっぽど敬遠される人物だったんだなと思った。私だって誰彼構わず仲良くするわけじゃないんだよ、とハナさんは笑いながら話していた。ほう、そうなのか。ハナさんなりに線引きがあるんだな。


「そういえばシャクレさん、何で辞めちゃったんですか。やっぱり後進の育成に回る的な感じなんですかね?」


 歴を重ねたダンサー先輩方は裏方に回ることがあると、オラフさんに言われたのを思い出しながら、ハナさんに何気なく聞いてみたら、驚くべき返答が返って来た。


「辞めたー?カッピー、何言ってんだー!クビになったんだよ、クビ。まごう事なくクビ。全くもって完全なるクビだったね」


ーーえ?クビ?!なんか自分で退いた感じだったのに!


「クビ?!何でですか?よっぽど問題を起こすとかじゃないとクビになんてならないんじゃないんですか?」


「んー。私は全容を知ってるんだけど、あんまりカッピーに知って欲しい話でもないし、何よりめんどくさいから話しませーん!」


「何ですか、それ!そう言われるとすごく気になる…」


「まぁまぁ、そんな勿体ぶる様な大した事じゃないし、シャクレ野郎も大した人間じゃないし、カッピーに何の関係もない事だから、いいじゃないのー。だめよ〜ダメダメ。って感じでね」


 なんだ?何かのギャグだろうか?あとで調べてみよう。ハナさんはカッピーには伝わらないかー、と言って恥ずかしそうに頭をポリポリと掻いていた。


「私もあの野郎が気に食わないとはいえ、いないところで陰口を叩くみたいにしたくないのさー。シャクレ野郎が善か悪か、丁か半か、のるかそるか。カッピーが自分で決めたら良いのさ」


 成程。ハナさんのこういうところは本当に信用できるところだなぁと思った。またあの人に会うことがあるのかもわからないが、会った時に聞いてみるか?まぁ聞かなくてもいいんだけど。そんなことを考えているとハナさんが僕の顔をヒョイっと覗き込んできた。


「これも陰口みたいになっちゃうかもだけど、シャクレとかココロのダンスチームまさか入る気じゃないだろうね?」


「安心してください!僕は入りませんよ!」


 某パンツ姿の芸人の如くポーズを決めたが、ハナさんはクスリともせずに僕の方をじーっと見ていた。あれ?これはお気に召さなかったのか?


「ならいいんだけど。あんまり良い噂は聞かにゃーからねぇ。あの辺の集団は」


「そうなんですか?何か良くないクスリをやってるとか?」


「流石にそこまでアウトローじゃないわ!多分。物販とかやってただろう?チェキやら缶バッチなら」


「やってました!1,000円とかで結構するもんなんですね、あれ。僕が見た時でも列ができて、チェキ撮ってる人それなりにいましたよ」


「それもあんまり良くないと思うんだよねぇ。パークで宣伝して、ライブハウスに引き込んでって。結構グレーなことしてるなーと思うのさ」


ーーと言うとハナさんは椅子に座り、両手を足の間に挟んだ猫の様な体制で上目遣いで僕の方に向き直した。確かにハナさんの言っていることもわかる。パークでのショーを自分の宣伝に使っているのは、少し違和感を感じるところはある。でも、それで魅力を感じ取った人がいるのならばイベントに足を向けるオタク達を一概に批判することも出来ない様な気もしていた。双方の推し推されるが合致してれば、仕方ないことなのかもしれない。あれ?これ以外に難しい話か?頭が痛くなってきた。


「まぁ、それはそうだねぇ。でも、アイツらはランダム商品で詐欺してるんだよ!ダンスチームのメンバー数人の顔写真缶バッチがランダムで買えるやつ、わかるかい?そのランダム商品で人気の子を少なめにして、オタク達にたくさん買わせてるように仕向けてるのさ」


「そ、そんなの。して良いんですか?てか、何でハナさんはそれを知ってるんですか?」


「何を隠そうシャクレ野郎本人がそうやって稼ぐんだよって吹聴して回ってるのを聞いたのさ!私はアイツに怒ったこともあるんだよ!」


 つまんない話しちゃってごめんね、と言ってハナさんは手を合わせて僕の方に拝んできた。大丈夫ですよ、と言って僕もハナさんに向いて拝み返したのだった。


「ま、そう言う一味にカッピーに加わって欲しくなかったから、ちょいと口挟んでしまったのさ。すまんねすまんね。老婆心じゃったのじゃよ」


ーーと言いながらハナさんは、老婆の如く背筋を丸めて歩くそぶりを見せた。


「それにもしココロのやつのグループに入ってたら、使いっ走りにされてたと思うよ。テイのいいパシリだね。新入りっていうので雑用係が欲しかったのさ。あいつ、道具運ぶのが大変とか最近言ってたしね」


「え?!そうなんですか?酷いなぁ。君のダンスには光るものがあるって言っててくれたのに。ショックだ」


「カッピーのダンスにあるのは、ミスだけだからね。無駄な話するなら緊張しいとミスを治すことだね!」


 そう言ったハナさんに背中をバン!と叩かれた。カッピーが血迷ってなくて一安心ってとこだね、と言ってハナさんは笑いながら去っていった。


 ハナさんとおふざけ少なめの話をしたのは、初めてかもしれないなと思いながらその後ろ姿を眺めていた。ハナさんなりに心配してくれていたのかな。


 先ほどハナさんが見せた、いつもと違う造り物の様な笑顔が気になりながらも今日のダンスでミスしない様に練習をする真面目な僕であった。あ、間違えちゃった。集中、集中!

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