作戦を聞きました。
過去を改変された。
ソレも、まさかの形でだった。
「まさか、そーゆー手法を取ってくるとは・・・・」
「長よ。我が思うにコレは・・・・・・世界の意志」
「主人公補正って奴だよ・・・・・・クソッタレが」
僕は思いっきり、忌々しい想いを拳に乗せて大木に叩きつけた。
痛みで怒りの感覚を和らげながら、僕は改めて今後の展開などを再演算する。
どのみち碌な結果にならないことだけは確かだった。
――どこぞのクソ神がしたことは世界の変更、らしい・・・。
僕らが潰したダンジョンは別のダンジョンに置き換えられ、潰れたジャウール教はダンジョン事計画も復活し、見事ストーリールートに入りましたとさ。どこぞの救世主もビックリな復活方法だ。きっとジャウール教徒らはゲームでもしてるに違いない。
「ゴキブリも神の力が後ろにつけば怖いモノ無しだと?めんどーくせーなー」
ジォスがイライラしている声音で呟く。
「ならばソレはもうゴキブリではないのでは?」
アンプログリッツが軽口を返しつつも、目の前の光景に理解が追い付いていないようでチラチラと眼があっちやこっちやに行っている。
あまりにも強引で理不尽な展開に僕は手短にあった小石を蹴り上げる。
「クソッ!・・・・・・・・まさかそんな手でストーリに無理やりに直結させようとするなんて・・・。ん?・・・・・・ストーリー・・・・・・・」
「アッ!キルエル!!今ってもしかして――――ッ!!」
苛々する僕の脳裏に何か違和感が出現し、ソレと同時にジォスが声を上げる。
そうだそうだ。・・・僕らがぶっ壊したダンジョンは復活し、中に居たジャウール教徒も復活。でもって今さっき見たダンジョンから出てくるモンスターの群れ。
以上の要素から導き出される答えはただ一つ。
「クソッ!クソ神ィ、ダンジョン変更だけじゃなく、時間も進めやがったなぁッッ!!!」
「お、長・・・・」
僕は思考を急加速させながら、ジォスに命令する。
「ジォス、ガラシアのギルドまで飛んでくれッ!!やらなきゃならねぇ事があるッ!!」
「やるべきこと・・・?」
「あぁ・・・・・」
僕は頷き、ダンジョンから遥か遠い場所にあるガラシア王国を見据える。
「絶対にあの裏切り者、売国クソ野郎を見逃しちゃいけねぇ・・・・!!」
S S S S
ジォスの座標移動?座標の移し替え?で、ガラシアのギルドに転移した僕らは早速外で右往左往していたノゥアを見つけた。
「ノゥア」
「え・・・わっ!ひゃぁ!!驚かさないでよぉ・・・・。じゃなくてッ!探したんですけどぉッ!!」
「おっと危ない」
こちらに一向に気づかないモノだから後ろから肩を叩いたら、反射で右が飛んできた。なんなら罵声も飛んできたまである。右ストレートは回避できたが罵声はもろに受けた。くッ!やはり全体攻撃は強い・・・!!
耳元で怒鳴られ、一瞬ひるんだ隙を狙われたのだろう、気が付けばノゥアが僕の腕をがっちりとホールドしていた。
「とりあえず見つけたからヨシッ!さぁ行くよキルエル君!」
「え!?あ、ちょまッ!歩けるって一人でぇッ!!」
「あ、キルエルが捕まった。俺も追いかけるしかねーッ!!」
「誰だあのキルエル似の女性は?キルエルの姉・・・いや妹か?何にせよ我を無視しないでサクサク行かないでくれないかッ!?」
強引に引っ張られていく僕を後ろからジォスとアンプログリッツが追いかけてくる。
このまま僕はノゥアに連れられどこに行くのか・・・?
答えはもう知っている。
ギルドである。
S S S S
「時間だ!有志の冒険者諸君、良く集まってくれた!」
数百人の冒険者がひしめくギルドの中で、響き渡る程の大声がギルドの最上階から発せられた。
「私はこのガラシア城下町のギルド長を務めている者、カスタマー=アルミニウムだ!今から対・大規模侵攻『狂乱暴徒』鎮圧作戦の内容を説明する!」
僕はその大声を聞きながら周囲の人混みに目を向かせる。
辺りを見回して1分もたたないうちに、僕は人混みの奥の方に見覚えのある顔があるのを見つけた。
―――レイブン=エバーズ。
あの中二病になり切れていない半端者が居ると言うことは、その近くに勇者パも居ると言う事だ。そしてその奥に見えるのは―――、
気が付けば僕は音にならない程度の舌打ちをしていた。
「・・・ッ」
「?・・・・ぁー」
僕の小さな苛立ちにすぐさま反応するジォスも、僕の視界に映っている人間を確認すると「うへぁ」みたいな顔つきになった。心なしかミミズみたいな顔をしている。
僕らの視界の先にはレイブン(はどうでもいいとして)、その先に居るシスターが居る。緑の眼に桃色の髪。健全なノンケ男子なら誰しもが目を奪われちゃうだろう美貌を持つ女性、誰でも簡単に作れる環境型害悪パ筆頭の英雄創聖教の聖職者、ナイアシンだ。
そういえば、と僕は思い出す。
ゲームではナイアシンが『煉獄鳳凰堂跡地』で寝泊まりできる隠し部屋を作っており、日々モンスターの生態や魔法の錬磨をしており、ソコを勇者パに見つかったのだが、ナイアシンの猛アプローチに勇者が即落ちして仲間に加わった・・・・、そんなところだった。ナイアシンは陰で努力するタイプの人間なので目立たないように黒装束でダンジョンを行き来していた。ソレがアンセムの言っていた、「不審者目撃情報」の正体である。
今になって思い出した僕は表情に難色を示す。
どうにもこうにも勇者パは僕の逆鱗に触れるメンバーで構成されているため、ナイアシンもそのうちの一人である。だから例外なくゲーム進行中に僕の邪魔をしてくる人物でもあるのだが、やはりこのキャラも後々にキルエルによって粛清されるので将来的な目で見れば全然大したことはない。
だが、今この瞬間を重視するならば地獄と言っても過言ではない。むしろ地獄は薄味である。
「アイツは・・・、チッ、人が多すぎるな・・・・」
アンプログリッツもまたナイアシンを捉えたようで、ボソッと暗殺とも捉えられる物騒な発言を噛ます。コイツもナイアシンは嫌いなようだ。ナカマァ―――!
ちょっと同族の香りのするアンプログリッツに好意を抱いてしまった・・・。あぶねぇあぶねぇいくら何でも上司×部下のオフィスラブはアカンってばよ・・・・。しかも健全な無生物性愛者とキチガイ寄りの中二病患者の熱い純愛なんて、この世界は何処まで突っ走れば気が済むんだ?って話だ。もう既に迷走してるのに・・・・・。
「―――であってして、私を含めたAランク、ギルドが斡旋したBランクの冒険者は私と共に『狂乱暴徒』発生元を叩く。その他の冒険者はそれぞれ、モンスターの進行方向に塞がり、迎撃を行ってほしい。詳しい手順についてはその場にいる王国騎士団やギルドの教官が指導してくれる。ソレでは、各々の冒険者よ。今こそ力を合わせて大規模侵攻を食い止めよう!」
カスタマーが握りこぶしを掲げて冒険者に激励を飛ばす。
「「「「「オオオオオオオオ―――――――――――ッッ!!!!」」」」」
その圧倒的な鼓舞に胸を打たれ、ギルド内の全ての冒険者が拳を掲げて大歓声ともなりえる大声を上げた。筋肉によって肺活量とヘルツが常人と比べモノにならない程大きいのだが、ソレが数百人の口から出ればソレは最早音響兵器の一種である。レベルが高いと足の速さが音速を越えると言う、現実的らしい解釈を用いるならば、レベルが100を超える冒険者はおそらく吐く息の速さは音速に達しつつあるだろう。レベルが500とか1000を行く者なら意識して声を発するだけでソニックブームが巻き起こる。
だがソニックブームが巻き起こらずとも、ギルド内の全てを激震させる轟音は物理的にも精神的にも冒険者の闘志を鼓舞するモノだったのは確かだ。
多分この数百人の冒険者の中に『咆哮』を持ったキャラが複数名いるのだろう、ほんの数mしか効果範囲のない『咆哮』がギルド内の冒険者全てを包み込んでいるのだから。その影響は僕らも同じであり、何故か何のバフもかけた覚えのない僕らから力が溢れている様に感じる。勿論熱気も感じる。周囲からだが・・・。
「『咆哮』持った男が61人居るなー。女の方は全く分からんが、男でこれくらい居るってことは女でも持ってる奴30人くれーいそーだよな」
「スキル『咆哮』か。複数名いるのに沸き上がる力はこの程度・・・。恐らくは重ね掛け、重複が出来ない部類のスキルだろうな。ソレにまるで元々の力を基盤としている増強。・・・・外部的な力の注入ではなく内部の魔力を活性化させているのか・・・・?」
ジォスの謎過ぎる原理によって『咆哮』所有者を明かすと、その言葉を聞いたアンプログリッツがスキル『咆哮』を推論だけで限りなく現物に近い結論を導き出した。
あまりの正確さに僕が違和感を感じるも、悠長なことを考えている暇は無かった。
「その他Bランク、Cランク以下の冒険者はそれぞれ掲示板に張っている名簿を確認して迎撃地区に移動すように!相手は群れだ!決して一人での独断行動は避けるように!他の者の肩を借りて守りながら数を減らすのだ!」
カスタマーが最もらしいことを言うたびに、ギルド内の士気が高まり、冒険者が次々と行動を起こしていく。雪崩のように、人波がどっとギルドから出て行った。一瞬だったが勇者パも出ていくのが見えた。
「どーするよキルエル。あのナイアシン生きてても碌な事しねーよ絶対」
「長よ、命令あらば我が事故死と見せかけて処理します」
「脈絡は分からないけど、私もキルエル君の敵を抹消するのは賛成かな~」
「うn・・・・・ちょっと待った!物騒過ぎるだろアンプログリッツ!ノゥアもノらないでください!」
頷きかけた僕はすぐさまぶんぶんと首を振って、ナイアシン処理作戦を却下する。そしてジォス、何お散歩感覚で手から小型太陽だしてんの!?ソレで一体何をする気なんだッ!?
目が完全に勇者パの方向に向いているジォスの首根っこをひっつかんで現実に回帰させ、僕は威厳もクソもない『百鬼夜行』のリーダーとしてジォス等に今後の行動の方針を話す。大事な時に居なくなるのがウチのパーティメンバーの悪点だ。居ても居なくても迷惑かけるのがウチのパーティのモットーだからこそ、今後そうならないように今のうちに経営方針の改定を知らせなければならない。
「皆、僕らは今から『狂乱暴徒』の裏をかく。だから各自で勝手に動かないでほしい」
「何故俺を見て言うんだ・・・・」
「ジォスが一番の無法者だからだよ」
「そんなッ!・・・・こんな健全な一般的善良紳士なこの俺が、無法者だと・・・・!?」
ジォスが僕の言葉に膝を折る。何故自覚が無いのかは今更気にするのも無駄だと分かっているため、聞かないことにするが、アンプログリッツとノゥアがうんうんと頷いていた。いや、君らにも言ってるんだよ?
「お、お前らまで俺が無法者だと・・・・・・」
ジォスが疑念と驚きを含んだ表情と声音で尋ねる。二人は即答で頷いた。狂い無き眼である。
「否、無法者と言うよりも異分子と言った方が合っている」
「ジォス君は無法者と言うよりかは人間らしさが溢れてて一人で渋滞を起こしているの。世紀末野生児過ぎて関わるのがおっくうになることがしばし」
「そ、そんな・・・・・嘘だろ。こんな健全な男子している俺が、異常者だと・・・・。俺にはお前らの方が異常者だ・・・・」
ジォスはわなわなと肩を震わせながら、捨てられた子犬の如き眼差しで此方を見てくる。どうやら慰めて欲しいようだ。コッチ見ないでいただきたい。縄で縛りたくなってしまう。
僕はジォスの慈悲を求める視線を鏡で反射しながら續木の言葉を口にする。
「だから、ギルドの言葉には従わない。・・・・・今さっきの指示に従えば、必ずと言っていいほどの高確率で、ガラシアが壊滅的な被害を受けることになる」
僕の真剣さが伝わったのか、ジォスもごくりと息を飲む。
「今回の件は僕ら『百鬼夜行』の動き次第で全てが決まる。だから皆、僕の指示に従ってほしい。正直僕だけの力じゃこの事件を片付けることはできない。皆の力が必要なんだ。ジォス、アンプログリッツ、ノゥア、君らの力を貸してほしい。――――お願いだ」
いくらパーティのリーダーだからと言って、無理矢理メンバーを使う訳にはいかない。
僕のモットーの1つは「親しき中にも礼儀あり」だ。例え偉い立場でもモノを頼むときはお願いの態度で―――。
そんな僕が深々と頭を下げると、優しく肩を叩かれた。
顔を上げると、朗らかな微笑みを携えたノゥアが僕の顔を覗き込んで言った。
「キルエル君からのお願いだもん。断れる訳、無いじゃん?」
「―――」
「だから、――――良いよ」
彼女はスッと表情を引き締め、後ろを見る。
ソコには同じくして澄んだ顔をしているジォスとアンプログリッツが居た。
「理由なんて言わなくてもいいよ。・・・・私たちはキルエル君を信じてるから此処に居るの。キルエル君の判断が間違ってるなんて思ってない。もしキルエル君の行動が間違っていたとしても、私たちがキルエル君を信ずる想いは間違っていない」
「・・・・」
「だから、ありがとう。私たちを頼ってくれて――――」
「」
ひと呼吸を置き、ノゥアは両手で僕の肩を摑む。強くつかまれているが逃げようとすれば逃れられる状態だが、僕はその信頼の籠った手から逃れる術を知らなかった。
僕とノゥアの視線が交差する。ノゥアの瞳には僕の顔が映っていた。キルエルの顔なのに、やけに僕の心を形どった表情をしていてた。
僕の心なんてお見通し、と言わんばかりにノゥアがまっすぐな視線を僕に向ける。
「だから、手伝ってあげるんじゃない。―――――手伝わせて!」




