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ゼリリン、慈善事業を行う



ギルドを出て鍛冶屋へ向かおうとしたが、日も暮れてきたので目的を変更して宿を探すことにした。

鍛冶屋は明日でいいや、別に急ぎでもないしね。

装備とかは時間をかけてじっくり見たい。


それに冒険者ギルドで大量の低級ポーションも購入したし、わんわんの傷を癒す時間も欲しいってのもある。

今後の事を考えて金貨50枚くらいで100本買ったので、そうそう尽きることはないだろう。


ちなみに、休むだけなら教会に居座っても文句は言われないと思うけど、なんでもかんでも人に頼ってはダメだ。

勇者という特権を乱用する気はないのだ。


と言う事で、攻略本を片手に宿を探し回る事にする。

まずは1軒目。


「おじゃましますー」

「おや、どうしたんだい坊や。教会のお使いかい?」

「えっと、宿に泊まりにきました。空いてますか?」


恰幅のいいおばさんがやっている宿だ。

店内も綺麗だし、ここはいいんじゃなかろうか。


「あぁ、お客だったかい。だけど悪いねぇ…… さっきのお客で部屋はうまっちまったよ」

「ほむほむ、そうですか。それじゃ別のところいきます」


ふむ、満員ならしょうがない。

次いこう次。


ということで2軒目。

次の宿は酒場を兼用したところのようだ。

宿のステージで、大人のお姉さんなんかが踊っていたりする。


「おじゃましま……」

「あぁん!? ここはガキの来るところじゃねぇぞ!!」

「おおぅ……」


次は年齢制限っぽいのに引っかかったようだ。

次いこ、次。


そしてその後も3軒目、4軒目と当たったが、結果は惨敗。

この時間帯になると冒険者が一仕事終えて帰ってくることが多く、なかなか宿を取る事ができないようだな。

しかたない、こうなったらどっかの孤児院にでも潜り込もう。

数日間くらいなら邪魔にもならないだろうしね。


もちろんタダで泊めてもらうのではなく、ちゃんと寄付をお礼代わりに渡すつもりだ。

「教会から孤児院への寄付です」とか言っておけば信じてもらえるだろう。

着ている服も教会のものだしね。


ただ孤児院はスラム街に建っているらしく、治安が悪い。

いきなり多額の寄付金なんかを渡されても扱いに困るだろうし、最悪スラムの連中に孤児院が襲われかねない。

ここは食べ物なんかを買ってお礼として渡すのがベストだ。


そうと決まればまずは買い出しだ、俺の金貨300枚が火を噴くぜ。



買い出しの決意を固めてから30分後、俺は孤児院を目指していた。

最初は意気揚々と買い集めていたのだが、買っているうちに店主のオヤジに言いくるめられ、食べきれない量の食料を購入してしまった。


店主は俺がただのお使いではないと悟ったのかなんなのか、言葉巧みに俺を誘導し、最終的には金貨5枚分の食料を購入させられてしまったのである。

日本円にして50万円である、そんなん持ち切れるわけがない。


収納を使えば一発だが、一般人の目の前で使うわけにはいかないので、とりあえず荷台を貸してもらった。

この店主、やり手すぎるだろ……


荷台があるとはいえ、あまりにも量が多くどうみても5歳児が引いていける大きさではない。

しかしあんまりウダウダしてるとまた何か購入させられそうだったので、俺が自分で引いていくことにした。

もちろんすぐに人気のないところに行き、荷物を収納するのは忘れない。


そして現在、だらだらとスラム街を散歩しつつも孤児院を目指しているってわけだ。

途中で栄養失調っぽい子供やその家族をよく見かけたので、食料を小出しにして分けてあげた。

こんな膨大な量を持っていくわけにはいかないからね、ちょうどいい消費口だ。

しかも俺の収納は時間が止まっているわけでもないし、ずっと亜空間に入れてたら食べ物は腐るんだよね。


もちろん渡す時は亜空間から取り出すわけだけど、スラムの人たちに小分けして渡せば隠し持っていたってことで説明がつく。

ふむ、完璧な作戦だ。

ついでだし、傷や病気にかかってそうな人にはポーション渡しておこう。


……そして謎の慈善事業を開始してしばらく、だらだらと孤児院を目指す俺の周囲には護衛が誕生していた。

数人の少年少女が、俺を守るように囲っているのである。

まるで小さめの大名行列だが、どうしてこうなった。


「あの、あんまり近くで歩かれると歩きづらいよ……」

「いけません若、ここはスラム街なのです。若の奇跡の御業を狙って、いつどこで野盗が現れるとも限りません。ここは俺たちに守らせてください」


そう語るのはさきほどポーションで傷を癒した少年その1。

そもそも若ってなんだ、俺はゼリリン5歳だ。


「そうだよ! お兄ちゃんはわたちがまもる!!」

「あ、うん。君はもうちょっと大人になったらお願いしようかな……」


この子は最初のほうに食料を分けてあげた女の子その1。

見た目は3歳ぐらいである。


「おいお前ら! なんとしても若を守れ! このお方は俺たちの救世主だっ!!」

「「わぁぁあ!!」」


なんか始まった。

戦争でもおっぱじめる気か。


どうやらスラムの人たちをノリで助け続けてしまったせいで、スラムの少年少女が信者になってしまったらしい。

8~10歳くらいの少年が二人に、同い年くらいの少女が一人で、最後に3歳くらいの少女が一人だ。


まあ孤児院につくまでの間だけだろうし、変な奴に絡まれにくくなるだろうから別にいいか。

そうして攻略本さんの案内を受けてしばらく、孤児院にたどりついた。



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