04 混乱と治療
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「らぁ!」
痛んだ木製のドアを蹴破り、アルバスは森奥の家に駆け戻った。
「頑張れ! 頑張って! お願いだから!」
少女をベッドへと下ろし、三角帽子を投げ捨てて薬棚へと走る。
ここに運んでくるまでに少女の角の光も弱くなっていた。時間はもうあまり残されていない。
「薬草包帯、布布布! ああもう人の怪我とか治した事無いよ!」
今まで採取してきた薬草、それを煎じて作った薬、いつかのために取っておいた清潔な布。
ぼろぼろの棚からそれらをひっくり返してアルバスは少女の元へ走り戻った。
頭は焦りと混乱の極致だ。自然と口から言葉が溢れ出す。
「どうする!? まずは体を拭く!? いや包帯!? ああもう全然分からないねぇ!」
大怪我をした鬼を助けるのにどうすれば良いのだ?
四肢は歪に曲がっている。至る所に裂傷があって、傷口からじんわりと血が流れベッドを汚している。
少女の生存を証明しているのは魔素を吸い、ホウホウと淡く光る白い角だけだった。
その輝きも弱くなってしまっている。鬼にとって角の光は生命力の証明だ。この光が消えた時がこの少女の最期だ。
アルバスは息を詰まらせ、白髪を掻き上げた。
時間は無い。焦りが募る。けれど、考えなければ、今ここには自分しか居ないのだから。
「……落ち着け。考えろ、考えろ。まずは何をどうする? まず、僕には何ができる?」
とにかく、できる事をやるしかない。今自分が何とかしなければ少女は死んでしまうのだ。
「そうだ。医術書だ。それを見るんだ」
アルバスは手製の粗末な本棚からこの家にある唯一の医術書を取り出し、バラバラと捲る。
町で買ったボロボロの医術書だ。内容も簡単で、ちょっとした薬草の知識と、包帯の巻き方などしか書かれていない。
少女は本当なら医者や治療魔法を使えるマギアに見せるべきだ。それくらいの大怪我だ。
しかし、町は十数里先で、ここから連絡する術も無い。それに彼らは狂鳴の森になど来てくれないだろう。
「僕がやるしかない」
医術書を片手にアルバスは深く息を吐いた。
この少女を助けなければと思ったのだ。そう思ったのは自分なのだ。
ならば、助けなければ。
「……まずは清潔な布で体を拭く」
肩が震えている。足元の感覚も無い。それでも、アルバスは医術書の一節を読み上げ、布を手に取った。




