ドラゴン、喧嘩する
そういえばふと思ったんだがオレの片方のドラゴンは何をしてるのだろうか。
オレは産まれた時の記憶はないが、もう一匹オレと同じところで生まれたのがいるのを覚えている。
名はヘルドラゴン。
前のヘルヘイムとは違い、本物の地獄の業火を使う。
アレは痛いじゃ済まないんだよな。
あっちはなんつーかキチッとしてるんだよな。小言がうるさいっていうかなんていうか。
「なんで私の部屋に来ているんだ…」
「いや、エミールのとこだと薬盛られるし」
「ここも無断で入っては…」
「すいません。逆らえませんでした」
オレは自由なんだよ。自由というか勝手? 自分勝手に生きるのが好きなんだ。
「なー、ヘルドラゴンって知ってるか?」
「あの厄災級のか?」
「ああ。どこにいるのかなと思ってな」
「わからん。私の耳には入ってきていないな」
「そうかー」
アイツいまどこにいんのかなー。
案外すぐ会えたりしてな。そういう予感がする。オレは団長室の茶菓子をむさぼりながらそう考えていると騎士が入ってくる。
「団長、ドラゴーラの姫と騎士団長様が参りました」
「きたか。通してくれ」
と言われて入ってきたのはドレスを着た女と鎧を着た男性、そしてビシッと服を着た男性が来た。
ビシッと服を着た男性はこちらを向くと、いきなり腕を振り下ろしてきた。
オレはそれを足で受け止める。
「おいおい、大した挨拶じゃん」
「人間の姿になってでもだらけるのか!」
「いいじゃんかよぉ。昔からうっさいなぁ」
周りはいきなりの戦闘に戸惑っている。あちら側の姫も騎士も驚いているしマクロスも驚いている。
「知り合いなんですか…?」
「ああ。てか、こいつヘヴンドラゴンだぞ。なんでここにいる」
「いや、それオレのセリフな。ヘルドラゴン」
ヘルドラゴン、案外すんなり会えたな。
むすっとした顔でヘルはソファに座る。オレは茶菓子に手を伸ばすと…。
「さっきまで散々食べてただろうが!」
「この国に貢献してるんだからお礼お礼」
「嘘をつくな!」
「あー、ヘルドラゴンさん。その、うちの王女を治してくれたりとかはしたからあながち…」
「…だとしても許していいのか!?」
細かいことはいいんだよ。
「驚きました。ファロファラル王国にヘヴンドラゴンがいたなんて…」
「我らもヘルドラゴンの扱いには少し心を使ってますがそちらも…」
え、なに。オレらって気を使わせてんの?
「それもそうだ。力あるものは警戒されるのは当然だ」
「別に気を使わなくてもいいのに」
「それでも使うだろうアホか?」
少しかちーんと来ましたよヘヴンさんは。
「はいはいそうでございましたね。オレがアホならお前はバカかな」
「……」
「……」
「「やんのかゴラァ!」」
オレは手を竜に戻し竜の爪で切り裂こうとする。相手も同じようでどちらもお互いの頬を擦り血が出ていた。
オレとヘルは睨み合う。
「落ち着け! 落ち着くんだ! な?」
「落ち着きましょう…。ね?」
「いや、こいつは昔からムカつくやつだからなぁ。どちらが上かわからせてやらねーとなあ」
「身の程を知らせてやるよヘヴン…!」
オレらは外に出てドラゴンに戻る。
そして、ファロファラル王国から少し離れたところでオレとヘルは向かい合った。
睨み合うことで起きた殺気は近くにいた魔物を気絶させ、動物は恐怖で死んでいた。
先に動いたのはあちらだった。
ヘルは口から炎を吐き出す。オレも光のブレスを放つ。
互角にぶつかり合い、激しい爆発が起きるのだった。
そして、オレは爆発の中を突っ切りヘルに後ろ足で蹴ってやる。ヘルは吹っ飛びそうになるが耐えた。
ヘルはオレの足を掴み、森の方にぶん投げる。オレは尻尾を絡ませ、一緒に吹っ飛んでいく。
「ん、タンマ」
「なんだ?」
「アレは…シンドロードラゴンだ」
「それがどうした?」
「王女の病気の原因はアレだったんだよ。アレだけ狩るぞ」
「わかった」
オレとヘルは逃げようとしているシンドロードラゴンの背後と目の前にいく。
「どこ行く気かな?」
「逃さないぞ」
オレとヘルはブレスを放った。
そのブレスを喰らい、シンドロードラゴンは焼け焦げて死んでいく。
「さて、続きをしましょうかねぇ!」
オレはシンドロードラゴンを持ち上げぶん投げる。
ヘルはシンドロードラゴンを爪で切り裂き、こちらに突撃してきた。
「どうした? 疲れてきてんじゃないか? 息が切れてきてるぜ」
「ぐっ…」
「ふはははは! オレの方が上のようだな!」
オレは笑ってやった。
オレの勝ち。




