ドラゴン、喧嘩の末
ヘルドラゴンは負けた。体力が尽きたからだ。
「普段運動してねーだろ」
「それは否めないっ…! だがそれはお前もだろう?」
「ふっふっふっ。オレは天才だからな」
オレもそういやろくすっぽ戦ってないな。
「ヘルヘイムのやつと戦ったからだな」
「俺のニセモノか」
「そうニセモノ」
ヘルヘイムドラゴンはこいつのニセモノみたいな立ち位置だ。
もちろんヘルドラゴンのニセモノがいるならオレのもいると聞く。ヘヴンヘイムつったか。どこにいんのかはしらねーけど…。
「ま、戻ろうぜ。お前だって国のやつが待ってんだろ」
「さあな。俺が居なくなって清々するとか思ってるかもしれないな」
オレらはそう言い戻っていく。
街の住人は歩いておらず、商店街も軒並み閉まっていた。
今朝は開いていたのになぜだろう。
「俺らが喧嘩したからみんな閉じこもったな。流石に悪いことをした」
「ま、オレらドラゴンだし仕方ないな」
「…」
何か言いたそうな顔をする。
「はいはい、悪かったですよオレも」
「まあいい」
オレらはちょっとだけ仲は悪い。でも、お互いは信頼してるっていうか。
ドラゴンとしては同じ格なのだ。オレとタメはれるのはこいつくらいだし、こいつもオレくらいだ。
オレらは竜騎士団本砦に戻り部屋を開けると祈る女の姫と剣を手に持って警戒している二人の騎士。
「よぉ、戻ったぜ」
「迷惑をかけた。すまないな」
オレは笑ってソファに座る。
人間たちはこの国が巻き込まれるかもしれないという危険があったという。
オレらの殺気はここまで届いたのか、竜は騒ぎ出し、全員同じ方を向いたとか。
「あの程度の喧嘩はまだ本気じゃねえよ? 本気のマジ喧嘩は殺し合いになるし世界規模でやばいよ」
「ああ。大人しく痛めつける程度におさめた。手加減しすぎて負けたがな」
「いやあ、めっちゃ手を抜いても勝てたからなー」
「…………」
「…………」
「「もうやめて!」」
と言われたので素直に茶菓子をむさぼる。
「そ、それでマクロス様。竜の購入の件ですよね?」
「はい。以前うちのものがヘヴンに襲いかかりましてその時に死んでしまった竜、逃げ出してしまった竜がいて不足しております。こちらの責任なのでいい値で購入させていただきます」
「こちらも仲良くして頂いてますしうちのヘルが迷惑かけたので…」
「うちのってヘル使役されてんの?」
「違う。協力してやってるだけだ。対価は貰ってる」
ふぅん。オレ対価貰ってなくても協力してるけどな。
それにしてもまだ竜騒いでいるか。
「竜うるさいからオレ鎮めてくるわ」
「…殺さないでくれよ」
「わかってる」
オレはそのまま竜舎までいった。
竜たちはジタバタ暴れている。逃げ出したい、そういうことだろう。
オレらの殺気は普通の竜にとっては逃げ出すべきもので、本能で感じとるからだ。
「こら! 暴れるな!」
「麻酔をうて! 全竜にだ!」
「興奮状態で近づけません!」
と、竜を止めに来た騎士たちも困っているようだった。
オレは竜たちの前に立つ。そして、存在感を解放した。その瞬間、一気に大人しくなる。
「静かにしろ。いいな?」
竜たちは静かに頷いた。
暴れるのをやめ、みんな寝るように伏せていく。静かにするには寝るのがいいのだと思ったんだろうな。ま、寝てりゃまだいいさ。
ヘルも動いているようで隣の竜舎からヘルの存在感を感じる。
あちらも鎮まったようだった。
「ったく、これじゃマジの喧嘩できねーな」
マジの喧嘩をするとまた騒ぎ出すだろう。
マジになるほどの敵がいないからいいが…。少し強い殺気程度でこれならマジ喧嘩だったらもっと酷かっただろうな。




