救世主とは
長らく書いていませんでしたがひと段落ついたので投稿します
「なぁ、もう一度言ってくれよ。誰がなんだって?」
俺の意思に従って魔力が体からあふれ出し教会の中を満たす。ミシ、ミシと教会がきしみ始める。
「聞こえてるのか?もう一度言って欲しいと頼んでいるんだよ。俺がなんだと?」
俺の言葉に反応して真っ青な顔の神官が唇を震わす。
「…です。」
「もっと大きい声で言え。」
しばしの静寂がおとずれたあと神官は声を振り絞る。
「あ、あなたは、救世主様です。」
時はさかのぼること一時間前。俺は父親に連れられて教会へと来ていた。予定よりは数日早くなっていたが父親曰く、
「あそこまでの騒ぎを起こしたからなぁ。早めにスキルを確認しないと。はぁ、胃が痛い…。」
とのことで早急に教会へと行くことになった。
「しかし父さま。私が言わなければ四大精霊様が何をしていたかわかりませんよ?」
「それはそうなのだが。せめて相談をしてほしかった。いや、しかし、でも…。」
父親が何かしら考え込んでいるうちに教会へ着くと、
「あ、昨日の精霊さんが視える人だ~。」
との声で父親が考え事をやめる。
「姫様!!ということは?」
「おお、リジェルド達も来たか。やはり、昨日のことはお前も知らないことだったんだな?」
「ああ、そういうギンも姫様のことは知らなかったのか?」
「知っていたらとっくに教会に来ているさ。精霊を視えていることすら知らなかった。まったく、昨日のことはさすがに夢かと思ったぞ?なあ、アレク君?」
王様が俺の瞳を覗き込む。
「できれば貴族たちがいないところで言ってもらいたかったがな?」
これは、俺の反応を見ているのか?魔眼は希少スキルのようだし使えるかどうかを確かめているといったところか。まさに”王”だな。こんな小さいガキ相手でも先入観なく本質を知ろうとする。恐ろしい限りだ。ならばそれに敬意を表し、俺も応えよう。
「それは申し訳ありません。しかし大丈夫ですよ?四大精霊に逆らえる人はいない。それこそ暗殺すらできません。これがただの精霊ならば話は別ですがね?しかしあれだけの人数のまえで四大精霊が姿を現したんです。だれも四大精霊のことを疑えないでしょうから、姫様に手を出そうとはしないはずです。そして精霊に愛されている以上、姫様と王位継承権を争う方はいないかと。問題は姫様を利用しようとするものですが精霊は人の悪意に特に敏感です。まず問題ないでしょうね。」
そういって王女のそばに浮かんでいる四大精霊を見るとしっかりとうなずいてくる。
それにこの王ならば姫にしっかりと王の教育を施せるはず。まぁ問題はあるまい。…もしあったとしてもそれは俺の知るところではない。俺の精霊との約束は四大精霊を何とかすること。姫のひいては国の未来に関しては何の約束もない。
「君は、そこまでかんがえて!?」
「さぁ?父さまの受け売りかもしれませんよ?」
「何の話してるの~?」
王が考え事をしていると姫様が話に割り込んできた。
「大したお話じゃないですよ、姫様。」
「ん~。」
「姫様?」
いきなり唸ってどうしたんだ?
「その姫様って呼び方いやだな~。サクラって呼んでくれない?」
「はっ!?いやいやいや。」
「えっ?いやなの?」
いやなのっていやじゃないが王族名前呼びは…。父親してたな?そう思い父親を見ると、
「…。」
無言でうなずいている。これはつまりそういうことか。
「サクラ様でよろしいですか?」
「様もいらな~い。」
「…はぁあ、サクラでいいですか?」
「うん!」
仕方ないか。まあ、そう頻繁に会うわけでもないしな。…多分。
「準備が整いましたが、どなたから行いますか?」
明らかに教会関係者だとわかる服装の男が教会の奥にある扉から出てきて俺たちに声をかける。
「あ~アレク君から先に行ってもらっていいかな?精霊関係となると教会は時間をかけるからね。」
「分かりました。」
扉を開け中に入るとそこには光で満ちておりその中央に巨大な水晶らしきものがあった。
「では、始めますね?」
神官がそういって祈ると水晶が輝きだし俺のステータス画面と同じものが水晶に映る。
名前:アレク・ラ・サラマンド
種族:人
性別:男
年齢:6
lv:1
ストロング:190
スピード:190
タフネス:9
魔力:12000/12000
精神力:2500/2500
スキル
天武の才 神の子 闘気 戦闘狂 並列演算
固有スキル
魔眼~絶対ノ瞳
概念強化
覇道の風格
称号
旅人のお気に入り
四大精霊を見た者
加護
旅人の加護
称号が一つ増えているがどういう効果だ?
四大精霊を見た者:精霊王に会う資格の一つ
精霊王!!これはまた何とも強そうなやつじゃないか。しかし、資格の一つということにはほかにも資格がいるのか。
とまだ見ぬ強敵に想いを寄せていると思わぬ声で現実に引き戻される。
「これは…救世主様!?」
「…あぁ?」
そして冒頭に至る。
「救世主だと?それはどういう意味だ?応えてくれるよな?」
「き、救世主というのは予言にあった人のことです。勇者と並んでこの世界を救う者でありそのものは旅人の加護を持つものであると。彼はその力を持って世界を平定し、悪を滅ぼすと。」
旅人の加護…。まさかあの野郎俺に世界を救えと?そのために俺をここに連れてきたのか!!
「あの、救世主様?」
「黙れ。」
魔眼を発動し神官を従わせる。
「俺が救世主だということを忘れ誰にも伝えるな。またスキルは天武の才と闘気だけで固有スキルはただの魔眼だったとしろ。ほかの能力も人並み外れたものではないとして加護と称号はなかったことにしろ。わかったか?」
「はい、分かりました。」
その返事を聞いて部屋から出る。そして気分が悪いと父親に伝えさっさと城の部屋に戻り眠る。
「で?僕に話があるのかな?」
夢の中には期待通りにあいつがいた。俺をこの世界に連れてきた旅人が。




