第十六話:黒のさわり
第十六話
俺は黒葛原さんと一緒に二人三脚の練習を頑張ってきた。
よくこけたし、何度もラッキースケベしてしまった。
うまくこける技術は芸術の域に到達していて…最後の方は怪我なんてしなかったぐらいだ。
そして、今がその結果を確かめる時だ。
「位置について!よーい」
「……」
「どんっ!」
最後までうまくいかなかった練習の成果は、しっかりと出た。こけることも無く、何か俺にとって美味しい展開があるわけでもなく…一着でゴール出来たのだ。
「……ふぅ」
一着でゴールした黒葛原さんはいつもより穏やかな表情をしているように見えた。
「一着だね」
「……うん」
それっきりの会話だ。いつもとあまり、変わらない。
走れば必ず一度はこけて黒葛原さんを押し倒したり、押し倒されたりを繰り返してきた俺達にしてみれば、最高の結果だ。
こうして、運動会も特に問題無く終わり、打ち上げの後、俺は自宅へと帰ろうとしていた。
「ん?」
喪服を着た人たちが一軒家の周りをうろうろとしている。
どうやら、お通夜かお葬式らしい。
「えっと、こういうときは親指を隠すんだった…よな」
手の親指は隠したけど、足の親指って隠さなくていい…よな、別に。
他人の俺にはあまり関係の無い式だ。
あまり長居すると変なので歩き始めると、入口から堂々と出てきた人がいた。
「あれ?黒葛原さん?」
「……!」
俺を確認すると、そのまま走り去ってしまった。
「もしかして…黒葛原さんは死神?だから、こんな場所に来て死者の魂を集めていたのか?…なーんて、あほらし」
きっと、二人三脚の時にあまりにもうまくいきすぎていたと思ったんだ。だから、こんな場所で出会って俺に近づけば押し倒され、胸を揉まれると思ったに違い無い。
「うん、それは無いな」
どうも今日の俺はつかれているようだ。




