第十五話:彼にかかればどんな要塞も基地もアラート無しで即制圧
第十五話
かったるい運動会がそろそろ始まる。
開会式も終わって、競技の準備が始まっていた。
「ふあー…眠い」
幸か不幸か、俺が出る競技はクラス対抗だけなので比較的暇な部類だと言える。
女子の体操服姿を眺めていたら視界の端に黒髪がちらついた。
俺にこうやって話しかけてくれる女子なんて殆どいない。
「鈴か」
「おはようございます」
体操服姿も可愛いもんだ。
「どうかしたのか?」
会いに来るとしても、用事が無い時には基本的に来ない奥手な女の子だ。いまだに目を合わせようとすると頬を真っ赤にして逸らしちゃうくらい可愛い子だからなぁ…。
「白取先輩に会わせたい人がいるんです」
「会わせたい人?」
一体誰だろう。
「ついてきてください」
「ああ」
リボンを眺めながら付いて行くと其処には教師が一人、男子生徒達を一撃でノックアウトしていた。
「……」
これはどうした事だ。
しかも、みたことある先生は特殊部隊が身につけてそうなスーツを着ているではないか。さらに、銃器までくっついている。
「お嬢様、不埒な輩の成敗が終わりました」
「住良木、ありがとう」
「勿体ないお言葉です」
確か、目の前の先生は住良木晶先生だ。クールな眼差し、正確なチョークミサイル発射の腕前、それでいて気配り(チョークを自費で補充の方ね?相手が男子生徒なら放置されてる)も出来ると噂である。年下相手にだって敬語だ。女子生徒にモテモテ、男子からもモテモテな先生でもある。
「わたしは住良木晶と言います」
「え、ええ…知ってます。授業を教えてもらっていますから」
「二人は知り合いだったんですね」
そらぁ、先生と生徒だからなぁ。
「あのー、変な事を聞くとは思いますけど…先生は何をしていたんですか」
無残な肉塊に成り果てた男子生徒が二人、沈んでいる。
「お嬢様の事情を白取君は知っていますね」
「はい」
「たまに、悪戯をしようとする方もいるのです…今回は噂を確かめようなどとしたのでお灸を据えたのですよ」
お灸をすえて、ここまで酷いことになるとはな…看板に偽りありと言わざるを得ない。記憶をなくしている事だろう。
「やっぱり、私も大人数に知られて引っ越しになったら嫌ですから」
「そうか」
じゃあ、いいのかな。でも、暴力沙汰とか嫌いそうな鈴がこの光景を見て何とも思わないのはちょっとなぁ…。
棒で突いてみても、反応は無い。人気のないところだから気付かれないのだろう。悲鳴すら聞こえなかった。
「住良木、これはやりすぎなのでは?」
「大丈夫です。手加減をしていますから」
「それなら大丈夫ですね」
手加減してこれか。手加減なかったら銃器が火を拭くんだろうな。
「お嬢様」
「何?」
「白取君と話がしたいのでお連れしてもよろしいですか」
「ええ、私は構いません」
「白取君もいいですか?」
許可をとる順番を間違えてないだろうか。いや、でも住良木先生は鈴の従者?みたいなものだから…それでも間違ってるよなぁ。
「はぁ、いいですよ」
俺もちょっと聞きたい事があったので二人でそのまま(保健室部隊がやってきて肉塊を回収して行った)にして場所を変える。
「最初に、ありがとうございますと言っておきましょう。お嬢様の友達第一号です」
いきなり上からくす玉が降りてきた。それを引っ張ると、『祝!お友達!』と書かれた幕が下りてくる。
「これはご丁寧にどうも…」
「もうひとつは忠告です。もし、お嬢様を傷つけるような事があったら…」
「ハチの巣になるんですか?」
「違いますよ」
ぱちんと指を鳴らす。きざっぽい態度ながら、見た目がかっこういいから何をさせても様に成るようだ。
「って、マジですか」
気付けば、周りは完全に特殊部隊のスーツ達に囲まれていた。これが拳銃とかならまだ良かっただろう…連中は鈍器を手にしていた。
「ウホッ」
一匹、ドン○―混じってた。
「そうなったら楽しみにしておいてください。泣かせたりしたら厳罰です」
肝に銘じておこうと思う。
まぁ、余程デリカシー無い言葉を言わない限りは大丈夫だろうけどな。
「この約束を守って、お嬢様の事をよろしくお願いします。もちろん、白取君には断る権利があります」
差し出された右手を取る以外に、この危機的状況を脱出できるのか?
「断ったら…どうなるんでしょう」
「そうですね、今後のテストが難しくなるでしょう」
「何だ、その程度ですか」
てっきり、お嬢様の気持ちをわかっていただく為、ばらばらにさせていただきます…なんて言われるのかと思ったよ。
「その程度、と言いますけどさすがに身体がばらばらではテストが受け辛いと思いますよ」
「…よ、よろしくお願いします」
差し出された右手をとると、満足したのかチーム住良木が姿を消した。
これから先、俺はどうなってしまうのだろうか。




